024.リスティ(SIDE リスティ)
私はシャール村と言う村でお父さんとお母さん、それと弟と私の四人家族の長女として育った。
普通の幸せな一般家庭だったと思う。
でもその幸せは長くは続かなかった…。
私は信託の儀を受けて盗賊という職を授かった。
でもそれを知った両親は私の事を汚い物を見るような目で見るようになった…。
話すらしてくれなくなり、食事も一緒に食べてくれなくなる。
それから数日後。
父親に連れて行かれてサイタールに連れてこられた。
すると父親に「ここで一人で生きて行け」と言われて置いていかれる…。
それから数日間は路地裏で丸まって寝たり、お店の捨てる物を分けてもらって食べたりして生き繋いだ。
でも当然毎回捨てる物なんて貰える訳でもなく、むしろ店の評価にも関わるから出来るだけ来ないでくれと言われる。
碌に食べる事も出来無くなり段々思考が「私は盗賊なんだし本当に食べ物を盗んでしまおうか…」なんて考えてしまう事もあったけど毎回思考を振り払うように首を左右に振って思い留まった。
でもそろそろ本当にまずいと感じ、フラフラになりながら歩いていると…。
「どうしたの?」
とお婆さんに声を掛けられる。
それが孤児院の院長だった。
院長は近くのパン屋でパンを買ってくれて話を聞いてくれた。
事情を話すと院長は、
「私は孤児院の院長をやっているの。もし良かったら貴女もくる?」
と言ってくれた。
この町に孤児院なんてあったんだ…。
知っていれば最初にここに助けて欲しいと来ていたかもしれない。
ちゃんと調べるって事は大事なんだな…とこの時は本当に思った。
孤児院では他の子達ともすぐに仲良くなれたし、兄妹がいっぱい出来たみたいで楽しかったし、院長は孤児院の皆の事を本当に大切にしてくれて、最後に汚い物を見るように見てきた本当のお母さんよりもお母さんと思えるようになっていた。
でも偶に私が信託を受けても変わらずに接してくれていた弟はどうしてるかな…なんて考えてしまう。
孤児院に来てから三年程が経って、そろそろ私も何か院の為にしないとと考えていた。
候補の一つは冒険者。
冒険者になって孤児院を出て行ったお兄ちゃんやお姉ちゃん達から聞いたけど、盗賊は戦闘能力は低いけど特定のダンジョンや遺跡ではものすごく重宝されるらしい。
理由は罠の感知や解除に宝箱や扉の解錠技術。
一応盗賊以外の人でもある程度できるけど、スキルとしてその辺りの事が出来るようになる盗賊がいるのといないのでは違うんだって。
だから盗賊の中には通常のパーティーに入る人の他に、その技術を使って臨時にパーティーを組む雇われ屋の様な人もいると教えてもらった。
ただその為にはある程度レベルも上げないといけないそうだから最初はパーティーに入る方が良いみたい。
冒険者になったお兄ちゃん達の中には他の町に行っちゃった人もいれば、ダンジョンや依頼に行って帰ってこなかった人もいる…。
それを考えると少し怖くもある…。
そんな時に院長の体に良く分からない傷が出来始めた。
なんだろうなんて皆で話していたら院長先生が苦しみ出して傷が増えて行った。
皆で慌てたけど、町の教会に回復魔法を使えるティニーお姉ちゃんがいる事を皆知って居たので急いで呼びに行く。
ティニーお姉ちゃんもここの孤児院に居たらしくて、私がこの孤児院に連れてきてもらうちょっと前に教会に修行に行ったお姉ちゃんで、偶に孤児院に来ては怪我をした子の怪我を治したりしてくれている。
ティニーお姉ちゃんが回復魔法を掛けると傷は消えたんだけど院長の苦しそうなのは治らないし、少しするとまた傷が出来ていた。
なんかの呪いなんじゃ無いかってなってティニーお姉ちゃんが解呪の魔法と言うのを掛けてくれたけど、お姉ちゃんの実力不足で解呪出来ないみたいだった…。
しかも神父さんは昨日王都の教会で話し合いがあるとかで向かってしまって居ないんだって…。
どうしたらいいんだろう…このままじゃ院長が死んじゃう…。
そう思って泣きそうになっていたら男の子の一人が知らないお兄さん達を連れてきた。
冒険者の人達らしい。
それから治療に集中する為と言う事で私達は院長のお部屋から外に出されちゃった。
既に泣いてしまっている小さい子達もいてその子達を励ましていると、しばらくしてティニーお姉ちゃんが出てきて「もう大丈夫だから」と教えてくれた。
院長が助かったと知って私も嬉しさから泣いちゃった…。
院長先生は今寝ているから起きるまで待つ事になって、起きた時に食べてもらえる様にご飯を作っていると、男の人達が怒鳴り込んできた。
その声で起きちゃったのか院長がティニーお姉ちゃん達とお部屋から出てきた。
それから領主様までやってきて呪いがどうとか言っているのが聞こえる。
それからティニーお姉ちゃん達は領主様達とどこかに行くみたい。
領主様からの呼び出し!?と思って心配になったけど、院長が言うには心配はいらないみたい。
数日後。
ティニーお姉ちゃんがその時の冒険者さん達を連れてきてくれて冒険の話をしてくれる事になった。
冒険者として経験が豊富なのはリックお兄ちゃんとアルティナお姉ちゃんだけみたいで、ここに来る前には別の人達とパーティーを組んでいたみたい。
リックお兄ちゃんは魔法剣士と言う職で、特徴としていろんな事が出来るけど一つの事を極める様な事が難しくて、ステータスも優秀といえる物がないらしい。
