2-8
「……何をなさるのです」
「し、きぶ……」
声は、出ない。だからぼくは恐怖で震える身体に鞭を打って、咄嗟に式部に抱き着いた。
本当は怖くてたまらない。だけどこのまま何もしなかったら、式部が人を殺しちゃう。それだけは嫌だった。
「やめて……!その人もう戦えないよ……!」
「しかし、成世様」
「だめ……!やめて!!」
お願い式部、分かって。
祈りを込めて抱きしめる力を強める。
「……成世様」
「なあに……?」
「それは、御命令ですか」
「ううん、命令じゃなくて……お願い」
「お願い……ですか」
少し考えるような素振りをした後、式部は男の首から手を離してくれた。
「こ、このっ……!化け物め……!!」
男は咳き込んだ後、捨て台詞を吐いて慌てて逃げ去って行く。
「化け物……」
「違うよ……式部は化け物なんかじゃないよ……」
男が最後に吐いた言葉を式部はもう一度呟く。その言葉をぼくは慌てて否定した。確かにさっきの式部は怖かったけど、ぼくとサスケ氏を守る為にしてくれたことだと思うから。
……それに、ぼくの推しは化け物なんかじゃないと自分にも言い聞かせたかった。
「そういえば成世様」
「な、何かな……」
「何故、私を止めたのですか」
式部はこちらを振り向く。その表情は、読めない。
「……ぼく、式部が人を傷つけるの、見たくない……。絶対、見たくないの……」
だから本音を告げる。
そのまま安心して、力が抜けて、ぼくは泣き崩れてしまった。
「……泣かせてしまった」
ぼくの涙を見て、式部がぽつりと呟く。
「……え?」
「私が、成世様に涙を流させてしまった」
「え、ちょ、……式部?」
なんか、嫌な予感がするぞ。
さっき式部がキレたのは、あの男がぼくを泣かせたからだ。そして今もぼくは泣いてしまった。
つまり式部は自分に対してキレかねない……!!
「これは、腹を切ってお詫びするしかありません……」
「ちょ、ちょちょちょちょ!待ってーーーーー!!」
ああ……!やっぱりそうなってしまった……!!
膝をつき、何処から取り出したか分からない懐刀で今にも切腹しそうな式部をぼくは何とか説得するのであった。




