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とりあえず様子見

「まあ、凛子ちゃんはとりあえず様子でも見てて頂戴ね!私はちょっと□□を探してしばきたお…話を聞いてみるから」


そう言ったマルちゃんが、天使さんと妖精さんを邪な目で見てから帰っていったのは一ヶ月前の事。


あれから連絡がないのに不安が募る。


私は言われた通りに、この一ヶ月間ずっとカケルを見続けた。


カケルを触って反応を確かめたり、何をしていたのか匂いを嗅いでみたり、夢でもカケルを見て触ってたりと、もうそろそろ具現化も出来そうである。


カケル具現化なんざなんて役に立たない念能りょ…げふんげふん。


兎に角、不真面目な不良がノイローゼになりそうな程にカケルは普通に真面目であった。


もうこのまま人間でいいんじゃね?なんて思うけれど、不安そうな顔で布団の中で丸まって静かに嗚咽しながら泣かれたら、流石に私の中のミジンコの糞くらいの良心が痛んだ。


それに本当に具現化出来そうな程に見張るのは疲れてきた。


まだましなのは、これが美形である所だろうか。


でもそろそろ美形具合にすらキレそうになってきた。


末期だな、自分。


「という訳だから、殴らせろ」


「なんて理不尽!私はただ貴方様の視線の理由をお聞きしただけですのに!」


勿論、先程の言葉は全てまるっと喋った内容である。


泣くほどに嬉しいのか、私の相棒のポロンさんを見詰めていた。


誰とも知らぬ人に教えて差し上げるならば、ポロンさんの名前の由来は首が可愛くポロンとなるからである。


「さあ、私のポロンさんでイメチェンしようぜ」


「そ、その恐ろしい鉈を仕舞ってくださいまし!」


ポロンさんを恐ろしい扱いされて私は悲しくなった。


折角、首無し騎士にイメチェンさせてあげようとしたのに。


完全に善意なのに、なんて我が儘な奴だ。


とりあえずポロンさんを床下に隠す。


なんか「床下物騒でございますね」と青ざめている気がするが、まさかクオリのトロンさん(C4爆弾)が大量に居るからだろうか?


ちなみにクオリの持ち物には全部名前が付いている。


少しでも現実逃避をしたいが為の行為である。


他にはパクパクさん(地雷爆弾)やアリスちゃん(特性アイアンメイデン)が居たりする。


転がってきて「お姉ちゃぁん!ただいまぁぁ!」と足にしがみつくくっ付きお化けの柩君を引き剥がし、幽霊屋敷の幽霊すら泣いて逃げそうな眼差しで此方を見やってくるクオリ君の方をチラ見した。


すると弾丸の如く発射される白い塊は、べったりと私にしがみついた。


「リンコ酷い…ぼく寂しい…ぼくを構って…いっぱい構って…リンコ…」


クオリさんや、君の下にカケル君が下敷きになっている気がするんだ。


しかも見間違いじゃなきゃ君のハイヒールみたいな靴がカケル君のお肉をちょびっとだけ踏んでいる気がするんだ。


「リンコ…?」


でも気の所為だという事にしておく。


私は好んで敗戦する事前提の戦をしたがるようなマゾではないのだ。


まるで戦利品の如く私の手を掴んで上げるクオリさんの、したいように遊ばさせておく。


だがそろそろカケル君を絨毯から人間に戻してあげないと、クオリさんに前科が付いてしまいそうだ。


そう考えたのを読み取ったのか、クオリさんは言った。


「すっごいアリバイ、ぼく作るの得意!」


抱き締めて退かしておいた。


「きゃっ!リンコ積極的!ぼく恥ずかしー!」





月が雲から見え隠れする比較的爽やかな気候の晴れた夜。


私は魘された。


何時もの夢だ。


先ずそこに漆黒の塊が現れて、私の目の前でずっと佇む。


私は仕方なしにそれを眺めると、それは形を成した。


その漆黒の塊は麗しい姿を取り、恥じらいつつも私を見詰めてきた。


私は仕方なしにそれを眺める。


まるで拷問のような空間。


少しでも目を逸らすとそれは自らの生命活動を絶とうと動く。


その所為で私は目を逸らすことすら出来なかった。


それがゆっくりと私に近寄り、私の頬を撫でる。


いい匂いがした。


死体の如く、妙に冷たい指先だった。


そっと指先を両手で握ると、それは突如として私を襲った。


冷たい漆黒の塊は私に巻き付き、ぎゅっと力を入れた。


抱き締めるという表現では生易しい、絞め殺すという勢いでだ。


私は手をバンバンと床に叩きつけ、ギブアップと高らかに叫ぶ。


しかしその漆黒の塊は離れず、私は漆黒に塗り潰されていく。


その時。


瞬く内に純白の塊が現れた。


光の化身の如く輝くそれは、漆黒を極楽浄土から蹴り出した。


私を労るような手付きの純白の塊は、優しく「カケル、リンコと添い寝狡い!ぼくが添い寝する!」と言っ………


あれ?


パッと目を開くと、そこに居たのは真っ白なスマイル。


可愛いと評判のクオリだった。


床に打ち捨てられているのは、寝間着姿のカケル君。


なるほど。


寝ぼけてたのか。


戻ってきて布団の中に入るカケル君を眺めつつ、私はぼんやりと月を見た。


なぜ私は自分の部屋で男2人に挟まれて寝ているんだろうか。


その次の日、何故か私がカケルに破廉恥だと怒られた。解せぬ。

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