多分皆が異口同音
「最近、リンコあれ避けてる?」
クオリがあれと遠くから私を睨むヒメコを指差しながら言ったので、その指を握り締めた。
人に指差すのは良ろしくないようだよ。
しかも勢い良く上げたその手には、ケーキが入っているのよ?可哀想な感じにするのは止めてよ。
それは兎も角。
まあ、だってヒメコってさ…
「相手にするのが面倒じゃん」
「確かに!」
物凄く同意されたんだが、あの子どんだけクオリから嫌がられてるんだ。
「あの子、女の子を目の敵してる。男はぜんぶ自分の味方と見てて、ぜんぶ同じように見てる。何しても自分が悪いって、思ってない。悪いのぜんぶ他人。見てて気分悪い。それを、一言でいうとすっごく面倒」
「へぇ…あの態度は私だけじゃないんだ」
それにしても流石は宰相。
人を見るのはお茶の子さいさいって感じだ。
まあ、私としては実害が出なきゃどうでも良いんだけどさ。
「きっとみんな、同じこと言う」
それは確かにと思いつつ、なんだか哀れな娘だなと思った。
「最近、リンコは勇者様を避けとらんか?」
「あれデジャヴュ」
でじゃびゅとはなんだ?と訊かれたので異国語で既視感の事だと言うと、きしかんとはなんだ?とまたもや訊かれた。
面倒だな此奴!
ていうか、何故堂々とひとんちのロビーに居るんだ。
「面倒な子だからだって、君も同じ、面倒な子。ぼくんちから出てけ」
いつからクオリの家になったんだろうか。
いや、物置レベルから要塞レベルにしたのはクオリだけどさ。
そして出てけの時の笑顔の輝かしいこと輝かしいこと。
もしかしてクオリって腹黒…いやいや、きっといま虫の居所が悪いだけだよ。
ほら今リンコーって言ってきゃるんとした目で甘えてきてるじゃない。
幻覚だよ今のは。
「お前の家ではないのであろうが!それよりリンコ…最近勇者様が可笑しくないか?」
雰囲気が違うのだがなにか知ってるか?と言うシザリオン。
いや、雰囲気も何も偶に男になっちゃってますが。
しかも男の姿になったままシザリオンに言い寄ってあしらわれて私に怒鳴ってきましたが。
そう包み隠さず言うと、シザリオンはハッキリ言った。
「女性の事は目の敵のように相手をし、我が輩ら男共は一塊のあくせさりぃのように扱うのである。我が輩、それが不愉快で仕方ない!全てを含め短くすると面倒だから気にしとらんかったな!」
そ、そう。
評価がだいたいそんな感じなのね。
けれど怒ったら何をするか判然らないタイプだ。
しかも今はずっと側で惚気てた宰相が正気に戻り、国に帰ってしまったらしい。
多分今まで立てたフラグも折れている事だろう。
今はいいけれど、それを知った時………何をするか怖いな。
何せ相手はスペックを高くされた知識ある現代人だ。
現代兵器に似たものを出されたらマジ堪らん。
痛いの嫌だし。
だからといって殺すとかは出来ないとか。
あれを殺せば強い呪いとなって残り続けるし、だからといって寿命では死なないらしいし。
腐ってもチートに準ずる能力値。
あれでも倒すのも楽じゃないくらいだとかマジ神様鬼畜。
くそ神ィ…面倒な事態にしやがって!!
「そろそろ出来る、ご飯。いっぱい食べて、リンコ!」
「それはかの東方に伝わる赤飯か?それにしては赤々しいがまさか…」
「シザリオン突っ込んだら負けだぞ」
「リンコの為、ぼく頑張った!褒めて!」
「我が宿敵よ」
「貴方の宿敵になった覚えはないけどなにさ」
「貴様は魔族の血肉を取り込み、人間の身を捨てたからこそ強いのだな」
「リンコ、美味しいぼく食べる。ぼく、大好きなリンコに食べられる。みんな幸せ!すっごく幸せ!」
「食った覚えないし食いたくないんだけど!!」
「でもリンコ、ぼくの血肉食べた」
「知らない知らない知らないマジ最高級レベルだったとか知らないったら!!」
「魔族の宰相を保存食扱いなのであるか!?なんという危険な奴なのであろう…やはり此処はリンコを…〇〇…して…うぬ…」
「いま危険な単語聞こえたんだけど」
「大丈夫。害与えてきたら、ぼくがバラすから。リンコ安心して!それよりはいご飯」
「すかさずサーチするのが私」
「えー?」
「クオリの…もも挽き肉…ハンバーグ…?」
「あのね、綺麗に洗ったから、ね?」
「ごめんいろんな意味で無理だわ」