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「式部……!?」
翼さんに召喚され、目の前に現れたのは式部だった。
どうして式部がここに!?絶対に押し入れから出るなって言った筈……!!
「……主、御命令ですか」
「ちょっと待ってて。今、この子とお話したいからさ」
「……承知致しました」
……だけど少し考えて分かった。翼さんが召喚した式部はぼくの式部とは違う、所謂別個体だ。だって、ぼくの式部とは雰囲気が違うから。
寧ろ、この式部の方が公式の設定の式部に近いまである。
「あはははは!その顔が見たかったんだよ!」
愉快そうに笑う翼さん。もしかして、彼女はぼくに式部を見せたかった……のだろうか。いや、それだけのために、ここまでする……!?
「私はね、成世ちゃんのことが大嫌いだった」
「えっ……」
「私だって式部のことが大好きで、誰よりも式部を愛してたつもりだった!なのに、お前は自分が式部の正妻みたいに振る舞うし、周りもそういう空気になる!」
確かにぼくは式部使いとしてファンクロ界隈ではかなり有名で、式部といえば成世……みたいな空気にはなっていたように思う。
「お前がいるから式部イベントで私は絶対に1位にはなれない!ファンクロ界隈の人間どころか、運営にさえも認知されて贔屓されて!」
そしてぼく自身も周りから自分が "式部の人" として扱われるのがとても気分が良かった。
「まだお前が仕事して自分で稼いだ金で課金してるなら我慢もしたさ……。だけど学生だって?」
確かにぼくは学生で、しかもバイトをしている訳では無い。ただ、親が海外で働いていてお金持ちだったから親のお金を湯水の如く使い、課金しまくっていた。
「ただ親ガチャに成功しただけで周りが追いつけないくらい課金して毎回1位で……!!それで式部の正妻扱い!?……ふざけるな!!」
「……っ」
この言い分からして今まで相当ぼくに対して恨みつらみを募らせてきたのだろう。それをぶつけるかの如く、ぼくの左手を踏み躙る。……やばい……もう左手の感覚がなくなってきた……。
「……だけどね、成世ちゃん」
「……!?」
このまま左手を潰されてしまうのではないかと思ったその時、突然足を退かされて解放される。
「これまでずーーーーっと成世ちゃんに負けっぱなしだった私に、チャンスがやってきたんだ」
彼女の声色は、先程とはうってかわって優しいものへと変化している。あまりにもギャップがありすぎて、逆に不気味に感じてしまうくらいに。




