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075.合同訓練

 今日はアリシアさんが隊長を務める第四部隊と合同訓練を行う事になった。

 参加メンバーは俺、アルティナ、テート、リスティ、リースである。

 お城の前まで行くとアリシアさんが迎えてくれて訓練場へと案内される。

 訓練場に入るとそこにいたのは女性だけだった。


「アリシアさん。もしかしてアリシアさんの部隊って女性しかいないんですか?」

「はい。女性騎士だけが集まった部隊ですので」


 そうなるとさすがに混ざり辛いし俺は基本的には見学ぐらいにしていた方が良いだろう。

 まずは訓練場の内周を10周走る。

 3周もした頃には元々そんなに体力の無いリースが遅れ始めて、6周する頃にはテートが、7周する頃にはリスティと新人と思われる人達が遅れだした。

 かなりハイペースで走っているしな。


「いや、アルティナ殿はさすがだな」


 と俺の隣に来たのはアリシアさん。


「さすが…ですか?アリシアさんの部下の人達は新人以外はついていけてるみたいですけど」

「今回は皆かなりのハイペースで走っているからな。隊に所属していない人達がついて行けないのは仕方が無いですよ」

「あ、そうなんですか」

「ええ、どうやら皆も部隊の者以外と合同と言う事で張り切っている様ですね」


 その後リースも何とか走りきって休憩してから訓練を開始する。

 今度は一対一での試合形式での訓練をする様だ。

 リースの相手は前回拠点に来た新人のシアラという人だった。


 試合が始まるとシアラは俺の時と同じ様に上段に構えて走り出して間合いに入ると斬りかかる。

 相変わらず剣筋は悪く無いが駆け引きが無くて単純すぎる。

 リースは模擬剣で上手く流すように受けながら横に体をずらしてそのまま胴を斬り付けた。

 

「シアラは筋は悪く無いが剣が素直過ぎるんですよね」

「それは確かに思った。俺と戦った時もだがただ上段から勢い良く振りぬいてるだけだからな」

「それに比べて彼女…リースでしたか、回復役と聞いていましたが大したものですね」

「リースもテートとリスティと一緒に訓練頑張ってるし、あの三人もダンジョンに行ったりして戦闘経験もあるしな」

「確かに新人はまだ実践経験は無いんですよね…、そろそろダンジョンにでも行かせなくては…」


 次に俺達の仲から戦うのはリスティ。

 相手はクーリエだったか?

