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××は仕事が嫌い

「チッ」


舌打ちをする上司にびくりとするゴツい天使は、紙を弄っている。

上司が仕事をサボるから頑張っているのだ。

暇そうにぐでっと横たわるなら仕事をやってくれよ。

天使はそう思っても口にしない。

何故なら天使は痛覚を刺激されるのが嫌いだからだ。


「私を倒す、ですか。随分と粋がっておりますね小孃風情が」


ぱきりと水晶玉を片手で粉砕した上司。

(それ、核爆発起きようが壊れない代物だった気が)と遠い目をして考える。

結論。気にしたら駄目だとそう思ったようだ。

書類に視線を落とした。



「私、下界に降りて参ります!」


「……えっ?」


天使が気付いた頃にはもう遅かった。

黒い上司は既にいなくなっていた。


「ウソォー!?あの人仕事ほっぽりだしちゃった!!」





「下界に降りたのは何年振りでしょうか」


観光する気満々の格好で歩く彼は、部下に仕事を押し付けている事を忘れた訳ではない。

ただ、反省の色がないだけである。


彼は平民の服を着て歩いているけれど、外見と纏うオーラの所為で目立っていた。

なにせ迫力のある美男子だ。女性が見とれないわけがない。

彼は話し掛けてこようとする女性をガン無視していた。

自分の外見に無頓着である為と、そもそも女性に興味ないからだ。


「さあて…私は何をしましょうかね」


愉しげに歩む彼は、徐々にスピードを上げた。

直ぐにぐんと上がった歩みで行くのは魔王城の方。


彼は、魔王城に行くつもりのようだ。


「何を致しましょうかねフフフ」


幸いにも不吉な笑みを浮かべながら歩む恐ろしい男の事を見る者はいなかった。

恐らく見た者はメデューサに睨まれたかの如く、目蓋を瞬くことすら出来なくなったことだろう。

それ位すごい不吉な顔をしていた。


歩き始めて数時間。

魔王城が見えてきた。


歩む男を止めようと、あわよくば戦おうとする二人の魔族は凍り付いた。

余りの眼光の鋭さに、本能が体を止めたのだ。

戦闘こそを至高とする戦闘狂の一族が。


黒い男は小さく囁いた。


「お邪魔致しますね、半刻ほど」


小さな声だというのに、それは辺りに響いた。


残された魔族の門番は戦意喪失したのか、くたりと座り込んだ。


やがて渇いた声でぽつりと呟く。


「あれは生物が適う相手じゃない…」


城の中は不気味な程に静まり返っていた。

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