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「……姉ちゃん?」
「!?!?!?」
「姉ちゃん?どうした?大丈夫か?」
部屋の外から聞こえてきた弟の声に、思わず涙が引っ込んだ。……そして、冷静になった。
自分の目の前には、顔に面布をつけて、一般人から見たら明らかに妙ちきりんな格好をしている男が一人……。
「やばい……!」
「やばい?ですか?」
鳴海には聞こえないように小声で呟く。
というか式部、やばいの意味分かってないんだな。ちょっと可愛い……とか言ってる場合じゃない!
どう考えたってこの状況はまずい!
ぼくの贔屓目を抜きにしたら、式部の格好はどう見ても……変わってる。変わり過ぎている。
それ以前に男性がぼくの部屋に居るのは絶対に怪しまれる!バレたら鳴海に質問攻めにされること間違いない!それはやばい!非常にめんどくさい!!
「こっち!」
ぼくは式部を押し入れに押し込んで……何故か自分も一緒に隠れてしまった。何故だ。
よりによって狭くて暗い空間で式部とふたりきりになってしまった。色々密着している。なんかいい匂いもする。……耐えろ!叫び出したいが耐えるんだ、ぼく!
「……姉ちゃん、飯作ったけど……もしかして寝たのか?」
……鳴海の声が聞こえる。
鳴海はデキる弟だ。絶対にぼくの部屋に勝手に入ったりはしない。だから返事が無ければ寝たと思って入ってこない筈だ。
「成世様、呼ばれているようですが……」
「だめ。しーっ」
ぼくは自分の唇に人差し指を当てて、静かにしてとアピールした。
「しーっ」
それが面白かったのか、式部もぼくの真似っ子をして、しーってやってくれた。
と、尊い……!!
……だが堪えろ。叫ぶなぼく。鳴海が去るまで寝たふりをするんだ。
ああでも尊い……!ぷるぷる。式部への尊さを我慢しきれなくて、身体が震える。
「……おやすみ、姉ちゃん」
鳴海は諦めたのか自分の部屋に戻ってくれたらしい。
それを見計らってぼくは押し入れを開け放ち、堪えていた言葉を出来るだけ小声で放った。
「尊い……っ!!」
「……?尊い……!」
どうやら式部はこれが押し入れから出る時の作法だと勘違いしてしまい、同じように小声で言い放った。
あまりにも尊過ぎて、拝んだ。




