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習慣からの目覚め
リアルが忙しくて大分止まってしまいました。定期的に投稿します。今回短めです
ふわりと降り立った市街地にかつての活気はなかった。
魔王が殺される前、魔王城下は、怪しげな香に煙り、屋台が年中出ていて、喧嘩の絶えない、物騒で、でもそれもまた魅力的だった。
今となっては怪しい暗さと煙たさはなくなっている。空は澄み渡り、遠くには山の稜線が見え、怒号は消え去り、地面のごみは人だかりの減少に伴って心なしか減ったように思えた。
反吐が出る。
まばらに人影はあるが、ちらと私に視線を向けても歩調すら変えずに過ぎ去っていく。
町の端まで来ると、壁がある。この先長い道のりを超えれば、勇者のいる王都にたどり着くことだろう。
魔王城を制圧し、彼らに言わせれば”平和”になった今、果たして向こうではどうなっているだろうか。
私は黙って手を差し出した。
彼は微かに笑みを浮かべ、私の手にそっと手を添えた。