065.ミレイの驚き(SIDE ミレイ)
デルシスと別れてからアイーダと一緒にやり直そうと新しいパーティーメンバーを求めたけど、私達の悪評が既に流れていて誰もパーティーを組んでくれなかった…。
その所為で碌な依頼を受ける事が出来ない…。
採取依頼等の簡単な依頼はそれにあったランクの人達を優先してしまう為に多くある時しか私達は受ける事が出来なかった。
その関係で安い宿にして食費を削っているのにお金が無くなっていく…。
私のコレクションしていた洋服とかもほとんど売ってしまったのに、それでもお金がそろそろ無くなってしまいそうだ…。
冒険者を諦めて田舎にでも帰るしか無いのかな…。
そう考え始めた時にまたリック達に再会した。
リック達は私達の格好に驚いたみたいな顔をしている。
うん、こんなボサボサの髪だしビックリするよね…。
恥ずかしいと思っているとリックが話を聞いてくれる。
話をし終わると食事を奢ってくれて、しかもリック達のホームに住まないかと言ってくれた。
王都にまでホームがあるのには驚いたけど、家賃もいらないし食事も出してくれるらしくて、私達はすぐにその案に飛び付いた。
リック達のホームに移動したんだけど…、うんこれ完全にお屋敷じゃん。向こうでもお屋敷だったけどこっちは更に大きいよね!?
一体どれだけ儲けてるのよ。と思って失礼かもしれないけど聞いてみたら貰ったらしい…。
こんなお屋敷を貰えるって誰に何をしたんだろう…。
久しぶりにお風呂に入れたし、豪華なお部屋を一人で使って良いと言われる。
もし人数が増えて部屋が足りなくなったら二人とかで使ってもらう事になるかもしれないとか言っていたけど、十分すぎる…。
更にしばらくはアルティナとレリィーの二人とパーティーを組んで良いみたい。
何から何まで本当にありがたい。
でもその分追放した罪悪感が…。
そして私達が受けたのはCランクの依頼であるブラッドホースの群れの討伐。
Cランクではかなり上位の依頼だ。
二人は久しぶりだから連携の見直しも兼ねてと言ってその依頼を受けたけど、私達全盛期でBランクになったばかりなんだけど…。
それなのにリックとデルシスがいない状態でこんな依頼を受けて大丈夫なのかな…。
流石に不安になってしまう。
依頼を受けて指定された場所に移動して標的を捜していると、五匹のブラッドホースが群れていた。
丁度討伐必要数だ。
「それじゃあ最初はレリィーとミレイの遠距離攻撃ね。私は二人の防御を最優先にするからレリィーは臨機応変に攻撃をお願いね」
「ええ」
「ねえ、本当に大丈夫?」
「大丈夫だと思うよ」
レリィーはそう軽く答える。
確かにデルシスにも近接戦闘ですら勝ててたけどやっぱり不安になる。
そう思いながらも私が魔法を放ち、レリィーはそのタイミングに合わせて矢を射った。
そこからレリィーは次々に矢を射っていく、速い…。
既に私の知っているレリィーの動きではなかった。
ブラッドホースの動きは速いのに、私達の所に来る頃には二匹になっていた。
するとレリィーが短剣に持ち変えて一匹に切りかかり、もう一匹はアルティナが止めてくれる。
アルティナは前から凄かったけどレリィーが私の知っている動きでは無い。
結局そのままアルティナとレリィーが剣でブラッドホースを無傷で倒した。
いやいやいや、え?本当にレリィーに何があったの?メッチャ強くなってるじゃん。
リック達に近接戦闘を教えてもらってるって言ってたけどここまで強くなってるなんて…、いやそれだけじゃなくてあの矢を射つ速さ…あれも間違いなく私達と別れる前より速かった。もしかして…。
「ねえレリィー。もしかしてレベルの最初の壁を突破してる?」
「え?ううんしてないよ。今はレベル45だね」
45…私達といた時とレベル変わって無い?
