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「……ん、んん……」
「良かった……!サスケ氏……!」
「な、成世氏……?」
家の前で目を覚ますサスケ氏。良かった、本当に眠っていただったんだ……ぼくはほっと胸を撫で下ろす。
ちなみにどうやってサスケ氏を家まで送ったかというと、呼び出された場所からサスケ氏の家がたまたま近かったので式部に背負って貰ったという訳だ。流石にぼくとサスケ氏を背負って空を飛ぶのは式部にも不可能だろうし、家が近くて良かった。おいそこ、ご都合主義とか言うんじゃないぞ。
サスケ氏には式部のことを話そうと思ったが、推しが画面から出てきた……なんて話、普通は信じて貰えないだろう。ぼくだってまだ半分は夢じゃないかと思っているくらいだ。なので現在式部には近くに隠れて貰っている。
「うう……寒い」
「まだ夜は冷えるもんね。早く家入りな」
「そ、そうでござるな」
もう四月とはいえ夜は結構冷える。サスケ氏は寒そうに震えていたが、布団も何も無い状態で寝ていたのだから仕方ない。
「しかし……拙者は何故外で寝ているのでござろう……?」
いやまあそうだよね!普通疑問に思うよね!ああサスケ氏が眠っている間に言い訳でも考えておけば良かった……!
でも、誘拐されたことを覚えていないのはサスケ氏の精神衛生上良かったかもしれない。
「あー、えっと、夢遊病?だな!」
「夢遊病……?では、何故成世氏は此処に……?」
「え、えーっと!ぼくは夜中の散歩!」
ぼくの答えにサスケ氏がジト目でこちらを見つめる。分かってる。分かってるさ。我ながらあまりにも酷過ぎる言い訳だって!
「全く……成世氏。こんな時間に散歩は感心しないでござるよ」
「……うう、ごめん」
しかし意外にもサスケ氏は素直に騙されてくれた。君が単純な性格で良かったよサスケ氏、ありがとう。
「送るでござるよ」
「……えっ!?」
そうだ、サスケ氏は紳士だ。ぼくが夜に一人で歩いていたなんて聞いたら決して一人で帰らせるようなことはしないだろう。
だけど今は式部がいる。式部にはぼくらの背後を隠れて着いてきて貰うにしても、サスケ氏に見つかってしまって式部のことをぼくのストーカーのコスプレイヤーだと誤解する可能性もある訳だ。だから申し訳ないけれど送って貰う訳にはいかない。
「だ、大丈夫!一人で帰れるから!」
「しかし夜間の女性の一人歩きは……」
「大丈夫だから!ほら!外で寝て風邪引くかもしれないんだから無理しちゃだめだよ!サスケ氏はとっとと寝るんだぞ!」
まだ何か言いたそうなサスケ氏を無理矢理家に押し込む。明日、色々聞かれちゃうかもしれないなあ……忘れてくれてたらいいけど。
「……ごめん、式部。お待たせ」
「成世様、あれで大丈夫なのですか」
「う……多分……」
"あれ" とは先程のあまりにも酷過ぎる言い訳のことだろう。うん、ぼくだって反省しているさ。
「そうですか。では、帰りましょうか」
そう言って式部はぼくを抱き抱えた。……って、おい!!これはまさか……!!
「ちょ、ちょっと待って!また空飛んで帰るの!?」
「そちらの方が速いので」
「やっぱり!?い、いや、でもやっぱり歩いて帰る方が……!!」
「ダメです。危険です」
飛んだ方が危険だと思うんだけどなあ!?
仕方ない。あまり気が進まないけれど、命令という言葉を使わせて貰うことにしよう。それなら聞いてくれるだろうし。
「め、命令だよ!歩いて帰ろう!?」
「それはたとえ成世様の御命令でも聞けません」
「そ、そんなあっ……!!」
命令なら聞くって言ってたのに!!
ぼくは何度も抗議したが、聞き入れて貰えず。結局また空の旅を楽しむことになったのである……。
「し、式部!!もっとゆっくり!ゆっくりだってばーーーー!!!」




