××は悪戯が好き
様々な神秘的な光に照らされた空間がある。
黒い調度品が多い空間ではあるものの、その光のお陰で暗い雰囲気にはなっていない。
生活感のないその空間の一部に、遠くを映し出す絡繰りやらがぽつんと置いてある。
隣に置いてあるバーガーの包み紙が、妙に生活感を醸し出していた。
剥き出しのハードディスクが大量に無造作に置かれていて、片付けようとする意欲を感じられない。
むしろ、片付けないという気概が感じられた。
そこで眉目秀麗な顔で憂鬱そうな表情を浮かべている男がいた。
「……ナンテコッタ」
黒い男はテレビの画面を覗き込みながら、項垂れた。
その横顔はテレビドラマの死んだ恋人を思う主人公の如く儚く、深い悲しみに包まれている。
拳を握り締め、黒い男は叫んだ。
「何楽しそうにたむろって居るので御座いますか!?さっさと魔王退治という名目のラブストーリーを演じ醜くも面白おかしい喜劇を私にお見せなさい!!ルートは勿論、私は逆ハーレムを狙っていこうと思っておりますがね!!」
黒い男はヒステリックにディスクをぶん投げる。
それを厳つい天使がキャッチして、リリースをした。
ちなみにディスクの中身は死亡者のリストであり、そのディスクが無くなると死亡者の転生が約200年は遅くなったりするのだが…黒い男は別に構わないようだ。
自分に関係ないから。
厳つい天使は喋らない。
誰だってとばっちりは受けたくないだろう。
天使だってとばっちりなんか受けたくないのだ。
黒い男は壊れたくるみ割り人形のような動きをした後、荻原凛子をガン見した。
恐らく今頃、凛子は怖気を感じて内心気持ち悪がっていることだろう。
黒い男は凛子を見ながら唸る。
頼むからもう少し男に興味くらい持ってもいいじゃありませんか!と。
「せっかく私が配置したフラグを回避に回避を重ね、バグらせるなんてある意味凄いとは思いますが…」
黒い男がカチカチとコントローラーを弄ると、テレビには別の場面が映る。
それにカーソルを合わせてボタンを押した。
名前:ヒメコ
スキル:魅惑の眼
HP:700
MP:200
魅惑の眼にカーソルを合わせてボタンを押す。
魅惑の眼
スキルにより常に魅了魔法を発生させている。より上位の状態異常攻撃または回復魔法により、魅了は解けてしまう。
黒い男は不気味な笑みを浮かべてから、ボタンを押して何かを入力した。
スキル:男体化
男体化
パッシブスキル。興奮が高まると男体化する。恋愛感情が高まると男体化する。スキルの性質上、憎しみに捕らわれやすくなる。
背後で天使がヤベェ此奴という表情で見ていても、男は全く気にして居なかった。
「これくらいないと楽しめそうにありませんからね。凛子様は妙に逆ハーレムルートから外れますし、仕方ありませんねぇ」
にやにや笑う黒い男に、天使は人間達も可哀想にとソッと涙するしかなかった。