栄華之夢を見る娘
「私は…裏切られるのが嫌いなの…」
珍しく男にならなかったと思えば、無表情でそう言ったヒメコ。
私も裏切られるのは嫌いだ。
人参だと思って食べたあの物体、味がピーマンだったのには裏切られた感が凄かった。
人参みたいな見た目になるな!!苦くなるな!!もっと甘くなれよ!!
…あれ?もしかしてこれとは違うのかしら?
「お母様が嫌いだった…私をいつも怒ってきて…私を見てもくれない…」
そう言いながら虚空を見つめるヒメコ。
あれ?私、話を聞かなきゃいけない系?餌付けされたから懐いたのかな。
暫く過去の回想を語り、そして落ち込むヒメコ。
要するにあれだ。
周りの女がメンヘラな女ばっかだったから女が嫌いだったのという、そんな感じ。
裏切らないと思ってた男が裏切った事に対する悲しみもつらつらと語るヒメコ。
「でもさ、その傲慢さを直そうとしなかったヒメコも悪いよね?」
語りきったヒメコにそう言うと、癇癪を起こした。
うわ…面倒。
思ったことそのままに言う癖を直さなきゃなぁ…。
感情が高ぶった所為で男になったヒメコ。
とりあえず放って家に帰った。
だって別に友達でも何でもないし。
正直面倒なのは嫌いだし。
私あなたのお母様じゃないのよ?
でもお腹空かせた奴見かけるとどうしてもご飯ぐらいあげたくなるんだよね。
ほら、お腹空くのって世界一苦しい現象だと思うし。
お休みなさいと眠った筈なのに、私は夢の中にいた。
しかもセーラー姿になっていた。
きょろきょろとしている内に、視界が明るくなる。
パッと現れた風景は、よくある学校の教室だった。
それに伴い、人も現れた。
いや、沢山の人影が現れた。
人影はたった1人の女の子に群がっていた。
――ヒメコだった。
ヒメコは楽しそうに男達と話をしていて、突っかかってくる女達を貶していた。
そんなにも嫌いなのか。
どうでもいいから寝かせろと目を瞑ると、殴る音が聞こえてきた。
なんだ?
目を開けると、女達がヒメコと男達に殴られていた。
あーあ、あれ痛そうねー。
なんだか喉が乾いてきた。
ヒメコと男達の笑い声が木霊する。
ああもしかしてこれは、ヒメコの願望なのかな。
自分だけに優しい自分だけに都合の良い自分だけの世界。
それってさ、
「虚しくならないの?」
ぴたりと声が止まった。
全員が睨んでくる。
私はそれに向かって笑ってやった。
「お人形遊びと何が違うの?勝手に動く所?体が暖かい所?そんなに自分に付いてくるお人形が好きならルンバでも飼ったらどうよ。きっといつまでも付いてきてくれる筈だから」
「なっ、何よ貴方!!失礼過ぎるわ!!謝りなさいよ!!」
「すーみーまーせーんー。ほら謝った。満足した?ねぇ、これで満足した?」
「きぃー!!」
生『きぃー!!(口惜しげに)』を聞いてしまい、 なんとも言えない気分になった。
「いい加減に目を覚ましなよ。世界は優しくないけれど、案外綺麗なもんよ」
私にこんなこと言わすなんてある意味凄い女だね、ヒメコは。
女なのか良く解らない事になってるけどさ。
「……うん」
彼女は泣きそうな顔で笑った。
シリアス?なにそれ?って感じなのが凛子なので、シリアスな部分は結構無視してます。
無神経というか、だって興味がないんだもーん仕方ないじゃーんって感じで。
これが食べ物関係だったら凄く盛り上がった筈です。
食べ物貰ってなかったとか言ってたらヒメコの親を人でなし扱いしてめっちゃキレた事でしょう。