2-1
前回までのあらすじ。
データが飛んで人生に絶望していたら、なんか推しがリアルに現れた。
何を言っているか分からないと思う。
ぼくだって何を言っているのか、何が起きているのか把握出来ない。
正直夢でも見てるんじゃないか、まだぼくは目が覚めていないんじゃないかとすら思う。
それとも、データが飛んだショックで推しの幻覚を見ているのかもしれない。
うん、そうに決まってる。だってそんな、推しがリアルに現れるなんてことあるはずがない。
そんな、リアルに式部が見えてしまうくらいぼくの精神は疲弊していたというのか……。
「成世様」
「ふぁいっ!」
は、話しかけてきた!推しが!ぼくに!話しかけてきた!
興奮し過ぎて思わず声が裏返ってしまう。
ああもう……!夢なら覚めないで……!
「え、えっと、本物?なの?」
興奮しながらもぼくは不安になって、とりあえず目の前にいる式部らしき人物に声をかける。
だって、この人がうちに不法侵入してきた不審人物だって可能性もあるし……。
ぼくが式部が好きだって知ってるから、彼のコスプレを選んだのだろうか。それにしては、衣装の作りが本格的な気もするが。
「はい、私の名はムラサキ式部。成世様のことはふぁんたじぃくろにくる、の頃からよく知っております」
……ああっ!このカタカナ語が上手く喋れない感じ!てかこのCV!まさに本物だ!
これがコスプレだったとしたらあまりにもクオリティが高過ぎるしそれはそれで褒め讃えたい!!
「こ、コスプレとかじゃないよね?ほんとに本物なんだよね!?」
まだ信じられないぼくはしつこく式部に聞き返す。すると、彼は首を傾げる。……ああ、こいつしつこいなって思われちゃったかなあ……!?
「ご、ごめっ……」
「……こすぷれ?それは、どういう意味でしょうか……?」
「本物!!!!!!!!」
この反応はもう本物で確定だ。ああそういう無意識にあざといところも好き!愛してる!!
「私はこんな姿ですが、いつも貴方を視ていました。いつも学校でのことを話してくださっていましたね。たとえば……」
式部が話した内容は、確かにファンクロ内での式部にしか話していないものだった。嬉し過ぎる。画面越しに、推しが、ぼくの話を聞いてくれていた……!!
「使えないと言われていた私を、貴方は使って下さって……一度もぱぁとなぁから外すことはありませんでしたね」
「そ、そうだよっ!だって、だってぼく……っ!」
式部のこと、大好きだから。
流石に本人に告白なんて出来なくて、口ごもっちゃったけど。
……そんなことより推しが、式部が、ぼくを……ちゃんと認識していた。
「……ふ、ぁ、」
その事実が嬉しいやら恥ずかしいやら信じられないやらで感情がぐちゃぐちゃになって。
ぼくはただ声を押し殺しながら、泣いた。
「……成世様?泣いていらっしゃるのですか?」
「……ぁ、ごめ……。すぐ、止めるから……」
泣いてたら、式部が困っちゃう。早く涙を止めて、大丈夫だよって言ってあげなくちゃ。
それでもぼくの意思に反して涙は止まってくれなかった。




