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026.黒奴隷

ハリエルに案内されてサイタールにあるブランディア商会と言う場所にやってきた。

何でも色々な商品を取り扱っていて、その中には奴隷もいるらしい。

ハリエルが受付と少し話をすると、受付の人は慌てておくへと走って行った。

少しして渋いおじさんがやってくる。


「これはハリエル様。今日は何かご入用ですか?それとも何か商談でしょうか?」

「実はこっちの友人が奴隷を欲しがっていてな。それで案内をしに来たのだ」

「ほう…初めましてお客様。私この商会の商会長のジュネス・ブランディアと申します。以後お見知り置きを」

「冒険者のリックです」

「それで奴隷でしたね。こちらへどうぞ」


ブランディアさんに付いて行くと地下へとやってきた。


「地下にいるんですね」

「そうですね。ただ地上にもいますよ。こちらにいるのは犯罪等を犯した奴隷になりますね。仕方の無い借金から奴隷になった方達は地上におります」

「信頼出来る人がいいので地上の人達を紹介していただけますか?」

「黒奴隷は命令しておけば言う事を聞かせられますので全員信頼出来ると思いますよ?」

「そうかもしれませんが出来るだけ心から信頼出来る相手がいいので」

「分かりました。それでは地上に戻りましょう」


ブランディアさんが引き返すので付いて行き客間に通される。

途中で紹介にいる人に声をかけていたからか、客間に着いて少しすると大勢の人達がやってきた。

多くの人達には黒首輪が付いていて奴隷だという事が分かる。

ただ商品だからなのか身なりも綺麗にされている。


「ここにいるのが現在いる信用出来そうなお勧めの奴隷ですね」


人数は男性5人女性7人の12人。


「奴隷に色々と質問しても良いですか?」

「はい、勿論ですとも。それとこれはこのメンバーの資料となります」


そう言って渡された紙にはこの人達の経歴等が載せられていた。

今回俺が欲しいのは家事をやってくれる奴隷だ。

それなのでそれに合いそうな人達がいないかを捜す。

一人気になる人がいた。

名前はイリナさん。

25歳の人間の女性で、元々ある男爵家に使えていたメイドらしい。

しかしある日屋敷の壷を割ってしまって借金を作ってしまい、それをとても返せそうにないのに男爵の息子に体の関係を迫られて、それが嫌で自分から奴隷になりブランディアさんに買い取ってもらってその借金を返したのだそうだ。


「えっと、それではイリナさんに質問ですが、俺が奴隷を欲しい理由はこの度手に入りましたギルドホームの家事をやってくれる人が欲しいからです。それでイリナさんは元メイドだそうですけどまたメイドをやる意志はありますか?それとも奴隷になる切っ掛けとなったメイドをやるのは辛いでしょうか?」

「私は元々家事が好きなのでメイドとして家事をやらせていただけるのなら嬉しいです」

「なるほど…ブランディアさんまずは彼女にしようと思います。彼女の値段はどのくらいになるでしょうか?」

「彼女は現在…三十七万リースとなります」

「現在というのは?」

「実は彼女はここの奴隷となってからこの紹介の掃除等家事をやってくれていまして、その給料から借金を減らしています」

「借金とこれまでの管理費が値段に関係しているからそれだけ安くなっている。と言う事ですか」

「そうなります」


そういう意味では今の内に彼女を手に入れてしまった方がいいだろう。

メイド経験のある人なんて滅多にいないし安くなれば買って行く人も当然いるだろう。


「それではまず改めて彼女を購入させていただきたいと思います」

「おお、ありがとうございます」

「それと他の人も購入したいのでもう少し見せて頂きますね」

「はいごゆっくりどうぞ」


あの屋敷をメイド一人だときついだろうしな。

出来ればあと一人か二人いた方がいいだろう。

そして見ていると、イリナさんが何かを言いたそうにしているのと、そんなイリナさんの事を悲しそうな顔で見ている二人の獣人がいた。

もしかして何かあるのか?


