035.元パーティー女性陣の悩み
デルシス達が来てから七日ほど経った。
今日は休息日となったのでアルティナと手を繋いでデートをしている。
あれからもデルシスは何かとイチャモンをつけてくる。
その関係もあって一応デルシス達の動向もチェックしている様だが上手く行っているとは言えない状況のようだ。
新しいメンバーも見つからず依頼も苦労して取り組んでいる様だ。
まあ今はあの四人の事よりアルティナとのデートを楽しもう。
「アルティナは何かしたい事とか行きたいところとかはあるか?」
「そうね…。余裕も出来てきたしそろそろ新しい服とか欲しいかな」
「それじゃあ見に行ってみるか」
「うん」
なんだかんだとこうしてアルティナと二人でデートと言うのは久しぶりなんだよな。
デルシス達といた時はなんだかんだと誰かが一緒に居たりで二人っきりになれる事もなかったし、追放されてからもスピカに会うまでの移動では二人っきりだったけど、それ以外の時は誰かと一緒に居る事が多かった。
冒険者になる前には村で良く二人で一緒にのんびりしたり冒険者になる為に剣の訓練をしたりしてた。
初めてアルティナと結ばれた夜に二人で話した時も思ったけど、俺の思い出にはその殆どにアルティナが一緒に居る。
一緒に居るのが当たり前の存在であり、これからもずっと一緒に居たい相手で、世界で一番大切な人だ。
そんな事を考えていたらアルティナが顔を覗きこんできた。
「ん?どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「そう?」
服飾店へとやってきた。
アルティナは楽しそうに服を見ている。
「そういえばスピカ達とかとは服を見に来たりはしないのか?」
「するわよ。でもリックと一緒の方が色々見てもらえてリックの好みとかも分かるでしょ?ほらこんなのはどうかな?」
そう言って笑顔で自分の前に服を合わせる。
正直アルティナは美人でスタイルも良いからよほど変な服じゃなければ大抵似合う気がする。
何着かそんな感じに服を見せてもらった中から一着を購入した。
「試着とかはしなくて良かったのか?」
「うん、この服が一番リックの反応が良かったからこれで十分よ」
「…そうか」
なんとなく恥ずかしくてそっけなく答えてしまったが、アルティナはそんな俺の反応を見て嬉しそうにしている。
きっと俺が恥ずかしがってるって分かってるんだろうな…。
「どうせだから下着もリックに見てもらおうかな」
「ちょ…ば…」
「クスクス、もう下着の中だって何回も見てるじゃない」
「それとこれとはだな。あれは雰囲気や勢いもあってだな」
「リックって割とこう言うのに弱いわよね。昔スカートで剣の練習してて見えた時も顔を真っ赤にして目を逸らしてたし」
「う…あの時無防備な頭を叩かれたよな…」
「だって隙だらけだったんだもん。一応言っておくけどセクシー系な魔物には気を付けてよね」
セクシー系とは人間から見ても美人美少女に見える魔物の事だ。
代表的なのだとサキュバス種だろうけど他にもラミア等も居る。
その姿に見惚れたり恥ずかしがって集中力を切らしやられる男性冒険者等の報告と言うのは意外と多いのだそうだ。
「まあ…気をつける」
「んー、もっと私がリックにその手の耐性を付けてあげないと駄目かな」
「…まあお手柔らかにな」
「どうしようっかな~」
なんて楽しそうに言って腕を抱きしめてきた。
これはしばらくこの手のネタで弄られそうだな…。
つい溜息を吐いてしまう。
それからしばらく歩いているとミレイ達と出会った。
デルシスは一緒にはいない様だ。
三人はかなり疲れている様に見える。
アルティナも気になったようで三人を話をしようと誘った。
「それで皆。大分疲れて居るみたいだけど大丈夫?」
「大丈夫…ではないかな。全然上手く依頼をこなせないし…」
ミレイが大きく溜め息を吐いて答えていた。
本当に困っているのか暗い顔をしている。
「新しく誰かをパーティーに入れなかったの?」
「入れたのですけど…私達とはやっていられないと皆さんパーティーから抜けて行きました…」
今度はアイーダが遠い目をして答える。
もしかしたら俺達が思っているよりも出入りした人達は多いのかもしれない。
「まあそうなるわよね…」
「アルティナはもしかしてこうなるって分かってた?」
