004.ギルドマスター
サイタールの観光を楽しんだ翌日。
宿で朝食を頂いた俺達は部屋でこれからの相談をする。
「さてこれからしばらくはこの街で冒険者として活動しようと思うわけだけど、目標やこれから優先してやる事を決めた方が良いよな」
「そうね。とりあえずは私達のランク上げかしらね」
「そうだな。一応一瞬とはいえ俺とアルティナは元Bランクパーティーに居たからその辺りは少し考慮してくれるかもしれないけど、よくてもDランクからだろうな」
ちなみに冒険者のランクはS・A・B・C・D・E・F・Gの8ランクあり、Sがもっとも高くGがもっとも低い。
噂ではSランクの上にSSランクとSSSランクと言う物があるという話もあるが、その二つは国を救う偉業をなす等して国に認められた者がなれる本物の英雄と言う話で、現在は一人もいないといわれている。
そして受ける事が出来る以来は自分達よりも一つ上のランクの依頼までとなっている。
「それとスピカのレベル上げも出来ればした方がいいわよね?」
「そうだな。スピカが強くなれば俺達も強くなれるしな」
「頑張ります!」
こうしてしばらくは適当な討伐系依頼を受けながらスピカのレベル上げを行ない、ある程度レベルが上がったらダンジョンに行ってみようという事になった。
そして冒険者ギルドで正式にパーティー登録をする。
前のパーティーの評価があるとは言っても俺達二人だけだし、更に新人であるスピカ一人しか加入していないと言う事でランクはEと言う事になった。
「Eランクか~まあしょうがないよね」
「そうだな。とりあえず討伐依頼を確認しようか」
依頼書が貼られている掲示板へと向かうと四人の男達が近づいてきた。
「お嬢ちゃん達。白首輪とはいえそんな奴の奴隷なんてやってないで俺達とパーティー組まないか?」
「そうそう。俺達Dランクでもう少しでCランクになれるからさ、絶対俺達と一緒の方が良いって」
そんな事を言って二人を勧誘してきた。
「お断りよ。私は彼とずっとパーティーを組むって決めてるの」
「私もご主人様から離れるつもりはありません」
二人はそれだけ言って掲示板を見始めるが、それが気に入らなかったのか男達は怒り出した。
「こっちが下手に出ていれば」
「ちょっと見た目が良いからと言ってお高く止まってるんじゃねえぞ」
なんて事を言って大きな声を出す。
いつこの人達が下手に出ていたのか…、お高くって断っただけだろうに…。
内心呆れてどうしようか考えていると、
「何をしている?」
と言う声が聞こえた。
声のした方を見るとギルドの奥から強面の男性がこちらにやってくる。
「ギ、ギルドマスター…」
「これは…その…」
男達は口篭るがアルティナが説明をする。
「なるほどな…今のは真実か?」
ギルドマスターは男達を睨んで言うが男達は目を逸らすばかりで何も返事をしない。
ギルドマスターは溜め息を吐き、
「その態度が答えの気がするが…、周りの者達はどうだ?彼女が言った事は真実か?」
そう他の冒険者に聞くと周りの冒険者。特に女性冒険者が事実だと大きな声で答えていた。
「そうか…、お前達無理な勧誘は禁止されているのを知って居るだろう」
『はい…すいません』
「それと、女性の仲間が欲しいのかもしれんが、そんな下心丸出しのパーティーに入りたい女性なんてほぼいないと思うぞ」
ギルドマスターのその言葉に女性陣は首を縦に振る。
「とりあえずこの後厳重注意をするからここに残っておけ」
「そっちの三人は…初めて見る顔だな」
「昨日この町に来たからね」
「なるほどな…、自己紹介が遅れたなギルドマスターのドーガだ」
「アルティナよ」
「スピカです」
「リックだ」
「男と女性の白首輪奴隷が二人か、しかも一人はエルフ…珍しいな」
「そうだろうな」
「とりあえずこいつ等にはさっき言った通り厳重注意するがそれでいいか?」
『はい』
「それならお前達はこれ以上気にしないで冒険者として依頼を頑張ってくれ」
そう言うとギルドマスターは男達を連れてギルドの奥へと入って行った。
「それじゃあ気を取り直して依頼を選ぶか」
「そうね」
「はい」
そして俺達は依頼の中からここから歩きで4時間程行った所にある村からの依頼で、ゴブリンが多数確認されたので討伐して欲しいと言う物を選んで受付へと持って行く。
「はい依頼の受注ですね。あ、私は当ギルドの依頼の受付をやっているミリーシャといいます。これからよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
「…ところで本当にこの依頼でよろしいのですか?ゴブリンの数が分かっていないのでEランク~の依頼ですし、ゴブリンなので報酬も素材も大したお金になりませんよ?」
「大丈夫です。俺達もパーティーを組んだばかりなのと、このスピカは冒険者になったばかりなので連携の練習と彼女のレベル上げ等が狙いなので」
「分かりました。それでは受注させていただきます。規模が確定していないのでもしかしたら上位種や予想以上の数が居る可能性もあるので、その場合は報告していただければ依頼は失敗となりませんので無理はしないで気をつけてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
「ところで…パーティー名は決まってますか?」
「いえ、まだですね」
「そうですか、それでは各人の名前で登録しておきます。ずっとパーティーを組み続けるつもりであればパーティー名があった方が何かと便利だと思いますよ」
「そうですね…みんなで相談してみます」
こうしてサイタールを出てパーティー名をどうするか話しながら目的の村に向かった。
パーティー名は良いのが思いつかなかったので今度ゆっくりと考えようと言う事になった。




