新鮮な散らし寿司
うーん…美しい。
たゆたう景色に感嘆の声を胸中にて上げる。矢張り自然は美しい。人工物ゼロの大自然の母に抱かれ、私は機嫌よく泳いでいた。
だが、白い人工物が横切ったことで私は回れ右をした。あれは…とても不吉な色合いをしている。然しチートだという話はどこへやら…白い物体が私に激突してきた。ああ、これが天然のチートか。
『こんにちは!たべて!』
『さようなら!いらん!』
思念で挨拶をしてきたので、同じく思念で返しておく。そして直ぐ様テレポートをしようとしても発動せず、奴を見るとにこりとした。
『使った!すっごいジャミング!君、魔法使えない!』
輝かしい笑みでそう言い切った。思念で。
『もげれば良いのに』
『えっち!でも、望むなら、君が、えっと…』
何を想像したのか判然らないけれど、隙が出来たので逃げ…れなかった。
『ぼくを、たべて、いい…よ?』
『魚を食べたいから却下』
股間を蹴り上げても彼は離してくれず、何故か私の家に連行された。ああ、まだ五週間しか暮らしてないのに。
「…散らし寿司?」
これ見よがしにテーブルに置かれた物は、どう見ても散らし寿司だ。サーチの魔法くらいなら使えるかと試してみると、普通に使えた。原材料はミルという魚で、身は少し鉄っぽい味だが美味しいらしい。マグロに似た味だろうかと想像する。他にも色々と具材を見ていくが、不審な物(クオリの肉)は入っていないようだ。普通に作っただけ…だと?
箸を持ち、ミルという魚を食べてみる。鉄っぽいという割には凄くまろやかで、甘めの味がする。なんとなくそれを飲み込まず、掛かってるソースにもサーチを使ってみる。
クオリ(以下略)
その血はまるで練乳のように甘く、中毒性が高い
「魚、美味しい?」
無言で吐き出して全力で投げ飛ばし、全力疾走してジャミングの範囲から外れたら直ぐ様テレポートしてやった。飲み込まなかった私、グッジョブ。