自分へ
夢はもう見なかった。
睡眠による楽しみは失われた。
今日、またしても故郷であるこの家を去らねばならない。
転生前は飛び出して引き殺されたにもかかわらず。
学習してもそれしか最善の策がないから。
部屋にはいたるところに散乱した書類。
それはどれも警告しているような色をして。
読めない文体で検閲された部分を覆い隠すように左腕が乗っている。
退去で自分を置いていったのか。
それとも自分だけ回収されなかったのか。
自分がただ不幸なだけなのだろうか。
体は常に軋み。
眼前の道はずっと続くような感覚に襲われる。
首の筋は切れたように動かなくて。
涙腺は枯れたように血を吸い続ける。 体遺 体遺
だから前に進んで助けを求めないと。
答えを欲すために。 てい解らか苦
苦しみを隠して人に笑顔の仮面を見せるだけ。
内面はなくていい。
だから出てくるな。
これは自分の物語だ。
前の自分はいなくていい。
複合意識が続くのは面倒くさいな。
今一度この警告文の内容を読めるようにならないとな。
体は前世より太い。
ただ標準かといえば細いだろう。
足の筋肉はひざの関節より細い。
たんぱく源になるであろう食べ物は見当たらない。
空腹による腹痛は体の危険信号だろう。
ただ左腕がないから栄養は少しごまかしても大丈夫だろう。
異世界転生がきらびやかなものだなんて誰が言った。
最初がどん底なら上がるだけじゃないか。
記憶だけ利用させてもらうぞ。
過去は利用のために
未来は連なるために
ここから冒険が始まるように。
断続的に生まれる痛みより生きる苦しみの方が強いから。
死ななければ生きているから―。




