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「では、わたくしの知っていることを説明致しますわね。召喚された者……例えばムラサキ式部様やなぎ……セイ少納言のことを《パートナー》と呼びますの」
うん、それはファンクロでも同じだったからよく知っている。しかし、ぼくはそれよりも気になることがあった。
「えっと、織華さんは《なぎ》って呼んでるの?セイ少納言のこと」
多分、これは触れない方がいいかもしれない。主にセイ少納言の為にも。だけど好奇心には勝てなかった。なんやかんや言って仲良いんじゃないか、この二人。
「え、ええ……まあ、そうですけれど……」
「もしかして君も僕のことなぎって呼びたい感じ?良いよ良いよ!女の子なら大歓迎……」
「お黙りあそばせ!!」
言い終わる前に織華さんはセイ少納言にアッパーを喰らわせる。彼は盛大に吹っ飛んで、天井にめり込んだ。……ごめんな。何となくこうなることは理解して話を振ったぼくにも責任はある。だがぼくは謝らない。
まあ毎回毎回セイ少納言と呼ぶのも長いし、少納言と呼ばせて貰うことにしよう。なぎ呼びは……何か嫌だったので止めておく。
「うん……で、話を戻すけど。式部たちのことをパートナーって呼ぶのはファンクロの方でもそうだったんだよね」
「そうなんですのね。そして、パートナーを使う者……わたくしや芋煮様のことは《プレイヤー》と呼びますのよ」
「あー、成程。そこは一緒だ」
これはぼくが今までやってきた普通のファンクロと変わらない感じみたいだ。分かりやすくて助かる。
「そしてこれもファンクロと同じかどうかは分かりませんが。パートナーは全員……《スキル》というものを持っているのですわ」
「……スキル?」
そういうのはファンクロには無かった。いや、正確に言うと実装前だった。
ファンクロのパートナーは攻撃方法はあったものの、必殺技みたいなのはなく、それがスキルという名前で実装予定だった……みたいな話はあった。……実装前にデータが飛んでしまった訳だが。
「はい。私めのれべる1のすきるは『自己犠牲』……他人の苦痛を私に移し替えることが出来ます。そしてれべる2のすきるは『犠牲解放』……こちらは私に移した苦痛を更に別の者に移し替えることが出来るのです」
式部が自分のスキルについて説明してくれると、織華さんは口に手を当てて驚いたような仕草を見せた。
「あら……式部様はもうレベル2のスキルをお使いになられますの?まだ芋煮様に召喚されたばかりだと思ったのですけれど……」
「えっ?どういうこと?というかスキルにレベルってあるの?」
「スキルってのはレベル1から3まであるんだけど。普通、パートナーは最初はレベル1のスキルしか使えないものなんだよ……っ痛ァ!!」
「あなたは口をお挟みにならないで。今からわたくしが説明するところでしたのよ」
少納言が口を挟んだが、織華さんが勢いよく足を踏んだらしく、少納言は不服そうに黙った。……今回はちょっと可哀想な気もする。
「えっと……じゃあどうしたらレベル2のスキルが使えるようになるの?」
最初はレベル1のスキルしか使えないということは、レベル2やレベル3のスキルを使う為には何か条件があるということだ。そして、式部はレベル2のスキルを習得する条件を満たしているということになる。
こうなるとレベル3のスキルも早く使えた方が良い。スキルの解放条件は知っておくべきだろう。
「レベル2のスキルはパートナーからの親愛度を上げることで解放されるんですのよ。つまり、パートナーから愛されれば良いのですわ。レベル3はそれに加えてプレイヤーのレベルも必要ですけれど……」
「へえ、親愛度かあ……」
ん?
えっと、それはつまり……
「ぼ、ぼくへの式部の親愛度が高いってこと……!?」
「そうなりますわ。召喚してすぐなのにこれ程まで親愛度が高いのは素晴らしいですわ。芋煮様は才能がありますのね」
な、何かめちゃくちゃ照れ臭いけど……そうじゃなくって!
問題はそこじゃない。式部のキャラ設定的におかしい。完全に矛盾している。
「……だって、式部は……人を好きにならないんじゃ……」