「えっとイリアさん。もしかしたら何か要望か何かあるのか?俺に購入されたくないと言う事でも構わないから何かあるなら言ってくれるか?」

「よろしいのですか?」

「ああ」

「それでは失礼しまして、他の方をご購入すると言うのであればそちらの二人を購入していただきたいのです」


そう言って指定してきたのはさっきイリナさんの事を悲しそうな顔をして見ていた二人だった。


「理由を聞いても良いか?」

「はい、私がここに来てから五年になりますが、同時期に来たのがその二人になります。その二人は両親が亡くなりその両親の借金の為に奴隷になったのですが…その当時から私が親代わりをさせていただいていましたので…」


俺はそれを聞いてブランディアさんを見るとブランディアさんは首を縦に振る。

事実だと言う事だろう。

資料を見ると二人は狐人の獣人であるカスミ十五歳と、熊人の獣人であるグレンという十四歳の姉弟らしい。


獣人…人と動物の外見が合わさった種族。

   獣人には職は現れず、どの動物の獣人かでステータスやどの様な能力を使えるかが大体決まる。

   獣人特有の魔法やスキル等もあり、身体能力が高い者も多いので優秀な冒険者も多い。


二人に話を聞いてみる事にする。


「二人はどうしたい?」

「私はイリアお母さんと一緒に居たいです」

「俺も…」

「分かった。ブランディアさんこの二人も購入したいのですが」

「その二人ですと、三百万リースになりますが大丈夫ですか?」


結構するな…。

アルティナと俺の資金と共有資金全部でギリギリと言う感じだ。

アルティナには自由に使って良いと言われてるしな。


「分かりました。こちらでお願いします」


マジックバッグから持ってきたお金を取り出してテーブルに置く。

そこから必要な三百三十七万リースを出していく。

同時にブランディアさんも確認してくれていたので、


「はい確かに、ご購入いただきましてありがとうございます。早速奴隷契約をいたしましょう」


そう言って契約用紙を取り出すと俺の血が必要だという事で用意されたナイフで少し切って三枚の用紙に血を垂らす。

すると血が広がっていき魔方陣の形になった。

そして奴隷となる三人がその後に一人一枚血を垂らすと魔法陣が黒く光り、契約用紙が黒くなっていって三人の首に近づいていった。

契約用紙が首に触ると更に強く光って首輪になって三人の首に装着された。


「これで契約完了になります。これからもブランディア商会をお願い致します」

「はいこちらこそ。また何か購入等したい時には頼らせていただくと思いますので」


そう挨拶をしてハリエルと一緒にギルドホームへと帰ってきた。

リビングに皆に集まってもらって三人を紹介する。


「と言う事でここで家事をやってもらう事になったイリナ・カスミ・グレンの三人だ。仲良くしてくれよ」

『はい』

「それで早速だが三人には命令をさせてもらう」


俺の言葉に三人に力が入り明らかに緊張しているのが分かる。


「命令は『いまから俺のスキルについて教えるからそれをここにいるメンバー以外には秘密にする事』だ」

「スキル…ですか?」

「ああ、基本的には命令はこれだけになると思うから」

「え?それだけ…ですか?」

「まあそうだな。悪さしない様にと命令してもいいんだがそれもなんかな…と思うしな」


本当はこの三人が本当に信用して良いかを見極めるにはスキル以外の事では自由にしてもらっていたほうが良いだろう。と言う考えなんだが。

信用して良いと感じられたら奴隷から解放しても良いだろうしな。

悪さをして奴隷になったわけでは無いので大丈夫だと思うが、その辺りは追々と言う感じで良いだろう。 


「さてそれでスキルなんだが…ステータスを開いてくれるか?」


俺がそう言うと三人はステータスを開く。

俺や他の皆もステータスを開いて皆に見える様にして確認する。


三人のステータスには俺達と同じ様に元の数値の横に()で囲まれた数字が出ていた。

だけどその中の数字がアルティナ達の数字と違って、全ての数字がアルティナ達の半分なのだ。

俺の方の数値も三人が増えた分か変化していた。

奴隷を購入前に数字の変化が分かる様にメモをしていたのでそれと比べて計算する。

それで分かったのは、三人から俺へは他の皆と同じ様に元のステータスの五分の一が数字に足され、三人には俺のステータスの合計の十分の一がステータスに足されているようだ。

