表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷の薔薇と銀の狼 -Relight-  作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/107

49.「離したくない」――月明かりのスイートルーム。黒のドレスを脱ぎ捨て、白く染まる夜のRelight。

…えんもたけなわではございますが、そろそろお開きとさせていただきます…

司会が、アナウンスを始めた。

いよいよパーティーも終わりに近づいていた。

時間は22時近い。


伊織が席に戻ってきて、絵里奈の隣に座った。


「あれ、海斗と、中村さんは?」

「今、どこかで、なにかしてるんじゃない?」

「え?」


先程の優子とのやりとりを話す。


「…そんな感じだったんだ」

「…まあ、別に二人がどうなろうといいんだけどね」

「海斗、年上好きなんかなあ?」


その言い方が少しおかしかった。


「で、伊織、片桐さんに会ったんだって?」

「ああ、そうそう。荷物運ぶときにね」

「私も、酔い覚ましに外へ出たら、ばったり」

「今度は、キックでもした?」


伊織がからかうように言う。


「ばか」


優子が、篠崎を伴って戻ってきた。

親密そうに、腕を組み合っている。

そして、どことなく妙な雰囲気をかもしだしている。


「…優子」

「絵里奈ぁ…彼ったらねぇ…すごいの」


なにが、だ、と絵里奈は思った。

篠崎の頬に、明らかに唇の跡が残っている。


「…まだ、酔ってるの?」

「酔ってる…酔ってるかあ…そう、かも、うふふ」

「優子さん、とりあえず座ろ」


篠崎が言って、優子を椅子を引いて座らせた。

隣にいる伊織が横で絵里奈に囁く。


「明らかに、さっきと違うんだけど」

「…そうね、確か」

「…これは、ひょっとして」

「それ以上、言わない」


そう言って、伊織の唇にキスをする。

その瞬間を見ていた、優子が喚く。


「あ~、キスした、キス。私たちもしましょ、海斗」

「優子さん、ここじゃまずいって」

「い~じゃん」


じゃれつく優子と篠崎だが、片桐の席は空いたままだった。


――


宴が終わり、会場の照明が一段階落とされる。

絵里奈は、伊織と一緒に、関係者への挨拶を終えた頃、

スタッフがテーブルのグラスを片づけ始め、さっきまでの喧騒が嘘のように薄れていく。


絵里奈は、ふと空いたままの席に目をやった。

片桐の姿は、結局戻ってこなかった。

「……帰ったのかしら」

独り言のように呟く。


優子はというと、篠崎の肩にもたれかかりながら、眠そうに瞬きをしている。


「……優子、大丈夫?」

「だいじょーぶ……絵里奈ぁ、今日ね、ほんと、楽しかったの……」


言葉の端々がとろけている。

篠崎が困ったように笑いながら、彼女の髪をそっと撫でた。


「送っていきますよ。タクシー呼びますから」

「お願いね」


伊織が口をはさむ。


「どっかにしけこむ気だろ?」

「しけこむって…そういう風に言わない。篠崎さん、優子の事、よろしくね」


いろいろな意味を込めて絵里奈は言ったつもりだった。


「そのことについては、後で相談がありますが、今日はこれで…」

「海斗ぉ…へへ…」


篠崎は、優子を肩にかついで、会場の出口へ向かう。


伊織がそっと手を差し出す。

「俺たちも…行こうか」

その温かさに触れた瞬間、絵里奈はようやく息を吐いた。


----


最上階へ向かうエレベーターに乗り、ボタンを押す。

エレベーターの扉が閉まる。


伊織はそっと腕を伸ばし、彼女の肩を抱き寄せた。


ゆっくりと顔を近づけた。


唇が触れ合う。

絵里奈が手を伸ばして、伊織の肩に回してきた。

伊織も、絵里奈の背中に手を伸ばし抱き合った。


----


そこは月明かりが差し込むスイートルームだった。

伊織は、目の前の絵里奈しか考えられなかった。


黒のオフショルダーのドレスが、ベッドサイドの床に広がり、その傍には、黒のレースの上下が、ふわりと落ちている。

無造作に床に広がっているスーツの色が、部屋の色彩を豊かにしていた。


「絵里奈…」


艶やかな唇。

甘い匂い。

その瞳に吸い込まれそうになる。

離したくない。


「伊織…」


伊織の汗ばんだ肌の艶に、理性を手放しそうになる。

背中に回された腕の力強さに、身体が火照る。

自分の口から、自然と甘い蜜のような声が漏れる。

波打つ鼓動が伝わり、思考が白く染まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