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……とりあえず彼女を落ち着かせ、着席させた。
今、喫茶店に全く客が居なくて良かったと思う。本来ならめちゃくちゃ騒ぎになっていただろう。……これもご都合主義とか言うなよ。
「……先程は大変失礼致しました。わたくし、阿久間織華と申しますの。わたくしもこの訳の分からない騒動に巻き込まれておりまして……わたくしなりに調べたことで芋煮様のお力になれたらとお声を掛けさせて頂いたのですわ」
「……!ほんと!?」
正直、この申し出はめちゃくちゃ助かる。何も分からないまま巻き込まれるなんて、もうゴメンだからな。ちゃんとリアルファンクロのことを知っておきたい。
「まずリアルファンタジークロニクルとは……アプリゲームにもファンタジークロニクルというものが御座いますがあれとは別物……いいえ、似て非なるものと言った方が宜しいかもしれませんわね」
「似て非なるもの?」
「ファンタジークロニクルはゲーム内でパートナーキャラを育成したりクエストをこなしたり……所謂ソシャゲ、と呼ばれるものですわよね?」
ぼくの理解している通り、ファンクロは所謂ゲームだ。現実じゃない。
だけどぼくはファンクロのことは大好きだし、式部のことを愛している。でもそれはちゃんとゲームだけのことだって、理解していたんだ。どれだけ努力したって、推しが画面から出てくるなんてことは有り得ないって……分かってた。
それにファンクロには危険な内容のストーリーやクエストだってある。それが楽しめたのはあくまでゲーム内での出来事だったからだ。
「ですがリアルファンタジークロニクルは……それらのことが全てこの現実で行われているのですわ」
……なのにそれが現実になってしまった、ということ?
これはもう、推しが画面から出てきてくれて嬉しいだとかそういう次元を超えている。ファンクロの全てがリアルになってしまったなんて、そんなの……災害とかそういうレベルじゃない。もっと危険なものを呼び出してしまったとか……上手く言葉には出来ないけど、とにかくぼくらはとてつもなくやばい現実に巻き込まれてしまっているのだ。
そんなファンタジーなこと有り得ないとか、どういう原理でゲームのキャラをリアルに呼び出しているんだとか、そういうことは置いておこう。多分、聞くだけ無駄だ。それが分かったとて、ぼくらの状況は変わらない。
とりあえず今分かっているのはファンタジークロニクルがリアルになってしまったことだけ。とりあえずそれを受け入れることにしよう。
「色々気になることはあるんだけど……とりあえずファンクロとリアルファンクロの違いを知りたい」
リアルファンクロは本当にファンクロをそのままリアルに再現したものなのか、細かい差異はあるのか、そこは知っておきたい。
「申し訳ございませんわ。わたくし、ゲームのファンクロはプレイしたことが御座いませんの。ですからわたくしがリアルファンクロで知っていることをお話する形で宜しくて?」
「未プレイなのに巻き込まれたの!?」
「ええ。朝起きたらスマホに知らないアプリが入っておりましたの。気味が悪いので削除しようとしたのですが気を失って……気づけば彼が隣に居た訳ですけれど」
そう言って織華さんはセイ少納言の方を見やる。……それって普通に怖くないか。織華さんはよく受け入れられたな。
「ビビった織華に何発も殴られたね。話を聞いて貰うのに時間かかったよ」
「なぎ、お黙りあそばせ!!」
またセイ少納言が織華さんに吹っ飛ばされた。これ以上この男に喋らせると喫茶店が大変なことになるかもしれない。なのでぼくは余計なことを言うな……と目線を送る。
「なになに?何その熱視線!僕サマのことが気になっちゃう?」
……あ、ダメだ。ぼくも鬱陶しいって思っちゃった。そういえばセイ少納言ってゲーム内でも結構ウザ系のキャラだったなあ……と、再度吹っ飛ぶ彼を見てぼくは思うのであった。




