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2-10 生きた教材

 翌朝──。


 朝食を食べ終わりまったりしていると、ディノフスが先触れを出した陛下からの返信を携えてきた。

 今日のお昼時に、昼食を一緒にどうかと。その時についでに話をさせて欲しいとも。

 俺は了承の意を示すと、アルカルド宛に返事を返した。


 そして昼時になり登城──転移で陛下の執務室へ直に──して、そのまま食堂へ。

 ここに集まったのは、俺と従魔達。王家からは、国王(アルカルド)王太子(ルミエール)と、それから王妃であるレミシャ。

 尚、ルミエールは現在結婚しているが、その奥方は臨月に入り安静との事で、今この場に居ない。


 そこで俺はふと疑問に思った。


「ん?あれ?弟くんは?」


 アルカルドには、三人の子供がいる。

 一人は、言わずもがな。王太子であるルミエール。もう一人がその彼の弟である【アレックス】で、ついでに最後が、あの例の王女様だ。


 俺はただ何気なく聞いたつもりだった。

 しかし、ルミエールは顔を顰めて言った。


「あれは·····気にしないで下さい。

 予めお伝えしておきます。もしかしたらまた(・・)御不快な思いをさせてしまうかも知れません。

 その時の為に、先に謝罪しておきます。すみません」


 ルミエールが、神妙な顔をして頭を下げる。


「はぁ~·····何処で育て方を間違えたのかしら?この子(ルミエール)が手の掛からない子だったから、つい甘やかしてしまったのがいけなかったのかしら。いえ、そんなのただの言い訳ね」


 レミシャも、どうしたものかと、憂い顔で愚痴を零している。

 俺は、ふーんと関心なく呟いた。


 アレックスの事は、二歳までなら知っている。が、そんな小さい時の事など、本人が覚えてる筈もなく。

 夜会の時でさえ、俺とろくに目も合わせないし、王族として挨拶──その時の顔は、何故か不本意そうだった。何故だ?──はしてくれたが、それ以降話しかけても来なかったから、現在のアレックスを俺は知らない。


「ま、酷な話をすれば、現実問題として『スペア』が居れば安心ではあるけど、今の所、俺はルミエールが居ればこの国は問題は無いと思ってるよ?」

「光栄です」

「更に嫌な話をすれば、実際国民にとって大事なのは、国を豊かにしてくれる者──自分達を良き方向に導いてくれる先導者が居れば、ぶっちゃけ誰でもいいんだ。


 後は、不満のはけ口、かな?」

「不満のはけ口·····ですか?」

「そ。人間ってのはね、不思議な物で、豊であっても無くても、多かれ少なかれ不満を持つ。平和であっても──否、平和だからこそかな?退屈な毎日に不満を覚える者は少なからず居る。


 ·····それがどれ程幸福な事か気付かずに」

『··········』

「で、結局はそのはけ口が王家に向く。正直に言えば、ただの『八つ当たり』の矛先が王家だ。


 それでも、王族はそれらを分かった上でも、国延いては、国民を一番に考えなきゃ行けない。ままならないものだ。


 現にユナシス──【武賢王】とまで呼ばれた、この国の初代国王だって、国民全て(・・)から愛されていたわけじゃないさ。

 そんな中、それこそその重圧に押し潰されそうになりながら、或いは押し潰されながらも、それでも王とは、時には何でもないと笑いながら前に進まなくちゃならない」

「·····難しい、ですね。私に出来るでしょうか?」

「出来る出来ないじゃない。やるしかないんだよ。他に代われる人が居れば代わればいいけど、王はそんなに簡単に、他人にホイホイと譲り受けて良いものじゃないからね。


 だから·····ルミエール。『味方』を作れ。一人でも多く」

「『味方』?ですか?」

「そうだ。だけど、イエスマンじゃダメだ。只々自分の意見に肯定するだけの、詰まらない人間では無く、それこそ不敬罪になろうとも、自分に食って掛かってくる位気概のある奴を。


