057.ゴブリン討伐とリスティの生まれた村
冒険者ギルドに行くと、
「あ、リックさん。丁度良かった」
とミリーシャが話し掛けてきた。
「なにかあったのか?」
「はい、ゴブリンが数多く目撃されたそうなのですがやっぱり依頼を受けてくれる人がいなくて…」
「ああ…」
それで皆に確認すると受けようと言う事になった。
「それで場所はここなんですが…」
「あ…ここって…私の生まれた村の近くだ…」
と反応したのはリスティ。
「あのお兄ちゃん。私も一緒に行ったら駄目かな?」
「それは構わないが…まさか復讐しようとか言わないよな?」
「違いますよ。両親や村の何人かからは嫌われる事になっちゃいましたけど、弟や友達の何人かは私と普通にしてくれてましたし、その人達が襲われるのは嫌なので助けたいんです」
「そう言う事なら一緒にいくか」
「はい!」
「あ、それなら私達も一緒に行きますよ」
と言うテートの言葉でテート達のパーティーも一緒に行く事になった。
二日程移動して目的の村にやってくると、もう少しで村に入ると言うタイミングで村の逆側から悲鳴が聞こえた。
急いで向かうとゴブリンの集団に襲われている人達がいる。
一人でも多く救出する為に更に速度を上げながら魔法を放つ。
スピカとレリィーの射る矢も飛んで行きゴブリンを倒して行くが数が多い。
「マリータ!!」
と叫ぶとリスティは押し倒されている女の子の方に向かって行った。
おそらく友達なのだろう。
更に森からは上位種も姿を現す。
上位種の数も多い…まさか…。
と考えていたら上位種の後ろから更に体の大きいゴブリンが姿を現した。
バーサーカー達更に上位のゴブリンだ。
それも一体では無い。
とりあえず片っ端から倒して行くと、更に体の大きなゴブリンと小柄だが妙な雰囲気のゴブリンが姿を現した。
大きな方は知っている。
あれはゴブリンキングだ!
ゴブリンキング…最上位クラスのゴブリン。
バーサーカー以上の攻撃力と、鎧を着ている訳では無いが体の頑丈さがすさまじくゴブリンナイト以上の硬さをほこる。
周囲のゴブリン種をパワーアップさせる特性を持つと言われている。
無属性の魔石(大)を持つ。
Bランクのパーティーが協力して倒すレベルのモンスターだ。
これは数も多いしテート達も来てくれて助かったな…。
小さい方はなんだろうか…。
と思っていると中級魔法であるアイスジャベリンを放ってきた。
魔法使い系のゴブリンの様だ。
すると今度はファイアジャベリンやストーンブラストまで放ってきた。
どちらもやはり中級魔法だ。
もしかしたら基本四属性すべての中級魔法が使えるのかもしれない。
シャーマンの更に上位とかだろうか。
まずは全体を強化させているキングを倒したい。
なんて思っていたがステータスのお陰でパワーアップしているバーサーカー達も特に問題も無く倒す事が出来た。
慌てて逃げようとする謎のゴブリンと怒り顔で咆哮をあげて突っ込んでくるゴブリンキング。
「アルティナ、キングの攻撃を受け止めてくれ。スピカとレリィーは逃げようとしているゴブリンを逃がすな」
そう指示をだすと矢が謎のゴブリンに次々に飛んで行き、アルティナもキングの攻撃をしっかりと受け止めてくれた。
足の止まったキングに俺とノエルとテートが攻撃をし一気に倒す。
謎のゴブリンを見ると針ネズミみたいになって倒れていた。
残りのゴブリンを倒して行くが本当に数が多い…。
時間は掛かったがどうにかこの襲撃は凌ぎきった。
被害者は二人。
門兵をやっていた人と、丁度その近くに居て門兵の人と話をしていた人だった…。
生きているゴブリンがいなくなったのを確認して村の人達が集まってくる。
「ありがとうございます。皆さんが来なければこの村は全滅していました。まさかこんな数のゴブリンが襲ってくるとは…」
「ええ、数も個体もかなり異常だと思います。少し調査してみようと思うのですがよろしいですか?」
「はい、むしろこちらからお願いしたいです」
おそらく村長だと思われる人とそんな事を話していると、
「リスティだよね?」
「そうだよ。マリータ久しぶり」
「リスティ!捨てられたって聞いたからもう会えないかと思った」
「あはは…私あれからサイタールにある孤児院の院長に拾われたんだよ。それで今は冒険者をやってるの」
「うん、凄かったよ。私を助けてくれた時もだったけど、その後も次々にゴブリンを倒しててカッコ良かった」
なんて話をする二人に男の子と大人の男女が近づいてきた。
リスティもその三人に気が付いたようだ。
「ルーディに…お父さんとお母さん…」
「お姉ちゃん!!」
おそらくリスティの弟だと思われる男の子がリスティに抱き付いた。
リスティも男の子も泣いている様だ。
喜び合う二人とは別に両親だと思われる二人は気まずそうな顔をしている。
まあ自分達が職が盗賊であるなんて理由で捨てた子に助けられたのだから気まずいのは当然だろう。
「リスティ…」
「なに…?」
明らかに不機嫌になるリスティに両親は怯える。
いや、リスティだけじゃなく他の村人の中にも怯えている人が何人かいる。
ゴブリンをあんな簡単に倒せるリスティに復讐されたら…なんて考えているのかもしれない。
俺達はとりあえずは見守る事にする。
「俺達の事…恨んでるよな…?」
「当然でしょ。捨てられるまでも酷い扱いを受けて、一緒に出かけようと言われたと思ったら捨てられて、院長が私を拾ってくれる前には本当にこのまま死ぬのかななんて思ったんだよ」
「それなら何で助けてくれたんだ?」
「別に全員が酷かったわけじゃないし、マリータやルーディは最後まで私と仲良くしてくれたし、そんな弟と友達がゴブリンに襲われるのなんて絶対嫌だったからだけど」
「俺達にふ、復讐したりなんかは…」
「しないわよ。人を殺して犯罪者なんてなりたくないしギルドやパーティーの皆に迷惑をかけたくないし、まあ…」
そう言うとリスティは短剣を抜きながら一気に踏み込み父親の首に短剣を当てる。
「それにいつでも殺ろうと思えば殺れるし…」
その動きには村人の全員が反応すら出来ず、リスティが最後まで言い切った所でやっと気付いた様で
『ヒッ!!』
っと短い悲鳴をあげていた。
短剣を当てられた父親なんて完全に腰を抜かしている。
「リスティ…す、凄いね。リスティが消えていきなり現れた様に見えたよ」
「えへへ、お兄ちゃん達に鍛えてもらってるしね」
さっきまでの雰囲気が嘘の様にアリータって子とワイワイと話をしだした。
とりあえずこの日は剥ぎ取りにも時間が掛かったので暗くなってしまい。
村の広場を借りて野営をして明日調査に行く事にした。
村の人の家を使って欲しいとも言われたが人数も多いので、リスティ達何人かは使わせてもらう事にした。
リスティはマリータって子の家に泊まるようだ。




