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偽物の聖女  作者: ゆきもち
第四章『西国(にしこく)』編
106/112

第106話『激突』

ゴーレムちゃんとゴーレムくんが対峙する。


セリナは『なんだこれ』と呆れた目をしながらも、状況を確認。

テリアはなにも見ていないと現実逃避。

おばちゃんは涙を流して拝む。

『大地の精霊』はゴーレムくんを睨んでいた。


『やはり……アレを持ち出してきましたね。予想通りです』

『わかっていたよ、君の考えはね。でもあえてそうした』


『大地の精霊』の言葉に、向こうのゴーレムくんから声が聞こえた。

会話の内容から察するに、おそらくこの声の主がもうひとつの『大地の精霊』だろう。

どんな状況であれ『大地の精霊』が、あっさりと揃ったのは幸いだった。

このまま向こうの『大地の精霊』にも、セリナを認識させれば契約できる。

そう思いセリナが口を開こうとした時、先にこちら側の『大地の精霊』が声をあげた。


『私に謝罪する気になったのですか?』


……ん?


『そんなわけないだろう。君のほうこそ謝罪する気になったんだろう?』

『貴方が謝れば私も謝りますと何度も言っています』

『それはこちらのセリフだ。君の頑固さにはほとほと呆れているよ』

『どっちが頑固なんだか。認めて謝罪したら良いだけの話でしょう?』

『さすが僕の半身だ。同じことしか思っていないよ』


ここまで話しているのを聞いていたセリナだったが、ゴーレムちゃんが動いたせいか部屋が揺れだしたのでなんとかこらえる。

それと同時にゴーレムくんが動いているのが見えた。手に持つ光の刀身でできた剣と、その光をまとう盾を構えだしたのだ。


『……いいのですか?こちらには『聖女』が乗っているんですよ?』


……急にセリナ(わたし)を盾にしだしたぞ、この精霊(女)。


『そんなの予測済みさ。こちらは『風の精霊』が教えてくれた『聖女』の仲間を乗せているんだ』


向こうも盾にしだしたぞ。つか、盾になるのか?私たちは?


セリナはそう思うと同時にライラの気配を探った。

どうやら頭上で飛びながら、この様子を見て大爆笑しているようだ。

……本当に意地が悪すぎないか?あの精霊。


『ここで戦えばどちらかの人間たちは死ぬ!それで良いのか!』

『良くないわよ!だから謝ってって言ってるじゃない!』


え?死ぬの?

とんでもな発言に驚きつつ、セリナは慌てて精霊(女)に問いかける。


「ちょ、ちょっと、落ち着いてください!ケンカをするために再び目覚めたわけじゃないでしょう?というか、そもそもケンカの原因はなんですか?」


自分の命がかかっているのにのんきに見守っているわけにはいかない。

そう思い解決しようと問いかけたセリナの耳に、脳が理解できない言葉が聞こえた。


『向こうが、このかわいいゴーレムちゃんを一番良いゴーレムだと思ってくれないんです!』


……はい?


『それは君のほうだ!このゴーレムくんのカッコよさをわからないのが悪い!』


向こうにこちらの声が聞こえていたのか、精霊(男)の怒りの声が飛んでくる。


えーと、つまり、長ったらしいおばちゃんのエピソードも踏まえて考えるに……


『大地の精霊』は人間を模したゴーレム(原初)を作った。それを壊したくないと巨大ゴーレムで包んで保管した。それがゴーレムくんとゴーレムちゃんだと。

てっきり、ゴーレム(原初)は一つだけかと思っていたが、それの男バージョンと女バージョンの二つがあったということか?


そして、お互いのゴーレムが良いといって引けない状態になり、ケンカして、そのまま眠りについた。


それから長い時を経て、今、再び目覚めた『大地の精霊』は、そのケンカした気持ちを残したまま対峙し、なおケンカを続行しようとしている?


「え……くだらな……」


部屋のすみで、テリアがボソッと言った言葉にセリナは同意してしまった。


『セリナ!そっちにいるのか!?大丈夫か!?』


くぐもった声がゴーレムくんから聞こえてきた。間違えるはずがない、この声はリオナルドだ。

……本当にゴーレムくんの中に居るんかい。

小さく咳を一つして気持ちを整えたセリナは、リオナルドに向かって声をかける。


「大丈夫です。それよりこの状況をなんとかしなければ――」

『そうですよね』

『なんとかしないとな』


そのセリナの案に乗ったのは、元凶の『大地の精霊』だった。

ゴーレムちゃんが、ゴーレムくんが、足を広げて戦闘態勢をとる。風が砂埃を上げてゴーレムの間を抜けていく。

そして、ゴーレムくんの瞳がひときわ赤く光った瞬間――


『壊れなかったほうがすごいゴーレムだあああっ!』

『望むところですっ!』


同時に走り出すゴーレムたち。

中に居るセリナは、転ばないようにするのが精いっぱいの振動に振り回される。

死ぬ死ぬ!確かにこの中にずっといるのは無理だ!


