表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後悔の残像  作者: イスコ
1/3

私はいま、過去のどこに泣いているのだろう?

昔、彼はただの同級生だった。

少し不器用で、野心家で、まっすぐな目をしていた。

私には、少し暑苦しすぎた。

彼の言葉も、未来を語る手つきも、まだ笑って聞き流せる年頃だった。


告白されたのは、大学の入学式の数日前。

「俺、絶対に成功するから」

その言葉がどうにも青臭く感じて、私は断った。

未来なんて、目の前の春よりも遠かった。


彼は本当に有言実行した。

数年後、テレビや雑誌でその名前を見かけるようになった。

成功者の顔になった彼を見ながら、私は何度も画面を閉じては開いた。

胸の奥に沈んでいた感情が、時間とともに「後悔」という名前に変わっていくのを、私は止められなかった。


そして先月、偶然、街のコンビニで再会した。


彼は、全てを失ったような顔をしていた。

やつれた頬、古びたシャツ、どこか焦点の合わない目。

「……久しぶり」

そう声をかけられて、私は息をのんだ。

まるで、別人のようだった。


その瞬間、長年抱えてきた後悔が消えると思った。

彼の成功がまやかしだったとわかれば、私の選択も間違いではなかったと証明されると思った。


でも、違った。


消えたのは彼の輝きだけで、私の後悔はそこに残ったままだった。

――なぜだろう?

私はいま、過去のどこに泣いているのだろう?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