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「成世氏!」
「はうあっ!」
サスケ氏に声をかけられ、ようやく現実世界へと戻って来られた。
危ない危ない。式部での妄想はまるで麻薬だ。程々にしておかないと戻って来られなくなっちゃう。
「式部氏との世界へ行っておられたのでござるか?」
「うー、サスケ氏にはバレバレだったようだな……」
「別世界へトリップなさるのは結構なことだが、拙者は成世氏と式部氏のカプ推し故……口に出して語って貰えた方が嬉しいのでござる」
「さ、サスケ氏ぃ!!」
多分、サスケ氏は神かそれに近しい何かなんだと思う。
「さあファンクロファンクロ〜♪」
部活の時間は堂々とゲームができる時間……つまりは堂々と式部に会いに行ける時間でもあるのだ。
「あっ、成世氏!耳に入れておきたい情報があるでござる!」
「む?それはぼくと式部の逢瀬の邪魔をしてまでも耳に入れる程有益な情報だと言うのかね?」
「有益……とは違うのだが、聞いておいた方がいい情報でござるな」
「よろしい。ならば聞こうではないか、同胞よ」
このノリもぼくとサスケ氏ならではだ。別にくだらないことでもサスケ氏の言うことなら何でも聞くのだが……彼は思った以上に真剣な眼差しをこちらに向けてきた。
「さ、サスケ氏……?ぼくそんなに見つめられると照れちゃうというかぼくは式部一筋だから困るというかその……」
「成世氏」
「は、はいぃっ!?」
「……近頃、ファンクロのデータが破損するトラブルが相次いでいるらしいのでござる」
「は、はいぃぃぃっ!?!?」
データ破損、ですと!?
これはもう笑えない。確かにサスケ氏の真剣な眼差しも頷けるような情報だ。
「マジかよ!!式部との何百時間……全部消えちゃうってコト!?」
「ゲーム内のバックアップ機能にも不具合が生じているらしく、今取れる対策としてはサブ端末にデータをコピーするしかないのでござるよ」
これはやばいことを聞いてしまった。部活が終わって家に帰ったらすぐにサブ端末にデータをコピーしておかなければ。