その所為で器用貧乏と馬鹿にする人も少なくはなくて、実際にリックお兄ちゃんはその所為で前のパーティーから追放されたんだって…。
それで親近感が出たと言うのと、リックお兄ちゃん達のお陰で院長を助ける事が出来た事を聞いて、私は冒険者になるならリックお兄ちゃん達の力になりたいと思った。
そんな事を考えていると私と同じ年のリースが、同じ僧侶としてティニーお姉ちゃんみたいに誰かを助けられる人になりたいから冒険者になりたいと言い出した。
しかもリックお兄ちゃん達は冒険者として誰かを教える事になっていて、一緒に教えてくれるみたい。
それなら私も一緒に教えて欲しい!と思って私も冒険者になりたいって言った。
まさか場所が領主様のお屋敷で…しかも貴族の子供三人…しかも一人は領主様のご子息様と一緒に教えてもらう事になるとは思わなかったけど…。
でも三人が一緒に教えてもらう仲間なんだし貴族とか関係なく仲良くして欲しいと言ってくれたし、領主様も悪さをしなければ失礼とかは気にしないで良いと言ってくれた。
そのお陰もあって私もリースも少しづつだけど普通に出来る様になって行った。
何回目かの訓練の日。
その日は雨で、雨の日にどうするかを話し合ってなかったと言う事でリックお兄ちゃん達と領主様のお屋敷にやってきた。
雨の日はお休みとなって、この日はテートちゃん達とおしゃべりをする事になった。
それから私達は領主様とご飯を一緒に食べる事になったんだけど、私は緊張から手がぶつかってしまってお料理を落しちゃった…。
もしこれが原因で罰を受ける事になったら…ううん、それよりも孤児院の皆に迷惑を掛けたら…。
そう考えて私はすぐに土下座して謝ったけど、どうして良いか分からなくて涙が止まらなくなった。
テートちゃんに手を引かれてお部屋にやってくると、一緒に来てくれたお姉ちゃん達と一緒にテートちゃんが大丈夫だからと慰めてくれた。
私はそのまま寝ちゃったみたい…。
起きるといつもの孤児院に居たけど、お料理に続いてそのままベッドで許可もなく寝ちゃった事でまたどうしていいか分からなくなった。
ティニーお姉ちゃんとリースが大丈夫からかと慰めてくれて少し落ち着いたけどやっぱり心配だった。
するとその日にテートちゃんが私の事を心配して孤児院に来てくれた。
そこで私達は本当に友達になれたんだと思う。
それからしばらくして、遂に私達は冒険者登録する事になる。
実戦経験を積んだ方が良いと言う事で、リックお兄ちゃん達が見てくれているけど実際に魔物と戦うらしい。
やっぱり緊張する。
初めての相手はゴブリン。
問題無く倒せたけど緊張の所為か凄く疲れた。
剥ぎ取りと言う事でゴブリンの耳を切り落とすけどやっぱり気持ちのいい物では無いよね…。
戦闘に関しては褒めてもらえた。
次の戦闘はウルフ。
私は一匹を抑える役目になったけど、赤いウルフにテートちゃんが腕を噛まれて私の方が慌てちゃった所為でウルフに肩を爪で切られる。
痛い…でも集中しないと…。
傷は深くは無かったから動かすのに問題は無くて、私は一人でウルフを倒すのに成功する。
あそこで慌てなかったら傷を受ける事も無く倒せていたのかな…。
リースの回復魔法で傷を治してもらって町に帰って反省会をする事になった。
私達はやっぱり慌てちゃった事が駄目だったと言われる。
逆に噛まれた筈のテートちゃんは冷静に対処出来ていたみたいで褒められていた。
うん。次は私もちゃんと褒めてもらえるように頑張ろう。
それからフィルさん達が王都にある学園と言うところに行くらしくて町を出て行った。
王都か…凄く大きい町らしいけどその内一度行ってみたいな。
冒険者をやっていたら行く機会もきっとあるよね。
そしてリックお兄ちゃん達が個人ギルドと言うのを作るらしくて私達も入らないかと誘ってくれた。
ギルドと言うのは仲間の集まりの様な物らしい。
私達は勿論入りたいと言って入れてもらえる事になった。
するとリックお兄ちゃんの持つ秘密のスキルを教えてくれた。
私達の安全にも繋がるし、リックお兄ちゃん達の役にも立てるスキルみたい。
それを聞いて私達はリックお兄ちゃんの白奴隷にして欲しいとお願いした。
何でも院長も私達を白奴隷にして上げて欲しいと頼んでいたみたい。
それからギルドの拠点になるホームと言う場所が手に入ったみたいで案内してくれた。
それはテートちゃんが元々住んでいたお屋敷らしくて、前に使っていたお部屋を使える事になったテートちゃんは凄く嬉しそうだった。
しかも私やリースにもお部屋を使わせてくれるようになった。
でも広くて綺麗過ぎて一人で使って良いと言われても落ち着かない…。
リースも一緒らしくて二人一緒にお部屋にしてもらおうと相談に行くと、テートちゃんもそれなら一緒にと言ってくれて、テートちゃんのお部屋を三人で使う事になった。
リックお兄ちゃん達に会ってから楽しい事が増えたし、テートちゃんと言う友達も出来た。
孤児院の方も美味しい食材をくれたり、寄付をしてくれているみたいで皆も美味しい物を食べれたり言いお洋服を着れる様になったりといい事ばかりだ。
リックお兄ちゃん達の力になりたいと思っていたのに、むしろ恩が増えていってるよね…。
いつかリックお兄ちゃん達の役に立って少しでも恩を返せるようになりたいな。




