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「ナルヨさま」
……ぼくを呼ぶのは、誰?
こんなクズなぼくに用がある人なんているの……?
「ようやくこの時が来たのです」
ようやく……?
……ううん。どうでもいいや。ぼくはもう、このまま眠ってしまいたいんだ。そしてこのまま死んでしまえばいいんだ。式部のいない世界なんて、どうでもいい。だからぼくはこのまま死ぬんだ……。
「ダメです、ナルヨさま。さあ、早くガチャを回しましょう」
ガチャ……回すも何も、データ飛んじゃったんだよ……。
最初からなんて、ぼく……出来ないよ……。時間も愛もお金もかけたのに……。もう一度やり直すなんて……。
「成程……そうでしたか。ナルヨさま。あなたの推しへの愛は、その程度のものだったということですね」
……………は????
「ンな訳無いだろ!!ぼくは誰よりも彼を愛してる!!」
ぼくは思わず声に出して叫んだ。するとそれを聞いていた男はふふふと笑った。……女かもしれないけど。何せ姿が見えなくて、声しか聞こえないから分からない。
……と、そんなことはどうでもいい。何としてでもぼくにガチャを引かせようとするコイツは、まさか。
「お前!さては運営だな!?こんなことしてる暇があったらさっさとぼくのデータ復旧しろよ!!」
「データの復旧は出来ません。ですが……」
「は!?ふざけんな!」
「話は最後までお聞きください。データの復旧の代わりと言っては何ですが……」
「全く新しいファンタジークロニクル……リアルファンタジークロニクルに招待致しましょう」
「な、何それ!どういうこと!?」
「従来のファンクロよりも、確実にご満足頂けるかと思います。ナルヨさまにはご迷惑をおかけしたお詫びとして、最初の無料ガチャで確実にURのパートナーが召喚されるように調整させて頂きました」
何それ!?
ほんとに何言ってるかついてけないし、そもそもぼくの話を聞かないで勝手に話を進めないで欲しいんだけど……!!
「ナルヨさまはムラサキ式部を愛していらっしゃる。それはもう、実在の男性を愛するのと同じように」
「な、何でそれ……知って……!」
「いつもいつも、ファンクロを楽しんで頂いているナルヨさま。そんなあなたにこそ、リアルファンクロは相応しいのです」
微妙に会話が噛み合っていない気がするし、この人が何を言っているのか、理解出来ない。
「さあ、ナルヨさま。こんなところにいないで、早く目を覚ましましょう。そしてガチャを回すのです」
「ま、待ってよ!ぼくの話も聞い……っ!!」




