007.初ダンジョン 1
朝起きてから水筒に水を汲んでお昼と念の為に保存食を購入してからダンジョンへと向かう。
サイタール近辺には二つのダンジョンがあるらしく、今日向かうのは町の北東にある西深のダンジョンと言う場所に来ている。
情報では今回目指しているダンジョンにはトラップは無いらしい。
ダンジョンに入り一階層目。
この階層に居る魔物はライトバットと言う蝙蝠と、モコウサギと言う兎の魔物だ。
ライトバット…そこそこ速い動きで近づいて一噛みして離れていく魔物なのだが、牙は短くて細く針を刺された様な物なのだ。
更には毒等の状態異常も無く、今まで病気の感染等と言った報告も無い。
動きが直線的で、攻撃はチクリチクリと鬱陶しいが殺傷能力はかなり低い。
モコウサギ…その体での体当たりだけなのだが、モコウサギ自身がモコモコの毛で覆われている為に全然痛く無い。
その為にむしろ連れて帰られて危険の無い癒しの魔物として有名である。
モコウサギは本当に魔物なのだろうか?なんて言われて居るぐらいだ。
しかし何故かモコウサギはダンジョンでしか生きられ無い様で、ダンジョンから連れだすと三日ともたずに息を引き取るのだそうだ。
この階層に関してはモコウサギは無視して向かってくるライトバットだけ俺とアルティナが剣で倒して次の階層に進む事にした。
「モコウサギ可愛かったです」
「本当にね。ペットとして飼えたらいいんだけどね」
「その為の研究もされているって話しもあるんだけどな…」
二人はモコウサギとの別れを惜しんでいた。
二階層目。
この階層に居たのはクラブマンティスとミートペッカーと言う魔物だ。
クラブマンティス…腕が棍棒の様になっている蟷螂なのだが、実は力が弱いらしく攻撃力はそこまで高くないので油断しなければ初心者でも危険はほとんど無い。
初心者パーティーの魔法職が杖で殴り勝てる程度の強さだったりする。
ミートペッカー…人の腕や足に掴まり、その腕や足を何回も高速で突いてくる。
そして穴を開けると中の肉を食い千切って逃げていく魔物なのだが、こちらも攻撃力は決して高くはなくて、初心者PTの魔法職でも穴が空くまでは5秒近くかかる。
その為によほどボーッとしてい無い限りは対処は簡単なモンスターである。
ここも当然問題無いので邪魔な魔物だけを倒して先に進む。
三階層目。
この階層に居たのはインジェクションビーと言う蜂の魔物だ。
インジェクションビー…攻撃力としては一階層目にいたライトバットの様な物でチクッとするぐらいの攻撃力しか無い。
問題なのは集団行動する事だろう。
強くは無いのだが正直かなりうっとおしい…。
ただ火に弱く火が近くにあるだけで近寄って来ないので、俺が手に魔法で火を出しながら進む。
一応この階層のそこら中にあるインジェクションビーの巣から取れる蜂蜜は悪く無い値段で売れるのだが、特にお金に困っている訳では無いので先に進む。
「火の魔法が無いと潜りたくない場所ですね」
「その場合は松明とかでも大丈夫だけどな」
「なるほど」
このダンジョンはここまでは冒険者に成りたての人でもほとんど危険無く潜れるので初心者エリアと呼ばれているらしい。
四階層目。
ここで長靴を装備する。
この階層はここまでと違って地面が泥状になっている。
そしてこの階層に居たのはマッドスネークとマッドヒルだった。
マッドスネーク…泥の中を動き回る蛇の魔物で牙が短いので長靴を履いているとその部分は牙が通らない。
それなので登っているのに気付かないで噛まれなければ大丈夫ではあるのだが、毒を持っているのは変わらないので注意が必要となる。
マッドヒル…泥に潜むヒルの魔物で、長靴が無いと裾等から入ってきて血を吸ってくるのだ。
血を吸われてもダメージはほとんど無いのだが、数が多くなると貧血を起こすので注意が必要となる。
この階層で注意するべきは毒の対処と長靴を用意して転ばない様にする事だ。
足を登ろうとするマッドスネークを倒しつつ次の階層へと向かう。
「うへ~気持ち悪かった~」
「私もここは嫌ですね…」
「この階層は美味しい素材も無いし気持ち悪いからもっとも嫌われている階層らしいからな…」
五階層目。
まずは長靴を脱ぐ。
この階層に居るのはウルフとレッドウルフ。
レッドウルフ…ウルフの上位種。
ウルフよりも動きが速くウルフを最多で四匹従える。
ウルフを囮にして奇襲してくる事が多い。
最多で四匹なのはそれがレッドウルフの統率できる限界なのだろう。
番のレッドウルフだと最多で八匹のウルフを連れた十匹の群れとなるので注意。
一、二匹のレッドウフルが四~八匹程のウルフを従えて群れを作っており、その群れがいくつもあると言った感じで、一つの群れが攻撃している間は他の群れは何故か攻撃して来ない。
それなので少し離れた所から見ている群れが居ても、今戦っている群れを全部倒すまでは警戒する必要が無くて、一匹だけ残して倒し体勢を整えてから最後の一匹を倒すと言う形をとる事が推奨されている。
一匹一匹はそこまで強いわけでは無いので、冷静に対処する事が大切だろう。
俺とアルティナは普通にこれぐらいなら問題ないのでスピカの方を気にしながら倒して行く。
こういう時にスピカが短剣を使って自分の身を守れるとこちらも目の前の敵に集中しやすくなるだろうし、短剣での戦い方を教えておくのもいいかもしれない。