第7話: 皆さま出口はあちらでしてよ
王国というシステムが完全に破綻したことは、
魔導石を通じた「全世界同時配信」によって、周知の事実となった。
今や、世界中の王族や豪商、そして絶望した民衆たちが、
唯一の安息の地――“死の森”を目指して押し寄せていたのである。
「リリア様! どうか私たちを、あなたの庇護の下へ!」
「この国はもう終わりです! あなたの慈悲を!」
森の境界線には数万の人々が溢れ、
その叫び声は、私のテラスにまで届いていた。
しかし、その喧騒は、リリアにとっては
「不快なノイズ」以外の何物でもなかった。
「……あら。あのような群衆を招き入れた覚えはありませんわ。
私の庭に、整理されていない『雑多な存在』が入り込む余地など、
一ミリもございませんの」
彼女はテラスで、青龍(青いの)に
庭の池のろ過を命じながら、冷淡に言い放った。
膝の上では、しろたまが眠そうに欠伸をしている。
「……皆様、勘違いなさらないで。
私はあなた方を救うためにここにいるのではありません。
ただ、私の平穏を乱す存在を、視界から排除したいだけなのです」
リリアは溜息をつき、空中に指先で一条の術式を描いた。
すると、森の境界線から、
人々を飲み込むようにして光の道が伸びたのである。
「――皆様、出口はあちらです。
あちらへ進めば、隣国の肥沃な大地へと繋がっておりますわ」
◆ ◆ ◆
【世界中の井戸端会議(掲示板)】
1:名無しの避難民
おい!! 足元に光の道が現れたぞ!
聖女様が「あっちに行け」って言ってる!
2:名無しの魔導士
……救済じゃない。あれは「誘導」だ。
「ここに溜まって騒ぐな、邪魔だからどっかへ行け」っていう、
究極の整理整頓だぞ。
3:名無しの商人
聖女様、紅茶を飲みながら「選択の余地を与えただけですわ。
歩くか立ち止まるかは、皆様の生存本能の精度によりますわね」って呟いたぞ……。
4:名無しの市民
でも、あの道を通った連中、みんな隣国の安全な場所に辿り着いてる……。
5:名無しの賢者
もはや彼女にとって、人類の存亡など「部屋の四隅の埃」程度の関心事なんだろうな。
◆ ◆ ◆
「……ふぅ。これでようやく、騒音が遠ざかりましたわね」
リリアは、朱雀が差し出した完璧な温度の紅茶を楽しみながら、
読みかけの本に視線を戻した。
一方その頃、王都の地下牢では
――夜逃げに失敗し、捕縛されたミナが、
かつての信者たちから「詐欺師」として詰め寄られていた。
「……お体をお大事に、と申し上げましたのに」
リリアは魔導石の向こう側を一瞥し、静かに視線を外した。
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