 だけど間違えるなよ。お前も、従者の言葉にばかり耳を傾けては行けない。俺が言いたいのは、沢山の方向からの意見を聞きつつ、それでも自分の意志を持ち、されど柔軟な頭を持て、て事だ」

「·····それ、かなり無茶じゃありません?」


 ルミエールは苦笑する。


「分かってる。俺も偉そうな事言ってるが、無茶なのは自覚してるし、重々承知した上で言ってる。俺も王族に生まれたことあるからな。五男だったけど。


 その時に思ったよ。あ、これ俺には無理だわってな」

「それを、私にはさせますか」


 ルミエールが呆れたように溜息をつく。


「勿論。ルミエールと、それからアルカルドならやってのけてくれると『信じて』るからね。

 俺は、『信じる』って言葉は、とても単純で楽なものだと思ってる。逆に俺が言われたら、「お前らにそんな事言われたくない」っつって、呆れてしまうけど。


 ··········だけど、俺が言うならどうだ(・・・・・・・・・)?」


 瞬間、この意味を悟った、国王と次期国王の顔が引き締まった。


 俺は、様々な時代、様々な種族に転生して来た。それこそ、王族だったり平民だったり、貧しくて親に捨てられて孤児で育てられた事もある。

 そんな俺が、世の中の酸いも甘いも、不条理さも理不尽さも実際経験してきたその俺が言うのだ。

 その言葉は、何よりも重く彼らの双肩にの仕掛り、大きな“軛”となるだろう。


 しかし、ここまで言うだけ言って放置するつもりは、俺には毛頭ない。俺はそこまで薄情じゃない。

 もし彼らが、道を迷い道を踏み外したら、その重圧に耐えられなくなったら、その時はちゃんと手を差し伸べよう。この手を取るか否かは本人に任せるが、手を取ったなら、俺の出来る範囲で、手を貸してやるのも吝かではない。

 勿論、あまりに俺に寄りかかってくるのであれば·····その時はその時だ。この国の行く末が確定(・・)した瞬間でもあるからな。


 そんな話しで少々緊迫した空気を作ってしまったが、タイミングを見計らったようにリカルドが姿を現し、漸く食事にありつけた。

 ずっと『待て』をされお預けをくらっていた従魔達、特にその内の二人が、「やったー!」と喜んでは嬉しそうに食べていた。いや、申し訳ない。


 それから話を変え、本来の目的である昨日の出来事を一から説明した。

 ルミエールが時々何かを考えるようにしていたが、俺は何も聞かなかった。

 結局の所、今後どのような国にしていくかは、ルミエールや、その周囲にいる者達だ。


 俺のようなチート持ち(化け物)で、古い人間(・・・・)は、本来お呼びじゃないんだよ。

 偶には、過去の教訓を持ち出しては、それを参考にしたりもするが、時代は移ろい行くもの──。

 それは若い者が成せば良い。


 俺は彼らにとっては、“生きた教材”であればそれで良いから。


 俺は改めてそう思った。


 しかし、まだ俺はどうやら世界にとって必要な存在であるらしい。

 また一つ、俺の名が世界に刻まれるとは、この時の俺は思いもよらなかったのだった。


これにて2章は終了となりますが、次はこれまでの人物紹介を投稿しときます。


それを飛ばす方用に念の為。

その次は、一応番外編を投稿しようと考えています。

2章書いてる時に1話思いついたので。

まあ、まだ1話だけなので、絶対と言う約束は出来ませんが·····。


今回も、間が空くのか連日で投稿出来るのかは未知数なので、悪しからず。


では、ここまで、このような拙作をお読み下さり、有難う御座いました。

番外編や3章も(作者なりに)皆さんに楽しんで頂けるよう、精進して行きますので、今後とも宜しくお願い致しますm(_ _)m

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