030.パワーレベリング
「パワーレベリング?」
「そう、リックのスキルのお陰でステータスはある程度高いけどまだレベルの低い子多いでしょ。だから皆のレベルを20ぐらいまでパワーレベリングで上げちゃわない?そうすれば全員のステータスも上がるから安全度も上がるでしょ?」
確かにその通りではある。
しかしパワーレベリングは本来推奨される方法では無い。
理由はレベルに戦闘技術が追いつかないからだ。
「本来技術をつける為にやらないほうがいいって言われてるけど、私達のギルドメンバーで無理させなければ大丈夫だろうしね」
確かに俺達以外とパーティーを組まないのであればこちらで気をつければいい事ではある。
「皆はどう思う?」
「ありでは無いでしょうか。これから新しい人を仲間に入れた時にその人達の安全にも繋がりますし、私はお姉様の意見に賛成です」
「私も賛成かな。私自身MP増えるのは嬉しいし」
「私達全員の安全にも繋がりますしね」
「僕も強くなれるなら嬉しいかな」
といった具合に全員がアルティナの意見に賛成した。
「それならやってみるか、どのメンバーでどこでやるかだな」
「ダンジョンのソードキャンサーで良くない?あそこなら一つ降りれば休憩できるし、リックとアリッサが入れば楽勝でしょ?」
確かにソードキャンサーは火魔法を使えば特に苦労無く倒せる相手だ。
MPが切れたら休憩してもいいし、階段にすぐにいける位置を維持すれば安心だろう。
「そうするか、それじゃあ俺とアリッサは行くとして、道中の防御も考えるとアルティナも居た方が良いな。
その三人にレベルを上げる三人が一緒に行くという形でいいか」
「そうね」
「あの」
そう話を纏めたところでイリアさんが手を上げて声をだした。
「どうした?」
「そのレベル上げってテート様、リスティちゃん、リースちゃん、カスミちゃん、グレン君のですよね?」
「ああ」
「そうするともう一人空くのでそこに私も一緒にレベルを上げさせてもらえ無いでしょうか」
その言葉に皆驚く。
「イリアさんも冒険者になりたいのか?」
「いえ、私のレベルが上がれば皆さんのステータスも上がりますよね?少しでも皆さんのお役に立ちたいので…」
「…俺達が一緒と言っても当然危険はあるぞ?」
「はい、覚悟の上です」
「分かった。とりあえずはテート、リスティ、リースの三人からな」
『はい』
「そういえばイリアさんの職ってなんなんだ?」
「それが恥ずかしいのですが…」
ステータスを見せて貰うと書かれていた職は暗殺者だった…。
また意外な…。
テート達を連れて水彩のダンジョンに入る。
道中気をつけながらソードキャンサーのいる階層までやってきた。
まずは焼き払いながら倒した分だけ回収して階段まで向かう。
これでとりあえず休憩場所と逃げ道を確保できた。
テートにも火魔法で攻撃をさせながらソードキャンサーを倒して行く。
流石にテートの火魔法ではまだ一撃ではソードキャンサーは倒せなかった。
それでも近づかずに戦えば楽な相手なので只管倒して休憩、MPが回復したらまた倒すを繰り返す。
食事には持ってきた保存食とソードキャンサーを使い篭る事七日。
三人のレベルが20になったところでボス部屋に入ってフリックスクイラァを倒して帰還する。
帰還した後は二日休んで今度はカスミ達を連れて水彩ダンジョンに潜った。
道中イリアさんがポイズンキューカンバーを踏んで毒になってしまうという事はあったが、毒消しも持っていたし他には問題無く七階層のボス部屋前を確保する事が出来た。
「申し訳ありません…」
踏まないようにと言われたポイズンキューカンバーを踏んでしまって落ち込んでいるようだ。
「気にしないで良いですよ。冒険者の中にだって踏んでしまう人だって居るんですから」
「はい…ありがとうございます」
アルティナが宥めて落ち着くのを待って上に向かう。
俺とアリッサでソードキャンサーを焼き払っているとカスミが火属性の攻撃を覚えたらしいので試してもらう。
「鬼火」
カスミがそう言うと火の球が浮かび上がり、カスミがソードキャンサーに手を向けるとその火が向かって行った。
威力は高く無いのか鬼火ではソードキャンサーを倒すのに五発必要なようだが、手数を増やせるし攻撃に加わってもらう事にする。
それから二日後。
カスミはまた新しい火属性攻撃を覚えたようで今度はそっちを使う。
「火の輪」
カスミの尻尾が燃え上がりその尻尾を振るとリング状の火がソードキャンサーに向かって飛んでいく。
今度は三発で倒せていた。
話を聞いて見ると狐人と言うのは幻術と火属性の攻撃に適正を持つ事が多いらしい。
それから数日して三人ともレベルが20を超えたので同じ様にフリックスクイラァを倒して帰還する。
こうなると逆にスピカ達がまだ20になって居なかったので同じ様にレベルを上げる事にした。
こうして全員がレベル20を越える事が出来た。