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Chapter1-4 聖女さま、蹂躙する 2

昨日分の投稿が間に合いませんでしたので、本日は2話投稿します! よろしくお願いします!


 突然のベルたちの来訪に、村人たちは最初戸惑っていた。

 たしかに、村で狼藉を働く『解放軍』に恨みはある。消えて欲しいと願っていた。その感情に嘘はない。

 だがもし『解放軍』に逆らったことが明るみに出たら、自分たちも処刑されるのではないか。

 そう思っていた。


 しかし、聖女ベルと王子アレクの演説を聞いて、彼らは思いだした。

 ランデアはランデアの人々のものだと。こんなことは間違っていると。

 間違っていることを許すわけにはいかない。だから立ち上がるのだと。

 ある者は涙を流し、ある者は胸を高ぶらせながらそれを聞いていた。


 ずっと続くと思っていた暗黒の日々に、たしかな光が差すのを感じたから。

 動きを止めていた時が、動き出す予感がしたから。


 そんな人々の表情を見た聖女は、微笑んでいた。

 ただ、ずっと、微笑んでいた。




 ――――――――――――




「あー、疲れた。みんなの前で話すと疲れるね」


 演説からしばらく後、ベルは『解放軍』の捕虜たちのもとを訪れていた。

 後ろ手に縛られており、兵たちが見張っているため、まず逃げ出す心配はない。

 その数は二十人ほど。残りはベルかアレク率いる部隊に殺されてしまった。

 欲を言えば部隊長の男は生け捕りにした方がよかったような気はするが、殺してしまったものは仕方がない。


「ベル様。何をするおつもりですか?」

「尋問です。簡単なものですが」


 尋問という言葉を聞いた兵が、眉を顰める。

 しかし、それも必要なことなのだろうと自分を納得させた。

 ベルの武勇が優れているとはいえ、今の自分たちは『解放軍』と比べれば豆粒のようなものだ。

 勝率をあげるためには、どんな手段でも使ったほうがいい。


 ベルは大斧を手に、捕虜の一人の前に向かう。

 捕虜の男は、胡乱げな目つきでベルのことを見ている。


「尋問って言われてもよ……俺が知ってることなんてほとんどねぇぞ」

「ランデアの各村、街に派遣されている部隊の人数と、王都に常駐している『解放軍』の人数。大まかにでもいいので教えてください」

「おいおい、俺らは下っ端だぞ? さすがにそこまで知らねえよ」

「そうですか」


 捕虜の男がそう言った瞬間、男の頭が消失した。

 ベルの放った大斧の一撃が、男の頭を抉り取ったのだ。


 辺りにいる兵士たちは、そんなベルの凶行を唖然とした表情で見ている。

 何が起きたのかわからないというような表情だ。


「じゃあ、次の方。あなたはわかりますか?」

「ちょ、ちょっとまってくれ。嘘なんてついてない! 本当に知らないんだ!」

「そうですか」


 男の言葉を聞き届け、ベルは大斧を振るう。

 骨と肉が潰れる鈍い音が響き、男が静かになった。

 そこに至り、ようやく兵士たちは思い知った。

 目の前にいる少女が、正真正銘本物の、恐ろしい化け物なのだということを。


「じゃあ次ですね」


 化け物は何事もなかったかのように、次の生贄の前に立った。

 少女を目の前にした男は、あまりの恐怖に声を出すこともできない。


「ランデアの各村、街に派遣されている部隊の人数と、王都に常駐している『解放軍』の人数。ご存知ですか?」


 少女は先ほどと同じ質問を繰り返した。

 答えられなければ、男の命はない。

 それが嫌でも理解できたから、男は口を開かざるを得なかった。


「む、村にいるのは俺たちと同じぐらいの大きさの部隊だ。街は五百はいかないぐらい、ランデアの王都にいるのはおそらくだが一万ってとこだ。たのむ、これで見逃してくれ……」


 男が大まかな数を答え、目の前の少女に懇願する。

 少女はそんな男の頭を、穏やかな微笑みを浮かべながら撫でた。


「ひっ!」

「よく話してくださいましたね。ありがとうございます。あなたは見逃してあげましょう」

「……ほ、本当か?」

「ええ」


 少女が拘束を解くと、男の両手が自由になった。

 男は自分が自由の身になったことが信じられない様子だったが、それを認識するとすぐに逃げ出した。

 ベルはそんな男の姿を微笑みながら見送ると、残りのものたちに向き直る。

 化け物に認識されてしまった男たちは、身体を恐怖で震わせた。


「ひっ! し、知ってることならなんでも話す! だから頼む! 見逃してくれ!」

「うーん。そうですね。それじゃあ一人ずつ個別にお話をお伺いしましょうか。みなさん、連れて行ってもらえますか?」

「わかりました」


 まるでそれが名案だとでも言うかのような口調で、少女が手を合わせる。

 少女の命令を聞いた兵士達が、男の一人を無理やり立ち上がらせ、部屋の外へと連れていく。

 それはまるで、処刑される罪人が断頭台に連行されるかのような光景だった。


 恐怖で顔をぐちゃぐちゃにする男たちを前に、ベルはずっと微笑んでいた。




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