第0章:光の翼
毎日投稿予定。
暗闇に包まれた広大なコンサート会場。
数万人の観客が放つ熱気は、湿り気を帯びた大きなうねりとなり、暗い客席を躍動させていた。
ステージ袖の狭い通路。照明の届かないその場所に一人の女性が立っていた。榊原アカリだ。
黒いスタッフジャンパーの袖を少し捲り上げ、左耳に装着したインカムからは分刻みの進行を確認するスタッフたちの乾いた声が絶え間なく流れてくる。
アカリは手元の進行表を握りしめ、ステージの中央を見つめた。
その瞬間を待ちわびる観客たちのざわめきは、大きなうねりとなり広大な海となって躍動している。
暗いステージ上から一瞬「ブーン」という電子音がなった。
全員の視線がステージに集中する。
『ドッカーッン!!』
突然、轟音とともにステージから花火が打ち上がった。
ステージの上空で閃光が弾け、鮮やかな赤、青、金色が夜空を彩る。
その瞬間ライトが一斉に点灯し、ステージが華やかな白光に包まれた。
悲鳴にも似た歓声が会場を埋め尽くし、会場全体を駆け巡り一気に熱気へと変る。
突如として雷神剛太が打ち鳴らすドラムの轟音が心臓を鷲掴みにした。
振動と脈動と鼓動が体の中心に熱を刻む
佐々木雄一郎の腹の底に響くベースギターに石崎コウキが掻き切る激しいリードギターのリフが重なる。
「アルファンマン」のシンボルマークがステージ後方にある巨大なスクリーンに映し出され、光の渦の中からゆっくりと男が現れた。
ボーカル、南郷ケンシン。
熱狂する会場。激しく立ち上る炎のような空気と光。
彼がマイクスタンドを掴み第一声を発した瞬間、会場の熱狂は爆発した。
アカリは、まばゆい逆光の中に浮かび上がるケンシンを見ていた。
ケンシンがマイクを握り第一声を発すると歓声はさらに爆発的に膨れ上がり、観客たちは皆両手を高く空中に伸ばして声を合わせる。
アルファンマンの世界に包まれたその空間は激情の嵐となって燃え上がっていった。
アカリは深く息を吸い込み、インカムのスイッチを入れた。
「進行通り。……行こう」
光と影、絶望と希望が入り混じった、長い物語の幕が上がる。
『光の翼(Wings Unbroken)』
作詞・作曲:南郷ケンシン
壱番
空へ伸びる 赤い螺旋
千切れたリボンが 天を舞う
一瞬で消えた 愛の輪郭
凍りついたままの 記憶の中の冬
力つきた あの日の指先
無慈悲に奪われた 世界の色彩
残されたのは 無音の廊下
色が抜け落ちた 静止画の日々
鉄の風が 扉を叩き
孤独な夜を 研ぎ澄ます
お前は自分の 痛みを殺し
誰かの震えを 抱きしめていた
折れた翼で 空を仰げ
泥に濡れても お前は真珠
その涙こそが 希望の種火
暗闇を焼き切る 光になれ
もう一人で 耐えなくていい
俺がお前の 風になる
弐番
毒を孕んだ 偽りの家
「荷物」と記された 魂の価値
それでもお前は 汚れを拒み
「聖域」を守り 続けてきた
背中に刻まれた 見えない傷跡
自分のことだと 泣いた夜
その優しさが 世界を揺らし
俺の眠れる牙を 呼び覚ます
拳で守れる 器など脆い
お前の「祈り」が 盾になる
透明な意志が 泥を透かして
明日への地図を 描き出す
光の翼 広げたなら
地獄の淵を 蹴り飛ばせ
錆びたオルゴール 眠りから醒め
愛を語りだす 旋律へ
どんな嘘に 囲まれたって
お前の気高さは 汚せない
最終章
あの日見た 高い空を
恐怖じゃない 自由で塗り潰せ
お前が守った その愛が
今度は お前を天へ連れていく
飛べ、光の翼!
過去という檻を 今ぶち破れ
絶やすことない 灯火抱いて
光あふれる 場所へ行こう
泥だらけの 聖域を越え
自由の空へ――
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