走ってくるゴーレムくんにゴーレムちゃんが手を上げ、なにかを振る!それをゴーレムくんの盾が守る。

持っているのは……鞭か?

いや!そんなことより、ゴーレムの間には『西国』がある。それより前にもいくつもの町や村があるのだ。こんなデカい土の塊に踏まれたら一瞬で終わりだ。


「ちょ!まっ!」


セリナが慌てて目に相当する窓に張りつく。そして見える限りで地面を見る。


「えっ!?」


思わず驚愕の声をあげるセリナ。

進んだ時に踏んだであろう町や村も、攻撃で後ずさった時に削られたはずの山脈も何事もなかったようにそこに在る。今ゴーレムが踏んでいるその場所ですら普段通りだと言わんばかりの顔をしている。

そして……そこに住んでいるだろう町や村の人間たちは、小さいのでよく見えないがワーワーと慌てて逃げている。おそらく無傷で。


地面に赤い血の跡が全く見られないのだ。


あれだけの数の人間たちを踏めばゴーレムの赤い足跡がついているはず。なのに全くそれが見えない。


……どういうことだ……?


「どっちもがんばってください!精霊様っ!」

「おばちゃんっ!楽観的過ぎですよぉっ!」


その時、ふとあることに気づきセリナはテリアとおばちゃんを見る。

二人とも、セリナと違ってこの激しい振動の中、普通に立っているのだ。

セリナと二人……そして町や村との違いがそれを可能にしている……?


『私のゴーレムちゃんの鞭はそんなちゃちいゴーレムなんて壊してしまいますわよ!』

『僕の大地の力をためた盾にそんなものは効かない!たとえ傷がついてもカッコいいから良し!』


セリナは精霊が叫んでいるのを聞いて……納得した。

そうか、ここはこの『大地の精霊』の加護を受けている場所だったんだ、と。

つまり、この国の者や眷属には『大地の精霊』の力が宿っていて、力が無効化されている、と。


だが、今まで出会ってきた精霊が、自分の加護を受けた者を攻撃できないわけではない。

となると、ゴーレムたちに搭載されている能力ということか……


そう言えばおばちゃんが言っていた。ゴーレムは生ける者と『大地の精霊』が交流するためのものだ、と。

そんな相手を傷つけないための処置。一応全てを癒す『聖女』と呼ばれていたセリナでも、特定の相手だけを傷つけない魔法など使えない。

さすが精霊といったところだろうが……無駄に思えてくるのはセリナだけだろうか?


というか!精霊にロクなやついねぇっ!

『大地の精霊』がマシだと思った自分がバカだったっ!


窓にひっつきながらいい加減イライラしてきたセリナだが、止める方法がわからない。

なんとか向こうにいるリオナルドたちと協力するしかなさそうだ。


そう思いなにかないかと窓から外を隅々まで見る。

相変わらずゴーレムくんがこちらにやってきて、光の剣を振り回してくる。それをゴーレムちゃんは華麗にかわしながら応戦しているようだ。

真下には『西国』。アリのように小さい人間たちが逃げ回っている様子が見える。


ふと、その中にいくつか倒れているのが見えた。血など流れていないし、他の人間に助けられたりしているが、踏まれたようで地面に少しめり込んだ跡が残っている。

そして、見えにくいので色と全体の形で判断しているが、その多くが『西国』の服を着ていない。

おそらく冒険者か、観光客か……そこらへんだろう。


なるほど。『西国』の者以外は踏まれるくらいのダメージはあるが、死ぬわけじゃない、と。

……いや、踏まれたら死ぬけど普通。本当に精霊の技術の無駄だ。


「あれまぁ、人が倒れているねぇっ。あの黒いローブの男なんて、一番埋もれているじゃないのさ!カエルのような跡があるよ!大丈夫かねぇ?」

「ああ、大丈夫だと思いますよ。たぶん」

「……おや?セリナちゃん、知り合いかい?」

「いいえ」


いつの間にか隣に来ていたおばちゃんの会話を、にこりと笑って軽くかわしたセリナは、今度こそしっかりと頭を働かせ始めたのだった。

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