帽子などで頭を隠してる奴は敵だ、殺せ!
荒野の可也広い一角を10メートル程の城壁が囲んでいた。
その内側に立つ50メートル以上ある鉄塔の上にギリースーツを纏った男が2人寝そべっている。
1人は双眼鏡で荒野の遥か先を眺め、もう1人は大口径の対物ライフルのスコープを覗いていた。
双眼鏡で遥か先を眺めていた男がもう1人の男に声を掛ける。
「3キロ先の丘の上の奴、帽子を被ってる」
「確認した」
スコープを覗いていた男が返事を返し息を止め狙い撃つ。
3キロ先の丘の上で頭に大口径の弾丸を受けた帽子を被った男は、頭からブツブツとした小さな物を大量に蒔き散らしながら後ろに吹っ飛ぶ。
「ナイスショット!」
「ふー、しかし此処は暑いな」
「文句を言ったら門の前に居る奴らに怒られるぜ」
眼下に見える城壁内と荒野を隔てている門の周辺には、ギリースーツの上に宇宙服のような全身を覆う防護服を着た兵士たちがいて、安全な城壁内に入れてもらいたいと集まって来た難民の髪を引っ張るなどして調べていた。
虫に卵を産み付けられた頭を隠している帽子など、直ぐ分かる物を被っている奴らは鉄塔の上の狙撃手が排除している。
しかし一見何も被ってないように見える鬘を被っている奴らを見つけだし排除する作業は、彼らの仕事なのだ。
検査が終わった難民は城壁内に入る事を許された。
許された難民は素っ裸にされ全身の毛を剃られ数種類の消毒液を頭から被り、種を身体に注入される。
それらを行った後の難民だった者たち、身体のあちこちから毛の代わりに植物の芽を生やした者たちは、男のある者は農地に行き自分たちの食料を生産し、別な男は城壁を広げる工事現場に行き工事に従事、女たちは子を成す為に医務室に向かう。
「まったく虫の奴ら肉が食えると分かると、鳥や動物だけでなく数少ない人間の頭にまで卵を産み付け、幼虫の餌にしようとするんだからな。
同じ寄生するにしても、俺たちみたいに共生して数を増やす努力をしろって言いたいよ」
「頭の中にまで入り込まれ俺たちにコントロールされている状況でも、共生って言えるのかどうかは知らんがな」
「数は増えているぞ」
「俺たちも人間の身体に寄生できたお陰で虫共を駆除できるようになったから、共生って言えは共生か」
「高度な文明を崩壊させてまで同類同士で殺し合い、滅亡寸前になりながらも殺し合いを止めずにいて、虫共の餌になっていたこいつ等を救い数を増やしてやったんだからな、文句を言われる筋合いは無い筈だ!」