優美高妙と仰ぐな
「リンコ、ポトフ作ってきたわ!」
「リンコ、ケーキ作ってきた!」
バチバチと何か得体の知れないもの(殺気)を辺りに散らし、二人とも私に献上してきた。止めてくれ。
背後ではシザリオンが半裸で縛られ転がされているけれど、表情が桃源郷を見つけた爺様みたいな優しく穏やかな感じになっていて不気味過ぎる。
ヒメコ、なぜずっと男になっているんだ?
クオリ、なぜずっとお家に帰らないんだ?
起爆剤になってしまいそうなので、それすら問えなかった。本当に残念なイケメン共だ。
私は仕方なくポトフとケーキを受け取る。
ポトフには魔女の秘薬の如く素敵過ぎる物体(この具がイモリじゃないと信じてる)が浮かび上がっていて、ヒメコの不器用さ(?)が伺えた。
ケーキには上に可愛いピンク色のハート型をした目玉(偽物だと思いたい)が飾られていて、中にはとても真っ赤な苺ジャム(だとイイナァ)が挟まっていた。
お腹を空かせた可哀想なシザリオンに与えると「HAHAHAうっまいぞーー!!」なんて、ちょっとアメリカンっぽくグルメレポーターも真っ青な反応をしてくれた。
顔が(゜Ж。)←こんなに喜んだ顔をしているので、ポトフもケーキもあげたら喜び過ぎて飛んでいってしまった。あげた甲斐があるというものだ。
「リンコ!シザリオンばかり構わないで私に構って!私寂しいわ!」
クオリを微塵も躊躇いを覚えない速度で殴りつけてから近寄るヒメコは、仕留めた獲物で遊ぶライオンの如き風格を漂わせていた。
どうしてヒメコ、男体化すると身長が2m近くになるの?凄く威圧感があるんだけど。
黙ってヒメコを見ていたら、頬が徐々に赤くなっていく。
パシャリ
クオリがヒメコにゲル状のスライムを投げた。その迷いないフォームは美しく、きっと安倍晴明も諦める様な鬼神の如く勇ましい顔はみんなの視線をかき集めるに違いない。
二人とも互いを嫌い過ぎだろ。
「リンコなら、もっと凄いパンチ、出来るんだから!」
「ふん!!リンコならもっと凄すぎて何が何だか判然らない物を投げるに違いないわ!!」
『おれすっごいウンコ見つけた!』『おれなんかもっと凄いウンコ見つけたんだからな!』という、意味なく自分でも良く解らないもので競っている小学生のようだ。
「「リンコはもっと凄いの!」」
キラキラした目で見てくる二人組が恨めしい。
でも此奴等は敵同士なんだよね。
そこん所はわかってんのかな?
ああうん、わかったらわかったで殴り合うだけだよね。わかります。