003.港街サイタールへ
奴隷商人の方は何を持っていって良いか分からなかったが、護衛だと思われる人達の持ち物から冒険者カードを回収して次の町で報告する事にした。
オーク達に関しては嵩張らない素材だけ持って行き、後は燃やして処理をする。
ちゃんと処理をしないでゾンビ等になられては困るので、こういう時は可能な限り処理するのが冒険者としてのマナーとなっている。
馬車に関しては横転した時に外れたのか馬が逃げてしまったらしいのでその場で放置する事にして、三人で歩いて移動し隣の町までやってきた。
まずは報告の為に冒険者ギルドに向かう。
街に入ってからずっと視線を感じて居る。
おそらく珍しいエルフであるスピカが居る事と、二人の首に白首輪が付いているからだろう。
受付で護衛の人達の冒険者カードを渡し全滅していた事を伝える。
「そうですか…、Dランクになったばかりの人達だったんですけど残念です…。報告ありがとうございます。しかしオーク十匹ですか…、街道にそれだけの数が出るのは珍しいですね…。」
「そうだよな。俺達も他にはウルフ一匹しか会わなかったし」
「相当運が悪かったのでしょうね…」
そして道中で話して決めた事だが、スピカの冒険者登録をして俺達とパーティー登録をする。
次にスピカの装備を購入する為に武具店にやってきた。
胸当てと皮手袋と弓矢を購入して矢に関しては矢筒に入る30本以外は俺のマジックバッグに入れておく。
マジックバッグとは見た目以上に物が入るバッグで、容量の大きい物ほど高価になる。
今の容量でも困ってはいないが出来れば容量が多い物が欲しいし、スピカにも一つ持ってもらいたいのでどこかで手に入れたいな。
「装備を買って頂きありがとうございます」
「パーティーを組むんだから気にしなくて良いのよ」
その後とりあえず宿を取る事にしたのだが、
「リックとなら同じ部屋で良いわよ」
「私も同じ部屋で大丈夫です」
と言われて同じ部屋に泊まる事になった。
ベッドは二つしかないのでアルティナとスピカにベッドを使ってもらおうと思ったけど
「それなら自分が床で寝ますから」
とスピカに言われて、話し合った結果アルティナとスピカが同じベッドを使う事で纏まる。
「明日どうする?すぐに馬車を借りて海を目指すか?」
ここからだと海沿いの街まで街道沿いに行って馬車で十日程だった筈だ。
「そうね。通り道の町へ行く護衛か配達が無いかだけ確認して無ければすぐに移動しましょうか」
「そうだな」
「分かりました」
次の日冒険者ギルドで依頼を確認したが、丁度良い依頼が無かったので貸し馬車で馬車を借りて西へと向かった。
移動して二日目。
前方にゴブリンを三匹発見する。
ゴブリンもこちらに気が付いたのかこちらに向かってきた。
「それじゃあ軽く立ち回りの練習をしようか。スピカ先制攻撃よろしく」
「はい」
スピカが矢を射るとゴブリンの頭に当たり、そのゴブリンがそのまま倒れる。
残り二匹のゴブリンはお構いなしにこちらに向かってきているが、スピカが矢を番える方が早くもう一匹ゴブリンの眉間を射抜き、残りの一匹は俺が普通に迎撃して切り裂いた。
「連携の練習にはならなかったな…」
「すいません…。予想以上に矢の威力が出たのと、スムーズに矢を番える事が出来てしまって…」
「ステータスが上がったからじゃない?スピカの元の能力を考えると一気にステータスが伸びてるし」
「ああ、たしかに…」
アルティナの言葉に納得する。
確かに急激にステータスが伸びたはずだから手加減も難しいし、今のステータスならゴブリン三匹くらいならこうなっても仕方ないか。
連携の練習は後にしてとりあえずはスピカの戦闘訓練からした方が良いかもしれないな。
そんな感じに道中適当に見つけた魔物を狩りながらウェステリアを出てから九日。
目的地である港街のサイタールにたどり着いた。
海を見てスピカが目を輝かせる。
「これが海ですか!こんなに広いんですね」
「初めて見ると感動するよな」
「私とリックも最初は驚いたわよね」
「分かります。話には聞いた事あったんですけど森に居たら絶対に見れませんでした」
「それじゃあとりあえず今日は宿を取って観光でもしようか?」
「「賛成」」
こうしてこの日はサイタールを観光する事になった。
王都に居たのでは食べる事が出来ない新鮮な海産物を楽しんだり、海岸の水際で軽く遊んだりする。
俺とアルティナも港街に来たのは久しぶりで楽しかったが、スピカは初めての経験だらけでとてもはしゃいでいた。
宿に帰って晩御飯を食べた後は二人がお風呂から出た後に俺もお風呂に入って部屋に戻ると、よほど疲れていたのか二人は既に寝ていた。
二人の可愛らしい寝顔に癒された俺は隣のベッドに入り眠りにつく。