え?マジで?
レリィーの成長に本気でビックリしながら町に戻ってギルドに報告する。
アルティナとレリィーは普通に四等分してくれた。
ああ、久しぶりのまともな収入だ…。
本気で嬉しくなってしまった…。
いい服は売っちゃったから新しいのを買いたい気はするけど、今はまだ貯めておこう…。
それから三日程毎日依頼を受けたからそこそこ余裕が出来るぐらいのお金が手に入った。
いやまあ、宿泊料金とかがかかって無いから少しあるだけでも余裕が出来てはいるんだけどね。
その夜リック達のパーティーが帰ってこなかった。
どうしたのかと思ったけどサイタールに一度戻ったらしい。
すぐ帰ってくるらしいけど、早馬を使っても片道で三日はかかる筈…なのに、リック達は次の日に帰ってきた。
しかもワイバーンに乗って…。
な、何でワイバーン!?
私とアイーダが驚いていると、
「ああ、あの三匹はこのギルドの騎獣なのよ」
とレリィーが教えてくれる。
いやいやいや、ワイバーンって騎獣に出来たの?初めて知ったんだけど…。
うわ、メッチャ懐いてるし…。
私も恐る恐る近づいて撫でると手に頭を擦り付けてくる。
う…可愛い…。
あ、屋敷の外に作っていた建物ってこの子達の寝床だったんだ。
するとホームを女性と女の子が訪ねてきた。
女の子の方は知らないけど女性の方は知っている。
彼女はこの国の第四部隊の隊長であるアリシア・ウェールズだ。
女性だけの部隊だという事や、彼女自身が強いという話でも有名な人である。
そんな彼女がここに何の用なのだろうか?
それにそんな彼女と一緒に来たあの子は何者なのだろうか?
女の子はテート達と仲良く話をし始めた。
年も近そうだし友達なのかな?
私が不思議に思っていたのに気付いたのかレリィーが、
「あの方は第二王女のエイラ様よ」
と教えてくれる。
ふーん、王女様なんだ……は?王女様!?
「ちょ、ちょっと待って、マジ?」
「ええ、本当よ」
「な、何でそんな人がここに来るのよ」
「エイラ様はテート達と仲がいいしね。と言うかその内王様も来ると思うわよ」
「は?冗談よね?」
「いや、真面目な話」
ええ!?冗談抜きで私達と別れてから何をした訳!?
なんかここに来てから驚きっぱなしなんだけど…。
「えっと、もしかして秘密って王族と仲がいいって事?」
「いえ、お忍びじゃなくて普通に来てるしそれは秘密にする気無いでしょうね」
「…それってもっと凄い秘密があるって事?」
「そうね」
「既に驚きっぱなしなんだけど…」
「そうだろうね。大丈夫まだ驚くような秘密があるわよ。正直退屈しないわね」
「別に驚きたいわけじゃ無いんだけど…」
ワイバーンも普通に連れてきたし秘密って訳じゃないのよね?
こんな事が普通にオープンになっているのに秘密にしている事ってどんなものなのよ…。
しかも次の日には本当に王様や王妃様に第一王女様まで来たし…、なんか普通に仲良く話してるし…。
本当に私達と離れてから一年半も経っていないこの間に何があったのよ…。
そしてこの日にギルドの秘密を知る事になる。
リック達数人がアリシアと一緒に出かけたと思ったらソードキャンサーの死体を持ってきた。
え?王都の近くにはこんな魔物いない筈…、ワイバーンはずっと庭にいたし…。
と混乱している私とアイーダにサイタールと繋がる転移装置と言うのを教えてくれた。
なにこれ…。
まさかこんな物があるなんて…、契約で誰にも話せないから教えてくれたんだろうけど、確かにこれはとんでも無い秘密だわ…。あんな契約までさせられた事に納得していた。
秘密にしたい事がこれ以外にもあるなんてこの時の私は思いもしなかった…。