迚も逃げたくなる
「初めまして、ヴィヴァルディ・サヴォイアよ!宜しくお願いするわ」
そう言って微笑する男性は、とても見覚えがあった。
凄いな。私、向こうにその男性ソックリな女性を知ってるよ。彼女はよく男体化をしたもんだ。
サヴォイア君はにこにこと微笑みながら、何故かクオリに熱い視線を送っていた。なんだ、そういう趣味か。オカマさんなのか。
席は私の隣り。右にクオリ、左にサヴォイア君である。わあ豪華ー。
熱く視線を交わし合う二人に、私はついていけなかった。
なので密かに購入して食べているガムに夢中になっておいた。
夢じゃないなら確か、昨日クオリが転入したばかりな気がするんだけど。
あ、このガム美味しい!
「リンコ…会いたかった…」
サヴォイア君はそう私に話しかけてくるなり、私の理解出来ない言語で滅茶苦茶何か言ってきた。
きっとクレームだろう。クオリが私にベタベタしてくる事に対する、ね。
バリッと引き剥がされたクオリは凄まじいくらいに不機嫌で、クラスメート達は怯えていた。
おいおい。中には泣き出してる奴がいるじゃねーか。止めたれよ。
「あのね、リンコは、君のじゃないの。ぼくのなの。君に似合うの、あの茄子だと、ぼくは思う」
茄子扱いされた男子が可哀想過ぎるんだけど。
「あら?あれ人間だったの!?てっきりクオリと同じ昆虫かと思ったわぁ」
「君、目が悪いんだね!かっわいそうに!ぼくとアレが同じ?昆虫?ぼくはどう見ても小動物みたいに可愛いでしょ!」
ひどい…こんな惨い事を!何故罪も無き民に流れ弾を喰らわすんだ二人とも!
…ていうかクオリがナルシスト的な台詞を吐いた?いや。恐らく私の聴覚に狂いがあるんだろう。まさかあの天使な感じまでもが作られたものだなんて。
面倒になってきたので、私は居眠りをした。
眠る姿勢に入る前に「荻原起きてくれ!」「せめて寝る前に荒ぶる猛獣を止めてくれ!!」と誰かが叫んだ気がするが、全てを無視した。
あのね、時間は有限ではないんだよ。私の時間は私にとって気持ち良い事に使いたいんだ。
いろいろすっ飛ばして夜。
私はどうしようかと頭を抱えていた。
超金持ちの息子らしいヴィヴァルディ・サヴォイア君ことヴァーデは、私の家に居候として来ていた。
超金持ち感覚で持って来られた持参金付きだった為、私は心の中のマーラに負けてしまったのだ。
マーラに打ち勝ったブッダさん超尊敬するわ。彼奴超強くない?瞬殺だよ?
兎も角。
認めたくなかったが、矢張りヴァーデはヴァーデで、何故か神様に激昂された上に戻して貰ったらしい。1つお願いを叶えて貰ってから。
「私、完璧に男にして貰ったのよ」
きらきらきら
目が怖いくらいに澄んで、輝きまくっている。
性別を捨てる程に夢中なんだね…クオリを打ち負かす事が。
成る程これが男の意地って奴か。
納得しているとクオリにちゃうちゃうと首を振られた。
そうか、残念。
「あ、後ね、なんかシザリオンも送るって言ってたわ。多分だけど…また何か企んでいるみたいだったわよ、暇つぶし」
いろんな意味で逃げたくなった。
今度は何をやらかす気だ!!私で遊ぶな!!毎日毎日全身の毛が股間の先に集まる呪いを掛けるぞゴルァ!!
「なにそのはっそう!こわい!」
何故かクオリが青ざめた。
HAHAHAHAHAHA。