 素早さと身軽さを生かして隙を見ては切り込んですぐに下がるリスティと、それをカウンターで合わせようと防御しながらタイミングを測るクーリエ。

 何回か切り込んだ後、クーリエが隙を見せたタイミングでリスティが踏みこんでいく、そこに合わせる様にクーリエが剣を振るうがリスティは踏みこんですぐに足を止めていた。


「あっ!」


 クーリエは焦るがもう遅く、リスティが再度踏みこんでクーリエに剣をクリーンヒットさせた。


「クーリエの狙いは読まれてましたね」

「ワザと隙を見せたのがあからさま過ぎたな」

「そうですね。もっと小さい隙を見せて飛びこんでくるタイミングを測るべきだったでしょうね」


 テートが戦う事になったのはあの時に来た副隊長だというイザベラ。


「これはさすがにテートに勝ち目は無いだろうな…」

「イザベラは私に次ぐ実力者ですからね…」

「何故あの二人が戦う事になったんでしょうか?」

「イザベラ達もそちらの二人に負けて意地になってるんだと思いますよ」

「そうは言ってもまだ学生なんですけどね…」

「申し訳ありません。あの者達は後で私からしっかりといって〆ておきますので」

「あ、ああ。よろしくお願いします」


 一瞬アリシアさんを本気で怖く感じた。

 そんな事を話しているとテートの試合が始まる。

 イザベラさんの猛攻にテートは受けるのがやっとと言う感じだ。

 でも…、


「イザベラの攻撃をあそこまで受けますか」

「ええ、正直俺も驚いてます。もっと早く勝負が付くと思っていましたよ」

「あの三人が一緒にいてくれるのであればよっぽどの事が無ければエイラ様も安全ですね。

 それにしても…、三人とも是非ともスカウトしたくなりますね。

 正直もっとステータス頼りの戦い方をするかと思ってました」

「一応基礎からしっかりとやらせてますからね」

「でしょうね。…スキルの事はともかくシアラとかの新人をリックさんに育成を頼みたくなりますね」


 そんな話をしている間にテートは次第に追いこまれて行くそしてイザベラの剣が遂にテートの首筋に当てられた。


「参りました…ありがとうございました」

「…ありがとうございました」


 負けたテートもだが勝ったイザベラの方も浮かない顔をしている。


「うぅ…私だけ負けてしまいました…」

「いや、相手は副隊長だしな…あれは相手が悪い。むしろ俺が一度戦った経験からだとテートがあそこまで粘れたのは素直に凄いと思ったぞ」

「本当ですか?ありがとうございます!」


 そして最後にアルティナがアリシアさんと戦う事になった。

 アリシアは最初の限界を突破しているそうだし白奴隷であるからにはステータス面ではアルティナが不利だろう。

 二人の対戦は予想通りアリシアさんが攻め続ける展開になった。

 アルティナも聖騎士だけあって守りが上手くクリーンヒットは避けているが攻撃に中々移れない。

 二人の試合はテート達のよりも長く十数分に及んだ。

 さすがに二人共に疲れが見え始めてアリシアさんが一気に踏み込むとアルティナもそこに合わせるように剣を振るう。

 そしてほぼ同時にお互いの体に剣が付きつけられた。


「引き分け…ですかね」

「そうね」

「勝てると思っていたんですけどね…」

「守りには自信があるからね。むしろ簡単に守りを突破される様じゃそれこそ一から鍛え直さないといけなくなってしまうわ。

 最後のに関しては完全に偶々だけどね…。

 正直次にやったらほぼ間違いなく私が負けるでしょうね」


 そんな二人に周りからは拍手が送られた。

 そこで合同訓練は終わり、


「それでは今日は解散とする。

 すいませんがリックさん達は少し相談がありますのでこの後いいですか?」


 とアリシアさんに言われて俺達はこの場に残り第四部隊の人達は訓練場から出て行った。

 全員が出て行くのを確認してから、


「すいませんリックさんにお願いがあります」

「俺にですか?」

「ええ、私と本気で戦っていただけませんか?」

「本気で…ですか?」

「はい、イザベラ達から戦った時の話は聞きました。

 しかしリックさんのステータスと皆さんの戦闘技術を見ていて、リックさんとイザベラが良い勝負をしたと言うのには疑問があります。

 それでリックさんと一度本気で戦ってみたいと思いまして…」

「…分かりました」


 そしてアリシアさんと向かいあって戦いを始める。

 俺は開始の合図と共に一気に走りこんで剣を横薙ぎに振る。


「はやっ!」


 アリシアさんは咄嗟に剣のガードに成功するが、受け止め方が中途半端だったのと力の違いの為に体勢を崩した。

 そこを更に剣を返すようにして振りアリシアさんに寸止めする。


「…参りました。ここまでとは…」

「今のは完全にステータス頼りですけどね…。俺の補正は他の皆の倍以上ありますから今のステータスはおそらく第二限界を超えて更にある程度レベルを上げたぐらいまであると思いますし…」

「そう考えると恐ろしいですね。今のリックさんに勝てる存在がこの王国にどれくらいいるか…」

「素直に技術で勝ってると言えないのが残念ですけどね…。スキルが分かる前はアルティナに負け越していましたし…」

「それでも味方でいてくれるのであれば頼もしいですよ。私ももっと鍛えなければ…。

 それと皆さん私にも敬語はいりませんよ。私も皆さんとは良き友人でいたいですし」

「分かった。それならアリシアも敬語じゃ無くて良いからな?」

「はい、ただ私の場合普段からの癖もありますし、将来の事もありますので」

「ああ、そうかレヴィン王子と結婚すれば王妃様だからな」

「ええ、それなので自分で言った事でありますが、私の方は今のままで話させてください」

「分かった」


 そしてそのまま皆で訓練場を出ると、その場にこの間拠点に来た5人が居た。


「どうした?」

「隊長達が何をしているのか気になりまして…」

「まさか見たのか?」

「いえ、さすがにあたし達が出た後でという事だと見られたくない事だと思いここで待っていました」

「そうか、それならいい」


 他の兵士達に誤解されない様にとお城の入り口まで付き添ってもらう。


「それではリックさんに皆さん是非また合同訓練をしましょう」

「ああ、こちらも是非頼む」


 城から少し離れたところで、


「リック。拠点に戻ったら訓練をしたいのだけど手伝ってくれるかしら?」

「ああ、俺も今よりも強くなりたいしな」

「リック様。私もお願いします!」

「私も」

「私もお願いします」


 アリシア達との訓練を通して更に技術を付けないといけないと思えるようになった。

 拠点に帰った俺達は更に戦闘技術を付ける為に俺とアルティナで三人に指導したりそれぞれで勝負したりする。

 今回の合同訓練が俺達にいい刺激になったのは間違いないだろう。



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