「リックを無能だと思っている時点でね。この間も言ったけど、リックは全員の守りを担当してたのよね。目立ち辛かったのかもしれないけどデルシスのやり方だと一番重要な役割だったのがリックよ」
「私達はどうしたら良いでしょうか…」
「理想的なのは基本的な技術から見直す事ね。デルシスが防御も覚えればもう一人の前衛も動きやすくなるわよ」
「…デルシスが認めてくれないでしょうね」
「だろうな…」
デルシスは『自分は攻撃』と言うのにこだわりを持っているからな…。
「それなら貴方達がそれに合わせて変わるしか無いんじゃないかな」
「私達が?」
「うん」
「でもどうやって…」
「もし俺ならまずは近接戦闘が多少は出来る可能性があるレリィーに短剣辺りでの近接戦闘技術をつけてもらうかな」
「私?」
「ああ、完全魔法職のミレイとアイーダよりは近接寄りのステータスしてるだろ?だから弓を使うのに邪魔になり難い短剣辺りの技術を覚えてもらってある程度の足止めだけでも出来るようになってもらう。
足止めだけでも出来れば前衛達が一人下がってくる時間を稼げるし、足止めして居る所にミレイが魔法で攻撃も出来るだろ?」
「確かにそうだけど…私弓以外使った事無いんだけど…」
「だからと言ってミレイやアイーダよりは可能性あるし、三人を守れる手が無いのは問題だろ?」
「うぅ…」
「ちなみに今の俺のパーティーにる弓術師。あの時に居たエルフの子だけど、彼女は短剣の練習もしているぞ」
まあ俺達のパーティーの場合魔法使いと僧侶も普通に近接戦闘が出来るステータスになっているが…。
「近接戦闘か…出来ればやりたく無いな…」
「まあ理想なのはデルシスが考え方を改める事だけど『無理だよな(よね)(ですね)』」
俺達五人の意見が重なる。
すると、
「ところで二人とも…普通に相談に乗って貰ってるけど私達の事恨んで無いの?」
とレリィーが聞いて来た。
「あー…、まあ一応デルシスが俺の事を嫌ってるのは知ってたしな。流石に追い出されるとは思っていなかったが…。
あとまったく恨んでないかと言われればよく分からん。
正直今の環境の方が俺にあってるし、追い出されて良かったとすら思えてるぐらいだしな」
あの時に追い出されなければスキルが分かる事も無かったかもしれないし、スピカを救う事も出来なかっただろうしな。
そう言う意味では感謝もしている。
ただ…。
「恨む…よりも今は哀れに思えてる」
「哀れ…か」
「ああ、昨日ので分かったと思うがデルシスの意識を変えないとこれから先今のパーティーでやっていくのは無理に近いと思うぞ。
デルシスの事が好きなのは知っているが、先の事を考えて動かないとこのままやっていけなくなると思う。
でもデルシスから嫌われたくないから強くもでれないんだろ?
それを考えるとな…」
「言ってくれるわね…、でも…言い返せないわね…」
「「うん…」」
「アルティナは?」
「私はリックと一緒なら別に最初からあのパーティーでも別のパーティーでも構わないし、まあこう言う事もあるのかな…ぐらいの気持ちね。三人の事は今でも友達だと思ってるわよ」
凄く嬉しいんだけどアルティナは何故ここまで俺の事を好きでいてくれてるんだろうか?
「ねえ二人とも。私達のパーティーを支えてくれて入ってくれそうな知り合いいない?」
「いないな」
「いないわね。
そもそも初心者の内ならともかく今の貴女達のレベルに近い人って考えるとね…。
正直簡単には見つからないわよ。それこそ初心者冒険者を一から育成した方が早いぐらいだと思うわ」
「やっぱりそうだよね…」
三人は大きく溜め息を吐く。
かと言って今の状況でどうすればいいかも分からないしな…。
頑張ってくれとしか言いようが無い。
三人と別れて再びアルティナと歩きだす。
「皆どうなるかな」
「さあな。デルシスが考え方を変えるかあの三人がデルシスと離れないと難しいかもしれないな」
「そうよね」
あんな事があったとは言ってもそれまでは仲良くしていただけにやっぱり少し気になる。
…俺がこうやってあいつ等を恨まないでいられるのもアルティナが居てくれたからだろうな。
もしアルティナが居ないで全員から拒絶されていたらあいつ等の事を恨んでいたかもしれない。
「?どうしたの?」
「いや、アルティナが一緒に居てくれて本当に良かったなと思ってな」
「なにそれw」
笑顔でそう言うアルティナはとても綺麗で俺は見惚れるのだった。




