第10話:その術式は古すぎましてよ
王国が灰燼に帰そうとも、利権に縋る「塵芥」は残るものである。
かつて王立魔法研究所を牛耳っていた老魔導師たちは、
禁域の森に隠された“魔導石”の投影権を強奪しようと、
広域魔導網を用いた「強制介入」を試みた。
「リリアの管理権限を剥奪せよ!
主導権を奪い、世界への『宣託』を掌握するのだ!」
境界線の外で、彼らは数千の魔石を並べ、リリアの庭の魔力回路に、
無理やり「外部術式」を流し込んだのである。
テラスでしろたまのブラッシングをしていたリリアは、
空間を走る微かな不協和音に、不快げに眉を寄せた。
「……あら。許可なく私の結界の『門』を叩き、
私的な領域に不正に踏み込もうだなんて。
実に見苦しい、脆弱性だらけの侵入ですわね」
リリアはブラシを置き、空間に展開された、
継ぎ接ぎだらけの攻撃用術式を一瞥した。
「……そもそも、この術式の構成が旧式すぎますわ。
何代前の体系をお使いかしら?
私の庭の『最新の美学』には、一節たりとも適合いたしませんが」
リリアは扇を優雅に広げ、彼らが必死に築いた魔力経路に対し、
「不可避なる術式改変」を実行した。
◆ ◆ ◆
【世界中の井戸端会議(掲示板)】
1:名無しの魔導士(王立研究所・残党)
おい!! 祭壇が制御不能だ!
術式が勝手に自己解体を繰り返しているぞ!?
2:名無しの賢者
……待て。聖女様が今、何をした!?
「不適切な干渉に対し、魔力の完全なる『初期化』を
実行しました」だと……!?
3:名無しの商人
見ろ、研究所の連中が使っていた国宝級の魔導具が、
一瞬で「ただの石ころ」に変わったぞ!
聖女様、紅茶を飲みながら「基礎から学び直していらっしゃい」って
冷たく言い放った……。
4:名無しの市民
「攻防? いいえ、これは単なる『術式の添削』ですわ」
……あの一言、震えた。
5:名無しの騎士
攻撃した連中の脳内に、今「無限に繰り返される呪文の詠唱破棄」が
強制投影されて、みんな白目を剥いて倒れたぞ。
聖女様の防壁、硬すぎるだろ。
◆ ◆ ◆
「……ふぅ。これでようやく、庭の魔力律が正常化されましたわ」
リリアは、再構築を終えて、より一層澄み渡った庭の気配を感じ、
朱雀に新しい茶葉を用意させた。
他人の聖域に土足で踏み込もうとする者が、
自らの放った魔力に呑まれるのは、当然の摂理である。
「いい、四神の皆様。外部からの無作法な干渉など、
単なる『構成ミス』に過ぎません。
私たちはただ、完璧に編み上げられたこの平穏を、一瞬一秒守り抜くのです。」
四神たちは、主の圧倒的な術式支配力に畏怖し、
庭の維持管理に、さらに情熱を注ぎ始めた。
全世界の魔導師たちが「彼女に挑むことは、
世界の理そのものを書き換えようとするほどの無謀なのだ」と悟り、
二度と「接続」を試みぬことを誓った瞬間であった。
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