寿命20年を代償に、下の世話をしてくれる女魔神を召喚!!
「お願い、一つだけ聞いてあげる♡」
井戸を掘ろうとして、地下から出て来た魔法のランプを擦ったら、女魔神が現れた。
「下の世話をオナシャス!!」
俺は即答した。これ以外に無いだろう。
「寿命20年貰うぞい?」
「さっそく!」
腕を組み、ブリッジで地面に頭を着けた。
さあやってくれと言わんばかりのオーラで待機する。
「頼む!」
「いやいやいやいや」
女魔神が顔の前で手を振った。
何言ってんだコイツ。そんな顔だ。
「え? 下の世話は?」
「そんな上品な物は世話できん」
俺のジュニア氏を上品言いましたよ。
そりゃあ人並みよりは……ちょっとだけアレだけど。それでも上品と言うには暴れん棒でしてよ?
「20年は?」
「貰った」
「下の世話は?」
「する」
「ジュニアは?」
「上品だから無理」
ちょっとこの女魔神が何言ってるのか分からない。
下の世話が出来ないのに寿命はバッチリ取られてるし!!
「うぉぉぉぉ!!!! 20年返せー!!」
「クーリングオフ対象外なので」
女魔神がランプの中に消えてゆく。虚無だけが残された。
寿命をぼったくられた俺は、やる気が無くなりベッドに雪崩れ込んだ。そして傍にあった漫画を手に取った。
「あーあ……」
漫画を読む。
「ハハ……」
読み終えて、続きを探す。
「下巻、下巻……何処やったっけ」
本棚を見るも、下巻が無い。
「テーブルの下」
「おう?」
ランプから女魔神の声がした。
「あ、あった」
女魔神の言う通り、テーブルの下に下巻が落ちていた。
「よく知ってたな」
「下の世話ですから」
……下?
本の背を見る。下巻。
「上巻いつ買ったっけ?」
「さあ」
「下巻いつ買ったっけ?」
「一週間前の午後二時五分。近くの本屋で」
…………なんとなく分かった気がする。
「ウチから一番近い下川さん家は?」
「南東へ三キロ先」
「一番近い上島さん家は?」
「しらんぷぅ」
「ウチの地下から温泉出るか!?」
「出ない!」
本来の目的が閉ざされた。が、今は女魔神だ!
頭を使え! 頭を使え俺……!!
──!!
「俺の下世話なブツの世話を頼む!!」
さあどうだ!?
これならいけるだろ!
「とても御上品だと思います」
普通に否定された。
「大きさ的にはどうだ! 下の中くらいだろう!?」
「自分で言ってて切なくならんか?」
「──っさいわ!!」
しかし流石にこれなら躱せまい……!
さあ、お世話をしろォォ!!
「私が扱う下世界で比較すると、貴様のは上の中だ。おめでとう」
「嬉しくないわボケェェェェ!!!!」
ベッドにダイブし、思い切り枕を叩いた。
切なすぎて泣いた。
「待てよ……」
涙を一粒流したところで閃いた。
「世界一可愛い下川さん……もしくは下関か……山下……さんと結婚したい」
「お心のままに?」
──ピンポーン
「突然ですが結婚して下さいまし!!」
イカれた女が現れたのかと少し恐くなったが、俺は世界一可愛い山下さんと結婚することが出来た。
「……可愛い……のか?」
「お望みの世界一可愛い山下さんだが?」
予想を少し下回る顔の女子が現れたが、この際好き好みを通している余裕も無い……。
次は……金だな。
「今日、一番値が下がる株は何処だ?」
「ポンコツ(株)」
「よっしゃ!」
値が上がる株が分からないのが難点だったが、信用取引なら先に売る事が出来るので、値下がり後に買い戻せば利益は出せた。
ちょいとセコいが、これが一番楽だった。
「魔神さん。今日野菜の値段が一番下なお店は何処?」
「ヤケクソ」
「行ってきます!」
妻も、女魔神を有効的に活用している。魔神様々だ。
が、下ばかり気にしていた弊害が出た。
「……なんか、パンがカビてないか?」
「安かったから」
「直したばかりなのに車が動かないんだけど……」
「安いところに頼んだから……かな?」
動かなくなった車に別れを告げ、折角お金があるのだからと高い車を買うことにした。
「魔神、一番下の値段の良い車を」
「懐かしのクラシックカー。車検切れで25万」
「違う、そうじゃない。普通の車で良いんだ」
「2000ccの中古車。事故歴有り、車検切れ、125万」
「違う違う。新車で」
「新車で一番下の値段?」
「そうそう」
「向かいのディーラー。嫁を抱かせれば25万値引きしてくれる」
「違ぁぁぁぁう!!!!」
「蹴るなし」
魔神のランプを蹴りつけた。
いくら何でも安さに身を任せ妻を売るつもりは無い!
下ばかり見せ続ける魔神のやり方に、俺は次第に我慢が出来なくなっていた。
「魔神!!」
「なんじゃい」
「上の世話も頼む……!」
「寿命9年くれ」
「おう! くれてやる!」
何故これに気が付かなかったのか。
これならすぐに大金持ちの贅沢三昧だ!!
「さっそく一番値が上がる株を──ウッ!」
意識が……急に…………!!
「ウッ……ァガ……ガ……!」
「安い肉に安い魚。安い油に安い水。そりゃあ質の悪い物を食べ続ければ、寿命なんかあっという間だよね、ね?」
「ウ……ァ…………ァ……」
「たった9年で力を授けたんだから、感謝してよね? ね? ホントは30年は欲しかったんだけどさ♪」
「……………………」