××は意地悪な奴
「さてさて」
幻想的な空間の中。テレビをぽちっと付けてポテトチップスを貪る黒いのが居た。そこだけ妙に現代的だった。
コントローラーを握り締めて彼が向き合う画面には、黒髪の少女と白い青年が映っている。少女は黒いののお気に入りである。
黒いのはうきうきしながら何やらアイコンを動かすと、違う場面が映った。それの何もない場面でポンとボタンを押すと、大量の文字が現れる。それの内のペーストをクリックした。
「凛子様。私が止めたのはあくまでもあの世界の逆ハーで遊ぶ事で御座いますよ。ふふふふ…」
怪しい笑みを浮かべる黒い上司を見詰めるごつい天使は、見ない間にゲッソリと痩せていた。
どうやら上司が放棄しまくった仕事量が凄すぎて、とってもスリムになれるダイエットに成功していたようだ。望んだ訳ではなさそうではあるが。
「あのー…異世界人を送っても大丈夫なんすか?」
「大丈夫で御座いますよ。時を止めていますし」
仏頂面なのに嬉しげな弾んだ声を出されてびくびくとする天使を無視し、黒いのは拳を握り締めて熱く語る。
「見た目が普通の少女が誰も適わない敵を屠る…とても素敵だと思いませんか?」
思いません。
そう言いかけた天使は慌てて口を手で塞いだ。
だが黒いのはどうも言葉が返ってくる事を期待した訳ではなく、言いたくて言いたくて仕方なかっただけのよう。
仏頂面のままとてもはしゃいだ声で言い放った。
「心配しなくとも大丈夫で御座いますよ!凛子様のステータスはそのままで御座いますから」
「それ本当にええんすか!?○○様辺りに怒られたりしないんすか!?」
怒られるんじゃないかと案ずる天使の言葉にも、彼は動じる事はなかった。
「グルなので大丈夫で御座います!」
「ダメだ此処の上司!」
頭を抱えてうずくまる天使の事を哀れに思いつつ遠目に見ている悪魔達。
とても仕事熱心な上司に仕える悪魔達が羨ましいと、天使は思った。
勿論、黒いのに内心は駄々漏れだったりするのだが、黒いのは一切合財気にする事はなかった。
興味が全く微塵も欠片ほどもないからだ。
「今回のは凄いですよ凛子様!私のドキドキが止まらないくらいで御座いますよ!」
「さあ、せいぜい私の手の平で踊って下さいませ!!」