つまり黒首輪の場合。

俺への恩恵は白首輪と同じだが、黒奴隷への恩恵は白奴隷への恩恵の半分になる様だ。


「なるほどな。黒奴隷だとこうなるのか」

「でも十分の一でも恩恵があるだけでも大きいわよね」


アルティナの言葉に三人以外の皆が首を縦に振る。

三人はあまりの出来事に驚いているようだ。

三人に落ち着いてもらいテートにギルドホームを案内してもらった。


イリアさんの作ってくれた食事を食べて部屋でゆっくりとする。

するとノックがされて部屋に入ってきたのはカスミだった。


「どうした?」

「ご主人様にお願いしたい事がありまして…」

「ああ、そう言う事は遠慮しないでいってくれて良いからな。まあ当然ながら全て叶えてやれるとは言えないが」

「はい…」


そう返事をするとカスミは服を脱ぎ始めて下着姿となる。


「は?ちょ、ちょっと待てカスミ!何で服を脱ぐ!?」


いきなりの出来事に慌ててしまう。


「お願いするためです」

「いや意味分からんから!とりあえずそのお願い内容を教えてくれ」

「はい…私がグレンの分も働きますし、私の事を好きにしてくれて構わないのでグレンに冒険者をやらせてはいただけないでしょうか」

「グレンは冒険者になりたいのか?」

「はい、奴隷になる前は『冒険者になって有名になる』『お父さんよりも強くなる』と毎日の様に話していました。しかし両親がなくなった後奴隷になって毎日泣き続け、いつからか冒険者になると言う話をする事も無くなり笑う事も無くなりました。

イリアお母さんが本当のお母さんの代わりにと私達を大切にしてくれていましたが、それでもグレンが笑ってくれる事はなかったんです。

多分両親が亡くなった事もですけど、自分の夢がかなわなくなった事も大きく影響してると思うんです。

だから冒険者になる事が出来ればきっとまた笑ってくれるんじゃ無いかと…」


そう言って泣きだしてしまう。

とりあえずカスミに布団のシーツを掛ける。


「それはイリアさんと相談して見てからになるが、なんでそれで自分を好きにしていいなんて条件を出してきたんだ?」

「私に他に差し出せる物はありませんし、地下の奴隷の人に『女の体は男にお願いをする最高の武器』と教えてもらったので…」


そんな事をこんな子に教えるなよ…。

今度ブランディアさんにこの事を伝えた方が良いだろうか?


「カスミ…とりあえず自分の体を使うのは駄目だ。そんな事をしてお願いしたなんて知ったらグレンもイリアさんも悲しむぞ」

「はい…申し訳ありませんでした」

「それと冒険者についてはイリアさんに相談してみようか」


そして二人でイリアさんの部屋へとやって来て事情を話す。


「そうですか。私は構わないのですが…ねえカスミちゃん。カスミちゃんも冒険者になりたいんじゃない?」

「そうなのか?」

「…はい」


詳しく話を聞いてみると、カスミとグレンの両親は冒険者だったらしく、そこで一緒のパーティーを組んでいたらしい。

そしてその時の話を子供二人に楽しそうに話してくれたので、二人も大きくなったら一緒に冒険者になろうと約束をしていたのだそうだ。


「あのリック様。私が二人の分も頑張りますので…」

「でもそれだとイリアお母さんが大変だよ」


と二人で話し始めてしまった。

このままでは埒が明かなそうなのでグレンも呼んで話し合う事になった。

まずはグレンに説明をする。


「…と言う事になっててな。それでグレンも入れて話をしようとな」

「そうですか…」

「それでグレン。グレンは今も冒険者になりたいと思っているか?遠慮しないで言ってくれていいからな」

「はい…なりたいです」

「そうか…それじゃあこうしようか、まずここの家事の責任者はイリアさんで、二人には冒険に出ない時に疲れがなければ家事をやってもらう。それと家事なんだけど変に汚れない様にしてくれればいいから無理の無い範囲でやってもらう。

後は様子を見て人手が足りなかったらまた奴隷を買うなりしてもいいしな」

「あの、本当にいいんですか?私もグレンも冒険者になったりして…」

「ああ、皆も賛成すると思うよ。それに実を言うと冒険者仲間も出来ればあと三人欲しいって話してたからな。十分にメリットがあるんだ」


翌日皆にもその事を伝えると反対する人はいなくてすんなりと受け入れられた。


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