面倒事の始まりは
少年は引きこもりだった。
親から期待されていない。弟と妹の方が優秀。兄であるのに優れた所がひとつもない。何もせずただ引きこもって親の金を食い潰すだけ。
人は少年に言う。
「お前は社会の塵だ」と。
虐めから引きこもった少年は、ストレスから気が短くなった。
妹と弟に嘲笑われたと言い、でっぷり太った体で親を殴った。
六畳の部屋の中が、少年の世界の全てであった。
少年は神を憎んでいた。
いまこの時まで、憎んでいたのだ。
「すごい…!これなら!!これなら俺が最強になれる!!見返せる!!見返してやるんだ!!」
少年の太く短い指の中には、黒い光が凝縮していた。
「先ずは…そうだな。うざい奴から消すか」
暗い笑みを浮かべた少年は、何年間も引きこもっていた部屋から出た。
――若いが故にそれを傲慢と知らず。
「――えー…一家惨殺事件?家の近くじゃん」
新聞にでかでかと書かれているそれは、人間では不可能じゃないかというような死に様をした一家を発見したという内容であった。
惨殺事件と書かれつつも、人間離れしていないと無理な感じだからと警察が半ば投げやりになっている感じだった。
うん、まあ、警察ドンマイ!
家に人外が居るくらいだし…他に人外が居ても可笑しくないな。
「家族を殺すなんて、ぼく怖い!リンコ、ぼくと一緒に寝よ?ね?寝て!」
「私も怖いわ…迚も1人じゃ眠れないわね…!!という訳でクオリ、リンコは私と寝るのよ!」
「もう!キミ本当にうざい!めーわく!化粧達磨!」
「黙らっしゃい珍獣!」
…まあ、我が家とは関係なさそうね。
一部の子達が取っ組み合いをするからって、ちょっとゆとりのある内装にしたもの。
クオリありがとう!一家に一匹クオリ君だね!肉とかは要らないけど!
「えぇ!?いらないの!?」
「うん、要らないからその塩タン除けてね」
ああ、そうだ。そういえばね、私、サーチが使えたんだよ。
身体能力も意識すれば向こうの身体能力に切り替わるみたいだし。
どうも不便がないように全部切り替え出来るようにしてるみたい。
この細かさ、本当にあのカケル君がやったんだろうか?どうでもいいけどさ。
「そういえばリンコ。学校は暫く休みになると教師殿が昨日言っておったが…」
「早くに言え正義馬鹿!!こんな早くに起きちまって…まだ寝れたじゃんか!!」
「もう9時、だけどね!」
良いんだよクオリ君。細かい事は気にしちゃいけないんだよクオリ君。
「分かった!じゃあ、この、ぼくらの学校で起きた殺害事件も気にしない!」
「は!?私達の学校!?」
クオリがいつの間にかぶんぶん振り回していた新聞を引ったくり、文面をよぉーく見つめた。
《○×高等学校にて、20名が殺傷される事件が勃発した。警視庁では、一家惨殺事件と同一犯だと想定したようだ。傷口は何れも人間とは思えぬものだったと――》
「…最悪…嫌な予感しかしねーよ…」
一体私が何をやったんだと言うくらいにピンポイント過ぎるわ!
今度は何だっていうのよゴルァ!!