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偽物の聖女  作者: ゆきもち
第一章『東国(ひがしこく)』編
30/74

第30話『報酬』

『緑の神殿』での出来事から二日が経った。

あの後アレクシスとクインは国へ報告。私とリオナルドは宿屋へ直行。そして私はそのままベッドに倒れ眠ってしまった。

声とわずかな気配だけの『精霊王』、少しの会話をしただけの『風の精霊』。これだけのことだったのに、私は体力も魔力もごっそりと持っていかれた。

声を出し会話もできたアレクシスはともかく、リオナルドとクインはどうだったのかというと、私と違い無駄に魔力で防御せず、身動きもあまりとらず静観していたからか、私よりはダメージを受けなかったみたいだ。それに、騎士団の服もなんらかの作用をしていたようだがそこは私にはわからずじまい。


ともあれ、昼に『緑の神殿』に向かい、夕方に宿屋に帰ってきて熟睡し、起きれば次の日。その日はゆっくり静養しようということで、リオナルドとのんびりと過ごした。

イカ足のから揚げや『東国』名物だというレモン&ライムジュースという美味しいものと出会ったり、安いガラクタのような宝石を買ってそれを浄化の粉に変えようとして、リオナルドに『それは静養とは言えない』と言われたりと、とにかくゆっくりと過ごした。


……本当は聞きたいことが山ほどあるが、リオナルドからは『団長から話があると思う。自分も良く分かっていない』と言われてしまっては、なにも聞くことなどできない。


そうして迎えた今日、私は以前『緑の神殿』にて解決した事件の報酬をもらいに、リオナルドとともにギルドを訪れていた。


「素晴らしい功績に、ギルドスタッフ一同お礼を申し上げます!」


受付の女が大きな声と動作で感謝の気持ちを表す。ギルド内はざわつくもそこまで驚いている者はあまりおらず。よく見る光景なのだろう。


「今回リオナルド様には報酬としてこの金額と星を、セリナ様にはこの金額と星をお送りいたします!」


そう言って受付の女から紙を受け取る。

えっ……!?こ、これは、じょ、浄化の粉しばらく買い放題……!さらに散財しても困らない……!い、いや、落ち着け。お金はすぐなくなるものだ。冷静に冷静に……!

リオナルドは横で涼しい顔をしているがAランクの冒険者なので、私がさらに驚く金額をもらっているのだろう。いいな……しばらくおごってもらおう。

そしてリオナルドは懐から銀色の小さな長方形の箱を取り出す。まるで口紅のような大きさのそれの先は蓋になっているようで、それを外すと渡された紙にぽん、とまるでハンコのように押しつけた。


「リオナルド様……それは……?」

「あぁ、そうか。セリナは持っていないんだな。ここで作ってもらうといい……お願いできるだろうか?」

「はいっ。ではセリナ様。こちらにご自身の魔力を少しだけお入れください」


そう言って、机の下から取り出したリオナルドの持つものと同じ白い長方形の箱を手渡す。花の模様が少しだけ描かれており、軽い。そこに本当に、本当に少しだけ魔力をこめるとそれは青い箱に変化した。


「こちらは『取引箱』と言います。この中にお金を入れておける便利な物なんですよ。入金の仕方は、こちらの紙に入れる金額を書き、そこに取引箱で同意の紋を押してもらいます」


私は言われるがままに受付の机に紙を置き、もらったばかりの箱の蓋をリオナルドがしたように開けて紙に押しつける。すると、箱が少しだけ光り、そして消えた。重さも見た目も変化はない。


「これで入金が完了ですっ。逆に出金したい場合は紙に金額を書き、同意の紋を押すだけです。簡単でしょう?」


なるほど。これがあればお金がかさばることもなく持ち運べるというわけか。


「この紙は特別製で、入出金にしか使えません。取引箱も同様でお金しか入れられません。どこの国でもある紙なので安心してくださいね。ただ、この紙が流通していない小さな村での取引もあるかと思います。その場合は……」


受付の女が手を上下にブンブンと振る。


「こうやって魔力をこめながら振るとお金が出てきますので、がんばって振ってくださいね!」


うわぁ……めんどくさそう……

しかしそうか。だから今まで現金支払いを選んでいたら、店員に少し嫌そうな顔をされたのか。

てっきり私が嫌がられているのかと思っていた。


紙がないところでの依頼はなるべく受けたくないな、そう思いながらも『わかりました』と笑顔で対応する。


「入金の場合は、魔力をこめながら一コインずつお金を箱に押しつけてもらえると入っていきますので。あ、安心してください。取引箱は契約した魔力にしか反応しないので、他の人が使うことはできません。無くしてしまった場合は見つけるか……諦めて新しい取引箱を作ってくださいねっ」


にっこりと笑う女に苦笑した笑みを向ける。まぁ、自分の魔力をたどればすぐに見つかると思うので問題ないが、無くしてしまうには惜しすぎる代物だ。大切にしよう。


「それから星を渡しますので、お二人とも冒険者カードをこちらに」


リオナルドは受付の机に置いてある水晶に冒険者カードをかざし、私もそれに倣って自分のカードをかざす。するとカードが淡く光り、そして消えた。そして冒険者カードの右下に小さく星のマークが五つ刻まれた。


「星を五つためると上のランクに行けるようになりますので、がんばってくださいねっ」


あぁ、以前聞いていたポイント制というやつか。要するに功績をあげてこの星とやらを一定数ためると、上のランクへ行ける試験を受けられるようになる、と。

ということはあの事件だけで私はもう試験を受けられるのか。簡単だなと思ったが私は今最低ランク。こんなものかとも思った。


「以上ですっ。またのお活躍をお待ちしておりますっ」


受付の女が元気よくぺこりと頭を下げ、リオナルドに促され私はギルドを後にした。

そしてギルドを出た後すぐ、リオナルドに近づく街の人間の姿をした男が一人。

『少し待っててくれ』と言い、リオナルドと男が私から離れる。なるほど、偽装した騎士団の一人か。

やがてリオナルドと男は離れ、リオナルドが少しばつが悪そうな顔をしながら私のほうへ帰ってくる。


「セリナ、疲れてはいないかい?」

「……?えぇ、私は平気です」


私の言葉に少しホッとした表情を見せたリオナルドは、それでも申し訳なさそうに告げてきた。


「これから騎士団の会議があるんだ。例の話で。セリナも出席してほしいんだが……大丈夫か?」


私は待っていましたと言わんばかりに、リオナルドの言葉にうなずいたのだった。

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