第8話:契約は棄却ですわ
王都は、もはや「国」としての形を保っていなかった。
水源は枯れ、魔力が枯渇した大地には亀裂が走り、
かつての栄華は見る影もない。
追い詰められた国王と勇者レオンは、
禁忌中の禁忌――「自身の命と引き換えにした復讐の呪詛」に
手を染めたのである。
「リリア……! 我らからすべてを奪った貴様を、
地の底まで引きずり落としてやる!」
境界線の向こう側で、国王たちが
己の心臓を媒介にした血の契約を始めた。
空がどす黒く染まり、おぞましい負の魔力が凝縮されてゆく。
だが、その光景を魔導石越しに眺めていた彼女の感想は、
実に簡素なものであった。
「……あら。あのような汚らわしい術式を
私の庭へ向けようなんて。
実に見苦しい、書式不備の極みですわね」
リリアはテラスで、しろたまの爪を磨きながら、
空中に浮かぶ呪詛の構成図を指先でなぞった。
「そもそも、呪詛の発動条件となる『等価交換』の定義が
間違っていますわ。
あなた方の命には、私の庭の静寂を乱すほどの価値など、
もはや1ゴールドも残っておりませんもの……
そんな不良債権で契約を結ぼうだなんて、魔導の神に対する冒涜ですわね」
彼女は、朱雀が差し出した羽ペンで、虚空に浮かぶ術式に「一線」を引いた。
「――この申請は却下いたします。
受理されなかった呪いは、どうぞご自身でお持ち帰りになって」
◆ ◆ ◆
【世界中の井戸端会議(掲示板)】
1:名無しの魔導士
……えっ!? 命をかけた呪いが、今「差し戻し」されたのか!?
2:名無しの賢者
「価値不足による契約不成立」だと……。
3:名無しの騎士
見てくれ、行き場を失った呪いが逆流していく……。
自業自得だが、あんなに惨めな自爆は見たことがない。
4:名無しの商人
聖女様、紅茶を飲み干して
「不適切な書類を処分しただけですわ」って流したぞ……。
◆ ◆ ◆
「……ふぅ。これでようやく、視界のノイズが完全に整理されましたわ」
そう言いながら、しろたまのブラッシングに余念がないリリアだった。
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