第2話:白赤青そして黒
賢者の庵でのリリアの朝は、「掃除」から始まる。
浄化のついでにリリアが拾い上げた、
色とりどりの不作法な生き物たちはどうなったかと言うと――
「……皆様、いつまでそこで惰眠を貪っているのかしら。
私の庭に、動かない置物は必要ありませんのよ」
彼女がテラスの床を扇の先で軽く叩くと、
四匹の「毛玉や爬虫類」は、一斉に飛び起きた。
白、赤、青、そして黒。
世が神と崇める四神が揃い踏みしている光景だが、
リリアにとっては「不揃いな調度品」の並びに過ぎないのである。
「まず、白いの。あなたはそこに座って、私の膝を温めなさい。
機能性のない毛並みほど、無価値なものはありませんわ」
「キュゥ……」
白虎と呼ばれた仔虎が、甘えた声を出しながら私の膝に収まった。
次に、彼女は手摺に止まっている赤い小鳥――朱雀を、
氷のような眼差しで見据える。
「赤い方。あなたの役目は、私のティーサーバーを常に
九十八度に保つこと。一分でも温度が揺らげば、
その無駄に派手な羽を、埃取りのハタキに改造させていただきますわ」
「ピッ……!」
朱雀は恐怖に慄き、青ざめた炎を放ちながら、懸命に湯を沸かし始める。
リリアは満足げに頷き、さらに庭の隅で甲羅を丸めている玄武と、
池でくつろいでいた青龍に指を向けた。
「亀の方は、あちらの書庫の入り口で『文鎮』として鎮座していなさい。
そして青い蛇。あなたは家庭菜園の水撒きを……
一度でも葉を傷つけたら、
その鱗、すべて剥いで最高級のバッグに仕立てますから」
神獣たちは、大陸の守護神としてのプライドをかなぐり捨て、
一心不乱に「家事」に従事し始めた。
これが、リリアと彼らとの間に結ばれた、
絶対的な「主従」――いや、単なる「使用上の注意」であった。
◆ ◆ ◆
【世界中の井戸端会議(掲示板)】
1:名無しの魔導士
……嘘だろ。今、朱雀が「給湯器」代わりにされてなかったか……?
2:名無しの騎士
おい、青龍様が……雨を司るあの伝説の龍が、
じょうろみたいに菜園に水を撒いているんだが。
3:名無しの賢者
見ろ、あの玄武。大陸の重みを支えるとされる神獣が、
リリア様が本を読む間、ドアストッパーにされているぞ。
4:名無しの市民
ていうか、聖女様の「バッグにするわよ」って脅し、
冗談に聞こえねえ……。
神獣たち、マジで必死に働いてる。
5:名無しの商人
王都じゃ、四神の加護が消えたせいで、井戸は枯れるわ、
冬なのに猛暑だわで大騒ぎだってのによ。
この庭だけ、世界で一番贅沢な「全自動魔法家電」が揃ってやがる……。
◆ ◆ ◆
「……ああ、静か。ようやく、機能的な庭になりましたわ」
膝の上の「白いの」は、絶妙な体温で私を癒やし、
玄武は静かに扉を守り、青龍は美しく虹を描きながら庭を潤している。
リリアは、朱雀が完璧な温度で保っている紅茶を一口含んだ。
庭の角に転がっていた魔導石がリリアの浄化によって魔力を取り戻し、
その向こうで、全世界の王族や賢者たちが、
彼女のあまりの「神の冒涜」に泡を吹いて倒れていた。
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m
本日、第3話まで投稿します。
よろしくお願いします☆
明日は、4話と5話を連続で投稿していきます。
12話で完結しますので、よろしかったらブクマをポチッと
して頂けると嬉しいです(*^-^*)
よろしくお願いします☆




