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053.サイタールへの帰り道

学園に行った次の日。

皆へ帰る事を伝える為に挨拶周りをしながら皆へのお土産が無いかを捜して回った。

お土産として孤児院の皆に安物ではあるがネックレスを購入した。

あまり高い物をプレゼントして変なのに狙われても困るしな…。

準備も終わったので昼食を食べた後にサイタールに向けて出発する。

 

「もう帰るんですね」


リスティが少し名残惜しそうに言う。


「まあもう用事は終わったしな。また来る機会はいくらでもあるさ」

「そうですよね」

「私は少しスッキリも出来たので来て良かったです」

「テートは馬鹿にしてた人達のリーダーを倒したんだよね」

「うん。魔法剣士だからってずっと馬鹿にされてたんだよね…」

「でもリックさんを見たりアルティナさんのお話を聞いてると魔法剣士を馬鹿にする理由が良く分かりません」


それを聞いてレリィーが溜め息を吐いた。


「前の私もそうだったけど一芸に秀でた人が優秀って考えてたのよね…。

攻撃のデルシス、守りのアルティナ、広範囲高威力魔法のミレイ、支援&回復のアイーダって感じに。

その中でリックは何をするにも中途半端にしか見えていなかったのよね…。

でもちゃんと考えてしっかり見たり聞いたりして、ちゃんと考えるとリックの大切さがよく分かったわ…。

今ではあの時リックを追い出したのは本当に馬鹿な事したって後悔してるわ。

そして当時の私の様に考えてる人が結構多いと言うのが現状なのよね…」

「そうなんですか…」

「でも落ち込む必要はないわよ。

リックの様にちゃんと自分の出来る事を理解して頑張れば、リックに対してのアルティナの様に分かってくれる人が出来ると思うから」

「はい」

「それに私達はテートが優秀だって知ってるしね」

「そうですよ。私達のパーティーのリーダーはテートさんですし」

「リスティ、リース…ありがとう。でもやっぱりリーダーはレリィーさんの方が良いんじゃ…」

「あー私は駄目駄目。人を引っ張っていくのは向いて無い物。せいぜい先輩冒険者としてアドバイスを少し出来る程度よ」


テート達はパーティーメンバーで盛り上がっている。

ここに二人いないがテート達のパーティーも仲良くやれている様だ。

道中ゴブリンやウルフなんかに遭遇する事もあったがこのメンバーでそんなのが数匹出てきただけでは何も問題ない。


「護衛としては過剰すぎる戦力だけあって安心その物だな」

「まあ普通はAランクが護衛になんて事すらないですからな」

「まったくだ」


ハリエルとリーファンもそんな話をしている。

そんなのんびりとした道中妙な気配を感じた。


「リック。おそらくだけど私達を狙ってる奴等がいる。盗賊かも」


どうやらレリィーも気が付いたようだ。

前の馬車にも伝えておきたい。

そう考えていると、


「こっちは私が守るから前の馬車に行って来ていいわよ」


と俺がしたい事に気が付いたのかジェシーが言ってくれた。


「大丈夫なのか?」

「ええ、余程の事が無ければ平気よ。それより前に行くのは良いけどそっちも大丈夫?」

「ああ、大丈夫だと思う。こっちは任せた」

「ええ」


前の馬車に走って移動して伝えようとするとスピカが気付いたらしくて既に装備を握り締め襲撃に備えていた。

アルティナには御者台に行き御者と馬を守ってもらう。

そのまましばらく進むと矢が飛んできた。

魔法と剣を使い打ち落としていく、他の皆も魔法を使ったり武器で防御したりと矢を防いでいた。

アルティナがしっかりと守りについていたので御者も無事だし、上手い具合に迎撃も出来たので馬も大丈夫そうだ。

もう一台の馬車は…ジェシーが何かをした様で手を翳していて、薄い壁の様な物が馬車を囲い矢を防いでいた。

すると数十人の男達が出てくる。


「チッ、護衛が予想以上に腕が良かったか」

「まあこの人数差じゃどうしようも無いだろ」

「それより後ろの馬車。ありゃきっとかなり良い魔導具だぞ」

「女も多いな。これは当たりだな」


なんて好き放題言っている。

そして…、


「女は売る前に楽しもうぜ」


と盗賊の一人が言った瞬間ノエルがハンマーを構えて飛び出して、そのまま盗賊の一人の頭を叩き潰した。


『は?』


盗賊が驚き固まっていると更に横スイングで振り回し近くに居た盗賊を五人ほど吹っ飛ばした。

俺達も続く様に盗賊を撃破していく。

しばらくして全ての盗賊を無力化する事に成功した。

ノエルもどうにか落ち着いてくれたようだ。


「ノエル大丈夫か?」

「はい…ごめんなさい。盗賊の言葉でお姉ちゃんの事を思い出してしまい…」

「いや気にしないで良い。それより人を殺してしまったがそっちは大丈夫か?」

「はい、お姉ちゃんの仇を取るって決めた時点で人を殺す覚悟は決めましたから…、ただそれでもやっぱり気持ちの良い物じゃないですね」

「そうだろうな…。こいつらはお姉さんの仇だったのか?」

「いえ、違うと思います。少なくとも聞いた事のある声はありませんでしたし、隙間から少しだけ見えた男はいませんでした」

「そうか…こいつ等の処理はやっておくからゆっくりすると良い」

「はい、ありがとうございます」


ノエルが馬車に戻っていくのでアルティナにノエルの事を頼んで生きている盗賊を縛り、屍となっている盗賊は可能なら首だけ回収して燃やす。

これで顔を見て照合し、懸賞金が掛かったりしていれば報奨金が貰える。

頭部が潰れている者に関しては諦めるしかない。


次の町で盗賊達を引き渡す。

どうやら最近現れた盗賊で討伐依頼が出始めたところだったようだ。

報奨金を貰ってその町で一泊してからサイタールへと向かう。

テート達が話があると言う事でテート達と一緒の馬車に乗る事にした。


「それで話って?」

「私達も人を殺す覚悟を決めた方が良いのでしょうか…」


そうテートが言うとリスティとリースも不安そうにしている。


「…いつかはそうしないといけない場面が無いとは言えない。でもすぐには難しいとも思う。今は対人になりそうな依頼を出来るだけ回避して、その間にゆっくり決めても良いと思うぞ」

「「「はい…」」」


いきなり人の死を目の当たりにし、自分達もいつか人の命を奪わなくては行けないかと不安になったのだろう。

急ぐ必要は無いとは思うが冒険者をしていくならいつかは決めないと行けないだろう。

そこからの帰り道テート達は悩み続けているのか暗く、ノエルも精神的に疲れている様な感じだった。



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