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冷える夢(2)
人や明かりが見える。
期待したことが起こっている。
そう思いたい。
「助け...」
絶句した。
松明が床に転がり、近くでは真っ赤に染まった雪と死体があった。
人が戦っている。
しかし、体格差がありすぎる。
この戦況は確実に負ける。
相手は空洞内の天井に頭が付くほどの大きさのグリズリーだ。
家が縦に二軒入りそうなほどの空洞に、巨大なグリズリー。
人間には勝ち目がない。
「なんだ…?
あんな化け物が存在するのか...?」
もう戦っていた人間は死んだ。
手足があり得ない方向に曲がっている。
手の震えが止まらない。
目から液体が出てくる。
心音が一層大きく聞こえる。
人間は負けた。
幸い彼らの持っていた防寒具は十分に使えるほどのものがちらほらとあった。
食料も少しある。
だが、まだ寒い。