Chapter2-3 囚われのモニカ 3
「よっ」
「……あなたも飽きないね」
見慣れた侵入者の姿を見た少女は、嘆息しながらも窓を開ける。
ケイトはほとんど毎日、モニカのところにやってきた。
モニカもそのたびに彼を招き入れていたので、人のことはあまり言えないのだが。
「オレンジパクろうとしたら、カイのやつが店のオヤジに捕まりそうになってさ。オイラが犬のうんこ投げつけなかったら、今ごろあいつ殺されてたかもしれねえぜ」
いつもケイトが最初に話すのは、今日あった出来事だ。
だいたいいつもケイトが活躍するので、はっきり言って信憑性は低い。
でも、彼はモニカと違って、毎日が冒険なのだ。
それだけは間違いなかった。
彼は貧民街の出身で、仲間たちと一緒に盗みで生計を立てているらしい。
モニカとしてはあまり感心するものではなかったが、結局それも、生まれが違ったというだけのことなのだ。
今のモニカが街に放り出されても、何もできないのだから。
ケイトだけを責めることはできない。
彼らのような子どもが一人で生活しなければならない環境そのものが問題なのであり、根本的な原因は彼らを支配している国や貴族にある。
そう気付くことができたのは、ケイトと話して得られた大きな収穫の一つだった。
かつてのモニカなら、盗みで生計を立てるスラム街の子どもなど、侮蔑の眼差しでしか見ることができなかっただろう。
「……なんか小難しいこと考えてるだろ」
「気のせい。ケイトは盗まないと食べていくことすらできない、弱くて哀れな生き物だと再確認してただけだよ」
「その通りなんだけどド直球すぎない!? もうちょっと優しくしてくれてもいいと思うんだけどな!!」
「あんまり騒がないで。また見回りに気付かれ――あ」
「うわ、ほんとに来やがった。おちおちツッコミもできないのかオイラは……」
「ツッコミ?」
「それは明日教えてやるよ! じゃーな!」
そんな感じで、見回りに勘付かれながらもケイトは去っていく。
「モニカ様。少しよろしいでしょうか?」
「ああ、ちょうどいいところに。さっき何か変な音が聞こえたの。様子を見てきてくれる?」
「はっ。ただちに」
そんな感じで、見回りをかく乱するのもモニカの役目のひとつになっていた。
「……はあ。やれやれ。疲れるな」
そうため息をこぼしながらも、モニカの口元には柔らかな笑みが浮かんでいた。




