082.アリッサの家系
ある日。
クリッサと言う女性がギルドを訪ねてきた。
どうやらアリッサの姉で三姉妹の長女らしい。
この人もアリッサの事を馬鹿にする為に来たのかと警戒していたが…、
「クリッサ姉!」
と言ってアリッサがクリッサに抱き付いた。
少し落ち着いてから話を聞くと、クリッサは唯一アリッサの事を馬鹿にしていなかった家族らしい。
適正は【僧侶】で王都の教会と王国治療部隊と言う回復魔法専門の部隊に所属しているそうだ。
そしてメリッサからアリッサの事を聞いて今日ギルドを訪ねてきたそうだ。
「メリッサが『アリッサの癖にありえない…』とブツブツと言っていたので何があったのかを訊いたら、アリッサがここのギルドに所属している事を愚痴りまして…」
「彼女はそんなにもアリッサがこのギルドに所属しているのが信じられないんですね…」
「メリッサはアリッサが出来そこないだと馬鹿にして優越感に浸っていましたからね…。
そんなアリッサが自分より上に居るのを認められないみたいですね。
それでアリッサ。貴方のMPが少ない問題は解決した。と言う事でいいのかしら?」
「うん。今は他の魔法使いみたいに何回も魔法を使えるよ」
「そう…どうやって解決したか訊いてもいいのかしら?」
「それは…ごめん。話す事は出来ないかな」
「そう、それなら訊かないわ」
「いいの?」
「話せないのでしょう?無理矢理訊く様な事はしないわよ」
そう笑顔でクリッサは言う。
その後アリッサの家での扱いを聞く事になったのだが、クリッサは純粋にアリッサの事を可愛い妹だと思っているらしいが、次女のメリッサはアリッサを馬鹿にして見下し、長男と父親はアリッサに興味を持とうとせず、母親と次男は自分達の家に泥を塗るとアリッサを嫌っているらしい。
「それでアリッサ。お母様とゲイリーに注意した方がいいかもしれないわ」
ゲイリーと言うのは次男だそうだ。
「お母さんとゲイリー兄にですか?」
「ええ、散々嫌がらせをして貶してきたアリッサが成功して、しかもこのギルドは王様達からも信頼されている。関わりが深いと噂されているでしょう?
どうやらそれが気に入らないのと、復讐として自分達に不利益になる様な事をしてくるんじゃ無いかと考えてるみたいなのよ」
「私から何かをするつもりは無いのですが…」
「私も貴女が復讐とかをするとは思っていないわ。良くても見返すぐらいだと思ってるのですけど、あの二人はそう考えられ無いみたいなのよ…」
「そうですか…」
「もし何か企んでるかと言う情報が入ったら教えるわね」
「ありがとうございます」
家族内で争う事になってしまうのだろうか…。
リスティの両親もそうだけど自分の家族を大切だとは思え無い物なのだろうか…。
「えっと、他の家族は大丈夫なのか?」
「そうですね。メリッサは見下してはいましたけどそれで優越感に浸っていただけですからね。
本人の性格的にも変な事はしないと思います。
ただもしかしたら勝負を挑んだりなんかはありえるかもしれません。
お父様とグランツは自分達の立場が大切な人達ですから王様達から心象が悪くなる可能性がある様な事はしないでしょう。
その代わり逆にアリッサと仲良くしようとするかもしれませんけど…」
「アリッサを追い出したと聞いたが随分勝手だな」
「返す言葉もありません…」
「クリッサ姉がずっと庇ってくれていたけど、クリッサ姉がいない時に追い出されたんだよ
一応メリッサは『さすがに追い出すのは…』って最初は止めてくれてたんだけどね。
お母さんとゲイリー兄が『家の恥。アリッサの所為で他の貴族や王様達からも馬鹿にされたり印象が悪い』って言われてお父さんとグランツ兄も追い出す事に賛成しちゃったんだよね…」
…なんというかメリッサがあれでもアリッサの事をまともに扱っていた方だと言う事が分かった。
その後アリッサも嬉しそうなのでクリッサにはゆっくりとしてもらって話をしていると学生組が帰ってきた。
『ただいま(帰りました)』
そんな声が聞こえる。
「学生組が帰ってきたか」
ついそう呟くとクリッサが反応した。
「あの、もしかして第二王女のエイラ様も一緒にいるのでしょうか?」
「よく一緒に来るから多分いると思うぞ」
「それでしたらさすがに王女様がいらっしゃるのに挨拶をしないと言うわけにもいきませんので、今から挨拶させて頂きたいのですが」
「それじゃあ会いにいくか」
部屋を出るとイリナさんがいたのでテート達の事を訊くと今は着替えていると教えてくれたので少し待つ事にする。
ちなみにエイラ様用の部屋もあって、そこにエイラ様の着替えも何着か置かれている。
少しして学生組が着替えを終えて部屋から出てきた。
四人は装備をつけている。
「あれ?お客様ですか?」
「ああ、アリッサのお姉さんでな。エイラ様が居ると言う事で挨拶をしたいらしい」
「私にですか?」
テートの問いに答えるとエイラ様が前に出てきてくれる。
「直接はお初にお目に掛かります。私シュレイデル男爵家の長女で王国治療部隊に所属しておりますクリッサと申します」
「クリッサさんですね。当国の第二王女のエイラです。アリッサさんのお姉様なのですね。よろしくお願い致します」
「はい、こちらこそ。妹とも仲良くしていただいているそうでありがとうございます」
それから二人の挨拶も終わり俺はテートに話掛ける。
「ところで装備を付けているけど訓練に行くのか?」
「はい。今から庭でエイラ様の特訓をします」
「そうか、大丈夫だとは思うがやりすぎたりしない様に気をつけてな」
「はい」
四人が庭へと向かう。
「エイラ様の特訓と言うのは?」
「ああ、学校であの三人は実技関係で講師や冒険者側として活動してくれと言われてるらしいんだが、あの三人は学園でのエイラ様の護衛の様な事もしているので断ったらしいんだ。
それで王様達とも話し合った結果。エイラ様の希望もあってエイラ様もある程度でも三人についていけるように鍛えるって事になったんだよ」
「そ、そうなのですか」
クリッサがかなり驚いている。
まあ一介の冒険者達が王族を鍛えるなんて話しになれば驚きもするだろう。
それからはアリッサとクリッサの二人でゆっくりしてもらったんだがしばらくして、
「リックさん。アインを使わせてもらいますね」
とアリッサがやってきて言った。
「はいよ。落ち無いように気をつけてな」
「はい」
そう言うとアリッサはクリッサと一緒にアイン達の元に向かった。
ここに初めて来た人は大抵アイン達に乗りたがるので今回もそうなのだろう。
それにアリッサも嬉しそうだったな。
それからしばらく空の散歩を楽しんで帰ってきたクリッサに挨拶をする事になった。
「アリッサが楽しそうで安心しました。これからも妹をよろしくお願い致します」
「ああ、アリッサは俺達の大切な仲間で家族みたいなものだしな」
「ふふっ、アリッサは本当にいい人達に会えたわね」
「はい。リックさん達に会えたお陰で今楽しいですから」
「クリッサもいつでも来てほしい。その方がアリッサも喜ぶだろうしな」
「はい。ありがとうございます。また訪ねさせていただきますね」
こうしてクリッサは帰って行った。
それにしてもアリッサの家族はこれからどう動いてくるのだろうか…。
クリッサの忠告通り警戒だけはしておこう。