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雲水不住は私の性

矢張り旅は楽しい。





あれから鬱陶し過ぎて旅に出かけた私。

ほら、どうやら私は人と混じって過ごすことに向いてないようだし。


前回と違い、楽しげに後ろではしゃいでる白い子を連れての二人旅。


「リンコ、あっちは美味しいのない!行くなら、カノヴァ地方が、いいよ!」


クオリは優秀なガイドさんだった。ちょっと片言だけど。


「リンコ!ご飯食べる!」


また見覚えのある形した唐揚げが入っている。飛び出すくらいに大きい白い唐揚げが。


「クオリが半分食べてくれる?食欲なくて」


意地悪してそう言うと、ノンタイムでわかった!と食べようとした。まじでか!!


「いつもクオリが作ってしまっているのって、私が作ったお弁当が食べたくないってことかな」


「そ、そんなことないよ!」


「じゃあ私のお弁当食べようよ。そのう…唐揚げはあそこのお腹空かせた小鳥さん辺りにあげてさ」


そう言うと素直なクオリはわかったと鳥さんにあげた。そしてその鳥を毟って切って血抜きして袋に放り込んだ。


えぇ!?食べる気なの!?そんなに可愛いのに!?


私の驚愕に気付いたクオリが、にこやかな顔をして答えた。


「この小鳥さん、美味しい」


「なら仕方ない」


薄情?いいえ美味しい鳥は食べ物なんです。


だって可愛さで腹は膨らまないでしょ。


バカなやり取りもしつつ、歩いていく。





本当はクオリを置いて行きたかったんだけど、ていうか行こうとしてたんだけど、枕元にずっと立って居たんだもの。

あの怖さは実体験した私にしか判然らない。

片手に銃を片手にチェーンソーみたいな剣を携えて気配消して無言でいつもの笑顔で立っているクオリは怖かった。目が笑ってなかったし。


認めるよクオリ君。

君はもしかして腹黒わんこじゃないかって思ってたけど、間違いなく腹黒だよ君は。


でも面と向かっては言わない。だって面倒じゃん。


二人でわさわさと歩いていると、雑魚臭漂う男の声が聞こえてきた。


「なんでだよ!!お前は俺の妻だろ!?なんであんな男と一緒に居るんだよ!!」


「私は貴方と結婚した覚えも付き合った覚えもないわ!!もうつきまとうの止めてよ!!」


ふむ。

見るからに男の一方的な痴情で怒鳴られている若い女が見える。

男は若く美形ではある。

…横に魔族の美形宰相居るから霞んで見えるけどな。


ああいう喧嘩は面倒なので、私達は回れ右をした。


しかし、女が私達を見つけて走ってくる。


まあ………迷うことなく走って逃げるけどな!


助けると思った?


助けるかぶぁか!!


私は自分の事だけで精一杯だし、巻き込む気満々の奴に巻き込まれてやる気はないのよ!!


女がちょっとだのなんだの言っているけれど、私もクオリもガン無視。


くせぇ。


神様くせぇんだよあんたは!!


どうせ神様が動かした駒の一つなんだろ?


私は関わらない!!


結構なスピードで逃げ切ってやった。


チート嘗めんな!


街中に入る前にクオリにも変装をして貰い、そのまま直で宿屋に向かう。


宿屋を魔法で探し出せたからこその直線コース。


途中であの男女を見かけた気がしたけど私は無視した。


勝手にやってろ。


嫌なら相手はただの人間なんだし〇玉をもいでしまえばいいじゃない。


私ならやるね。





「とりあえず旅立って1ヶ月は経つけれど、ヒメコ達はまだあの家に居るのかな?」


「心配?」


「まあ心配っちゃ心配かな…いろんな意味で」


家とか心配だしね。

でも流石の私もヒメコの嫌み程度でもずっと聞いてたらやんなっちゃったからね。


でも1月は経ったしな…


「様子、見る?」


そう言いながらクオリが差し出したのは水晶玉だった。


「これに相手の事を考えながら魔力を籠める。そしたら見える」


なる程めんどいありがとう。


クオリの言った通りに魔力を籠めると、ヒメコが見えてきた。


彼女はたった1人ぼっちだった。


シザリオンはどうしたんだろう?


何故1人ぼっちなの?


ひたすら泣いて泣いて泣き叫ぶヒメコ。


余りにも哀れを誘う姿である。


「あーあ」


「え。リンコ、感想それだけ!?」


「だって自業自得じゃん」


まあ、私って結構他人の事どうでもいいんだけどね。





「――と言いながら、行くリンコ優しい!」


「いや、だってさっきの男女が宿屋に泊まりに来たんだもの。横でアンアンギシギシ止めて助けてうるさいから仕方ないじゃない」


「男ぶん殴ったリンコ格好いい」


私は仕方なく、もう本当に仕方なく自分の家に戻ってきた。

あんな事があったら宿屋泊まりたくないし。

別に他にやることないし。


特に意味はないけれど、泣いているらしきヒメコにご飯を与える。

すっごく良い餌食べた生き物の死骸をこねくり回した塊だから美味しいよ。

私が保証する。


久しぶりに見たヒメコは這いつくばって泣いていた。

不意に向けられた視線には、憎しみの籠もったような、どうしたらいいのか判然らないような、そんな感情が深い悲しみに混じっていた。


全く…女の子(?)を泣かせて神の奴はどうしたいんだ。

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