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「いいえ。私はいつでも成世様をお慕いしております」
式部が、ぼくの言葉を否定する。
ファンクロの式部は、ぼくの知っている式部は……こんなこと絶対に言わなかった。
そもそも彼はプレイヤーに意見などしないし、プレイヤーの言葉を否定したりなんかする訳が無い。
彼はプレイヤーにはとても従順で逆らうことなんて有り得ない。だが、プレイヤーのことを好きになるなんてそれ以上に有り得なかった。彼には感情が無い。ただプレイヤーが自分の主人だから、主人の命令に従っているに過ぎないのだ。
でも、現実に召喚された式部は……ぼくのことを好きだと言う。
……最初からずっと覚えていた違和感。
そういえば召喚した時から、式部はずっとぼくに優しくて、執着しているように思えた。
だって、普通ならプレイヤーが傷つけられたところで、式部はあんなに怒ったりしないし。命令以外で、自分の感情で動いたりするようなキャラじゃないのに。
自分を主人の人形だと思っていて、自我なんかない、そういうパートナーなのに。推しに対してこんなこと言うのはアレかもしれないけれど、でもぼくはそういう式部が好きで、推していた訳で。
でも今ぼくの目の前にいる式部は、何もしていないのに、レベル2のスキルが使えるくらい、ぼくを愛してるの……?
「……成世様?」
「……………ぁ、」
式部が心配そうにぼくを見ている。顔が、近い。こんなに近いのに、面布の中は見えない。彼の表情は窺えない。
だけど彼は本来、こんなことは絶対にしない。そういうキャラじゃない。ずっと式部で上位ランカーだったぼくが言うんだから間違いない。
でも……
「……ううん。何でもない」
「そうですか?体調が悪そうに見えましたので、心配で」
「大丈夫……ちょっと色々考えちゃっただけだから。織華さんもごめんね。話、続けて欲しい」
まだリアルファンクロのことについて聞きたいことは沢山ある。今、話を止めたくなかった。ぼくは織華さんに続きを促す。
それにこれ以上、式部について考えるのは……何となく怖くなってしまったから。




